私を縊る人
私を縊る縄が
空から音もなく垂れてきたので
もう呻くこともない母が
枯れ枝のような腕で
優しく首に縄をかけてくれた。
うららかな昼下がり
どこぞで、ひばりが楽しげに鳴いている
どこまでも虚ろに青く広がる
空。
一匹のコオロギが
フラフラと
ほどよく暖められたアスファルトの上を
私の崩れ落ちた膝まで
這ってきた。
力なく折られた私の足に
コオロギが寄り添ったので
手のひらで包んで
菩提樹の根本ではなしてやった。
その時
気だるい秋の大気を
シラサギの鳴き声が
切り裂いた。
その悲鳴のような響きに
私は縄からそっと首を抜き
微かに震える母の方に
そっと手を置き
ただ、立ち尽くした。
いつまでも。
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