煙に巻く
僕の父親はヘビースモーカーで、黄色いピースを愛飲していた。
父親とは、もう15年ぐらい会ってないから、どこで何をしているのかも分からない。
幼少の頃、父親の運転する青い軽バンの助手席に座ると、運転席でクールミントガムを噛みながらピースを吹かしていた、父親の面影が懐かしい。
そして大人に近づいた僕は、気がつけばタバコを吸っていた。少し背のびがしたかったんだと思う。
だけど、二年前ぐらい前に禁煙し、(飲み会の時は吸ってたけど。)
ずっと吸ってなかった筈なのに…
最近また、紙巻きタバコを吸っている。
体に良くないし、僕は長生きしたいと思っている筈なのにだ。
僕はなんて愚かな生き物なんだろう。
タバコを吸って自宅に帰ると、決まって妻に気が付かれて怒られる。「吸ってないよ。」と、バレバレの嘘をついてはいるけれど。そんなの匂いでバレているに決まってる。
僕もタバコをやめたいとは思っているけれど、心が疲弊した時、何かに依存しないと生きていけない体質なんだろう。
だけど、もしかしたら僕が依存しているのは父親の面影かもしれない。もう二度と会うことはないけれど、安いメンソールの紙巻きタバコを燻らせて、あの日の父親に思いを馳せている。