初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、中縦束について述べていきたいと思います。
恒例ですが、白質線維とは何かについて話していきます。
まずは中縦束についてです。
中縦束は、側頭葉と頭頂葉を結んでいるようですね。
言語や聴覚、注意や視空間認知機能などに関与しているようです。
中縦束の接続部位まとめです。
まずは上側頭回の説明になります。
上側頭回は音韻や音に関するもの、手話やジェスチャーで活性化します。さらに有意味なものの認識になるほど左に側性化します。
次に側頭極についてです。
側頭極は腹側経路で、統合や記憶との連結、意味記憶の形成に関わっています。また、社会性や心の理論にも関与しています。
続いて、上頭頂小葉にります。
上頭頂小葉は、中心傍小葉と楔前部から構成されます。
多感覚の統合を行い、運動制御中枢への投射、自分の身体地図の
作成、視覚の背背側経路となり目標の方向、速度などの把握、
注意のトップダウン制御を行います。
上頭頂小葉は下記の「機能」「損傷による症状」があります。
関与する経路としては、
視覚経路の背背側経路、言語経路の形態経路
ネットワークの前頭―頭頂ネットワーク、背側注意ネットワーク
に関わるとされています
上頭頂小葉は背側注意ネットワークに関与し、上縦束Ⅰで結ばれているようです。
上頭頂小葉で感覚統合が上手くいかず下記画像の実験のサルは拙劣さをみせています。
色々な経路、ネットワークがあってややこしいですが、
背背側経路は上頭頂小葉でリーチ動作に関与します。
腹背側経路は下頭頂小葉でリーチの手の形の形成に関与します。
言語では
形態経路は下頭頂小葉から上頭頂小葉に達し前頭葉の手の領域まで達します。
音韻経路は聴覚野や下頭頂小葉が関与します。
ゲルストマン症候群は左角回の損傷で有名ですが、上頭頂小葉も含まれると想定されます
上頭頂小葉と人格との関係を調べた研究では、外向性が上頭頂小葉と正の相関があることがわかりました。
他の人格は自分の感覚であったり考えであるのに対し、外向性は
自分の内ではなく外なので、外からの様々な感覚を統合したりする上頭頂小葉が関与するようです
上頭頂小葉の損傷では感覚障害など様々な症状の他にも
頭頂葉性運動失調が挙げられます
上頭頂小葉の損傷では、視覚性の入力が上頭頂小葉に届きますが、ここで障害があり、2つの型に分かれます。
Balint型が中心視野へのリーチ動作が障害され、
Garcin型が周辺視野へのリーチ動作が障害されます。
さらに上頭頂小葉から運動前野へ向けて情報が送られてリーチ動作へ繋がるので、運動前野性のリーチ動作障害にも関与しています。
対象物への脳幹の眼球運動にも関与があるようです。
次は楔前部です。
楔前部は頭頂葉の内側面に存在します。
様々な部位と連絡し、道順障害に関わります。
楔前部後方は海馬傍回との間の神経線維束が最も豊富であるとされています。
さらに、運動イメージ中にも楔前部の賦活が観察されています。
また、記憶処理にも関与しています。
右楔前部の安静時活動が低いほど主観的な幸福感が高いことが示されています。強く幸福を感じる人は楔前部の活動が低いことを意味します。
楔前部は否定的な自己意識や心の迷いに関係し、この働きが弱いことが幸福感に繋がっている可能性が示唆されます。
右楔前部と感情処理に関わる右扁桃体の機能的結合が強いほど、主観的幸福得点が高いことも示され、感情を適切に統合することで幸福感が生まれる可能性が示唆されています。
ASD群では正常発達群と比較して灰白質体積が比較して小さいことが示されています。
さらに楔前部はアルツハイマー病の早期からアミロイドβが蓄積します
楔前部は論理的な推論や損得の推測、感情hン段課題での活性化も指摘されています。
楔前部は帯状束で5つに分かれ前頭葉、辺縁系、側頭葉と接続しています。
楔前部にTMSを行うと自伝的記憶の想起での活動を変化させます。
楔前部はDMNと強い接続性を持っています。
内省や視覚的イメージなどに関与するとされています。
無気力患者では萎縮と代謝低下が明らかになり。無関心の重症度と相関していました。
楔前部はサッケードや自発的眼球運動にも関与しています。
また、記憶メタ認知に関連しています
オキシトシンが楔前部と中央実行系ネットワークである左背外属前頭前野の接続パターンを逆転させます。
両側楔前部は左DLPFCに負の関係を及ぼしますが、オキシトシン下では、逆転することが示唆されています
オキシトシンが扁桃体の活動を弱めるため、社会的に否定的な反応を軽減し関連性のある合図に応じ、連合学習を減少させ、向社会的効果があることを示唆しています。
幼少期の有害な経験とも関連しています。
また、whereの経路に関与しています。
次は下頭頂小葉についてです。
角回は構成失行、計算障害、ゲルストマン症候群に関連しています。
縁上回は言語性短期記憶、内言語操作などに関わります。
次は下頭頂小葉の中でも角回についてお話していきます。
下頭頂小葉の角回についてです。
後頭葉、側頭葉、頭頂葉など異なる感覚を統合する場所としても働いています。さらに読解と理解、計算にも関与していることが報告されています。
ゲルストマン症候群にも関連する部位となっています。
角回は安静時にも働いているようですね。
デフォルトモードネットワークは、安静時に働くネットワークで、内省であったり空想など安静時のネットワークです。これに下頭頂小葉として関与しています。両側の角回は自己言及領域であったり、休息やエピソード記憶の想起、将来の展望にも関連しています
次に注意機能と記憶機能についてです。
AGは転換性注意に関与します。
特に、ボトムアップ(不随意)的な注意に関わります。
