【詩】サギソウ
白い花弁を
鳥が羽をひろげるがごとく広げているあの花は
サギソウという。
サギソウは
レンガ色の植木鉢の中で
ささやかに咲いていた。
私がそっと
まっ白な花びらを包み込むと
その白い羽根はかすかに震えた
白い一輪のサギソウ
わずかに羽をひっぱるだけで
音もなくその羽毛はもがれていく。
純白な絹のような花びら
それを真っ赤な紅が塗られた
唇の中に入れてやった。
紅よりも真紅な舌の上で
白い花びらを
舐め回し
こね回し
ひねり回し
味わいつくし
純白が真紅に染まり尽くしたときに
うごめく喉の奥に飲み込んでやった。
キレイなキレイなホワイトは
艶やかなルビー色になって
ゆっくりと喉をくだっていき
やがて私の口から
嗚咽が絞りだされた。
いつまでも
わたしのレッドが
サギソウのホワイトに
吸いつくされるまで
喉の奥から
深い手の届かない
心の底から
サギソウの唄は
奏でつづけられるのだ。
私のツミが
贖われるまで。