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妻の誕生日に合わせて有休をとってみた

 僕は小学校教師です。担任の先生が一日休みになると、クラスの子どもたち、職場の方など、多くの人にご迷惑をおかけしてしまいます。普通、自分か家族の病気・怪我でもないかぎり、教師は授業日に休みを取りません。

 しかし今回、僕は勇気を出して有休を申請をしました。理由は、妻の誕生日を祝いたいから。

 世間的に見ても、そんな個人的な事情で自分だけ休みをとるなんてありえないと思われるかもしれません。教師がクラスの子どもたちを放っておいて、職務を全うしてないと批判されても仕方がないことだと思います。それはごもっともです。

 しかし、僕にも大切にしたい家族がいます。とりわけ、妻は平日2人の子どもの世話で大変です。子どもが産まれてからというもの、なかなか夫婦の時間が取りづらくなりました。夫婦二人きりで、カフェに行ったのはいつのことでしょうか。

 僕は育休を通して、自分の心身のバランスが仕事に大きく影響すること、自分の身を守るために無理しないことを、考え直してきました。自分や家族を犠牲にするような働き方で子どもたちの前に立っていても、よい仕事はできません。もう少し自分にやさしくしてもいいんじゃないかと思うようになりました。教師の仕事は、なかなかハード。だからこそ、こうした考えをもっていないと、自分がもたない気がします。

 今回、あえて平日に有休を取ったのは、夫婦の時間を作るためです。子どもを保育園に預けている時間だけ、昔のように、二人でのんびりとした時間をプレゼントしたいと思いました。


僕の計画

妻の誕生日に合わせて有休を取り、
妻と二人きりでゆっくりランチをする

 これが僕の計画のゴールです。それに向かって、職場では2週間前から準備しました。

 まず、クラスの子どもたちに迷惑がかからないように、授業を組みます。僕のクラスの子どもたちは自習が好きではありません。ですから、担任以外の先生が授業をする教科をその日にずらしてもらい、子どもたちが自習をしなくてもいいようにしました。時間割変更で、関係する職場の先生にはご迷惑をおかけしますが、自習で子どもたちが荒れてしまっては、もっとご迷惑になってしまうので、お願いをして回りました。こうして、6時間すべてを授業で埋めました。

 また、提出する書類が滞らないよう、早めに準備しました。2週間前から「この日は休む」と決めているとスイッチが入るもので、けっこう仕事がはかどりました。

 有給の申請は出しましたが、理由は職場の誰にも伝えられませんでした。ただ「有休」とだけ出して、認めていただけました。意外と深い事情は聴かれないものでした。それもそのはず。「有給休暇取得の理由は問われない」と法律で決まっているそうです。


 妻に休みが取れることを伝えると「本当にいいの?」という反応でした。働き始めて10年、一度もこんな休みを取ったことがなかったので、半信半疑な感じでした。

 ランチの場所をいくつか絞って、当日の気分で決めることにしました。教師が有休をとってランチをするなんて、見られたらいろいろとマズイことになりそう…。なるべく人が少ないところを選びました。


計画、崩れる。

 有給の前日、次女(11ヵ月)がお熱と下痢。胃腸かぜになりました。子どもって何も分かってないようで、ちゃんと分かってるんでしょうかね…。明日も託児所は無理だろうということで、ランチを諦め、3人で家でゆっくりすることになりました。

 当日の朝は、いつもの平日のように妻が長女を保育園に送ります。僕が休みなのに長女だけ保育園に行くことが分かると、きっと長女も寂しがります。

 僕は、長女に仕事が休みであることを悟られないように、出勤したように見せて、近くのカフェで待機しました。「待機」と言っても、今度の授業計画を練っていたので、結局仕事をしていましたが。

 妻は、僕が普段一人でカフェでゆっくりする時間も取れないだろうからと、「午前中、ゆっくりしてきていいよ」と言ってくれました。

 僕は少しゆっくりさせてもらい、平日なのにカフェで仕事をするという非日常感を味わいました。6月は祝日もなく落ち着いた時間がなかったので、気分転換となり、癒しの時間でした。

 帰宅する途中にスイーツを買い、ちょっとお高いピザの宅配を頼みました。まだお熱がある次女も一緒でしたが、3人でゆっくりとおいしいお家ランチを楽しみました。


 妻は、僕が休みなのを図ったように次女が熱を出したことに、「ちゃんと分かってたんだねー」と言っていました。そして「熱の時にいてくれて、本当によかった」と感謝してくれました。計画通りにはいきませんでしたが、妻に感謝されて、こんな一日でも有休を取ってよかったと思いました。


みんながいつでも休める社会に

 教師だけでなく、有休を取りにくい人は大勢いらっしゃると思います。もしかしたら、働く人のほとんどがそうかもしれません。僕も育休を取るまで、「教師たるもの私的な事情で休むべからず」みたいな固定観念に縛られ、逆に自分を追い込んでいたような気がします。

 しかし、その考えが逆に自分を苦しめてきたことにも気付き始めました。最近では、「社会人たるもの自分の仕事やプライベートをうまくコントロールできてこそ立派な社会人」ではないかと思っています。

 また、休むことで仕事がたまることも多く、逆に負担がかかる場合もあります。それも有休を取りずらい一因です。

 僕も自分が休むことで、自分の仕事がたまるだけでなく、他の先生方にご迷惑をおかけしました。しかし、その一日が気分転換になり、リフレッシュすることもできました。他の先生にお世話になった分、誰かが休みの時にはサポートしたいとも思いました。

 そうやって順番に助け合いながら、みんながいつでも心と体を休めることができる社会になればいいなと思います。そういう雰囲気がもっと広がっていくことを願って、この記事を投稿します。




*僕が「有休を取ろう」と思ったきっかけをいただいたみかんのバランスライフさんの記事です。素敵すぎるご夫婦の会話に癒されます。ぜひご覧ください。





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