記憶との関連では、言語作業記憶や回想、自伝的記憶にも関与しています
角回は葛藤解決とToMにも関与しており、
葛藤課題ではgo/no-go課題でにおいて抑制することに関与しています。
ToMでは文脈上、に関する判断をサポートしていますね
クロスモーダル統合領域とは、多感覚の統合のことです。
角回は概念の組み合わせやリーチにも関与しているようです。
角回は左右で機能的な違いがあります。右は注意や競合解決なのに対して、左角回は言語や文脈的な機能が多いです。
両側が共に機能するとなると、DMNや注意、記憶、計算、ToMなど様々なことに関わります。
下頭頂小葉は運動するために必要なようです。
さらに他者を眺めているときに重要な役割を果たしています。
まるでミラーニューロンのようですね
角回は、計算、言語、空間課題で血流増加が観察されています。特に計算において強く賦活されるようです。
驚きですが、大きな数の計算よりも簡単な加算課題の方が大きな活性化が確認された研究もあります。
次は縁上回についてです。
縁上回は言語性短期記憶や、道具の使用、使い方などにより賦活されます。
また、左側はワーキングメモリに関与し、右は言語のプロソディー障害(抑揚や大きさ、タイミングなどの感覚的抑揚)と関与します。
境界性人格障害(BPD)では右下頭頂小葉が関与しているようで、精神面についても関与が考えられます。
ASDでも皮質の異常がみられており、ASDの表情・感情認識に関与している可能性が考えられます。
教育年数が関与しており、さらに感情認識と関連しているようです。
上記スライドの内容とも一致する部分がありますね。
道具の使い方を研究した結果では、頭頂間溝との接続性が大幅に変化したようです。ここから運動前野等の運動領野に接続されていそうですね
また、右縁上回では特定の時間の長さに反応するニューロン群があり、時間感覚や時間の自己管理にも直接影響することとなります。
左縁上回は動作と物体の統合だけでなく、動作の認識と理解にも関与します。
さらに、聴覚、言語的な短期記憶にも関与するようです
縁上回は行動の計画にも関与します。
ここでも運動に必要な感覚情報などが統合され、パフォーマンスの引き出しも行われるため、病変により両側の上肢失行を引き起こします。
文法力も影響するようで、高文法力と低文法力で脳活動に差がある様です。
高文法力であれば少ない活性化で済み、低文法力であれば大きな活性化が必要となると考えられます。
注意に関しては、腹側注意ネットワークの一員として活動しています。
下に難しく書いてありますが、縁上回が外的刺激に注意を高め、角回が文脈を協調しつつ、入るべき刺激を調整しています。
縁上回は記憶の符号化(記銘)にも優先的な役割を果たしています。
身体所有感は前頭―島―頭頂と関連し、身体無視にも関与しそうですね。
興味深いですが、100均などで他にいい道具ないかな?と探しているような思考中(いろんな空想や計画)時に角回と共に関与しているようです。
プレッシャーなどの脅威の条件下では前頭前野と縁上回の活性化が低下しているようです。圧迫面接等では対象者の思考力低下時の状況などもみれるんでしょうか。(受けたくない)
長期の乗り物酔いを2度経験したケースにおいて、どちらも得状回の海綿状血管腫からの少量の出血が検出されたようです。
縁上回は前庭感覚の統合にも関わると考えられるので、乗り物酔いと関連している可能性があります。
次は下頭頂小葉と半側空間無視について述べていきます。
皆さまがよくご存じの通り右半球損傷の方が頻繁に、重度な半側空間無視を呈します。
下頭頂小葉を重視する報告と、TPOJが重要であるとの報告があり、空間関係の感覚統合が上手くできないこと、その統合結果を頭頂葉、前頭葉にうまく運べないことなども関与していそうです。
次も半側空間無視(USN)について述べていきます。
自己中心性無視は下頭頂小葉、上側頭回、中・下前頭回と関連し、物体中心性無視では、下側頭部の損傷と関連しているとの報告もあります。
また、上縦束も損傷によりUSNの残存に関わる一つとなっています
ボクセル研究において、右縁上回~中心後回までの皮質、白質がUSN出現と関連していると報告されています。
体性感覚と空間感覚の離断が原因と考えられています。
USNは、感覚領域から縁上回と皮質下の損傷が深く関与しているものと考えられます。
次は病態失認について述べていきます。
多くの領域で確認されてますね。
深部白質が最も重なりの多い領域ともあります。
持続する場合、運動前野、前帯状回、TPJ、海馬、扁桃体の損傷が伴うようです。
続いて、色名呼称障害についてです。
視知覚は良好であるが言語化しようとすると失敗するものです。
離断が考えられていて、右視野は入力されず、左視野は言語処理できないという状況がこうさせるようです。
次はPusher現象についてです。
多くの部位で認められますが回復が遅延する場合、上縦束や皮質脊髄路などと重度麻痺が共通するそうです。
次は計算についてと、ミラーニューロンシステムについてです。
より難しい計算は左下前頭回と左下頭頂小葉との連携によってなされるようですね。
ミラーニューロンシステムとしては、頭頂間溝、下頭頂小葉だけでなく、上側頭溝や中側頭回にも活動がみられています。
失行については左下頭頂小葉の角回周囲が重視されているとのことです。
縁上回でも発症はしやすいです。
音の空間情報は上側頭回後部→縁上回で担うようです
最後に、中縦束が関与する疾患についてです。
認知症や変性症、精神障害や発達障害に関与しているようです。
他の線維に比べて、まだ研究数や論文数が少ない印象を受けます。
さらなる研究に期待ですね。
みなさん、ご清聴ありがとうございました。
次の白質線維の解説で会いましょう。