初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、弓状束について述べていきたいと思います。
恒例ですが、白質線維とは何かについて話していきます。
白質線維とは、末梢でいう神経細胞の軸索にあたる様なものになります。 簡単に言えば情報処理された信号を次の神経に運んでいます。
これには4種類あり、
①隣の脳に運ぶ弓状線維
②左右一つずつ(左なら左のみ)内で情報を運ぶ連合線維
③左右の脳の情報を交換する脳梁
④大脳から脳幹、小脳、脊髄へ信号を送るもの
この4つにわかれています。
ここから、弓状束に入ります。
弓状束は前頭葉と側頭葉を繋ぐ線維束で、言語に重要な線維とされています
弓状束(AF)には3つの線維があり、短系路2つ、長経路1つに分かれるとされています。
それぞれ側頭葉・下頭頂小葉を前頭葉と接続していますが
側頭葉から下頭頂小葉への線維路もあります。
弓状束はウェルニッケ野とブローカ野を繋いでいます。
Vavasoriらの研究では
前頭葉はIFG、MFG、中心前回が関与し
側頭葉はMTG、ITG、STGが関与するとしています。
中心前回には錐体路という皮質脊髄路があります。
ここには、体部位局在(再現)があり、内側に行くと足、そこから
外側に行くと体幹、上肢、顔などになってきます。
また、手続き記憶も司っているとされています
運動錯覚中に弱い一次運動野の活動がみられています。
これが運動イメージ療法やミラー療法などと繋がるのでしょうか。
一次運動野は基本的に大脳皮質のⅣ野を持たないことで、視床からの入力はほとんどないようです。
また、前庭系にも関与しています。
体部位再現はSMAやPM、M1など互いに持っています
その運動機能は、実は感覚野にも支えられています。
一次運動野のV層の軸索は脊髄の前角まで皮質脊髄を出しています。
この段階は最も低次な段階となっています。
また、一次運動野の損傷は予後に影響を与えるようです。
CST損傷では末梢部の機能低下が大きいようです。
また、運動に直接関与しているSMA、PM、大脳脚などの損傷で
改善度合いが違うようです。
最近は高強度、高頻度の大脳皮質刺激により可塑的変化や回復が
起こりえることが報告されています。
ミラーセラピーでも活性化がみられるようです。
次は下前頭回についてです。
大脳基底核や視床との連絡が示唆されています。また、ジェスチャーの理解にも関わり、三角部は構文表現、弁蓋部は意味表現に動作することが明らかとなりました
次は下前頭回三角部の機能と障害についてです。
いわゆるブローカ野で、音韻認識や発語を行っています。
調べると文法処理や音韻解読にも携わっていたり、
四肢運動面の右手首の運動感覚と視覚の統合という難しい機能も担っています。
さらに他にも機能があり、言語翻訳や、構文の基礎にも関与しています。また、パニック障害において皮質の減少が認められています。まだまだ調べれば何か出てきそうですね。
こちらは発話に関与する部分が強いですね。
また、命名がどこまでよくなるかの予測因子になるみたいです。
次は下前頭回弁蓋部の機能と障害です。
女性のインターネット使用と体積・灰白質に相関関係があるとあります。
このことは、論文をみたところ、男女ともにインターネット使用障害は灰白質の体積と負の相関がみられるとのことです。男性はインターネットをゲームに使う場合が多く障害場所が女性とは違い、女性はインターネットを主にコミュニケーションのために使うため、下前頭回弁蓋部と関連するのではないかとの報告です。
ASDで弁蓋部と社会的スケールとの関係に負の相関があることから、社会性にも必要不可欠な部位となっていますね。
次は上側頭回についてです。
上側頭回は音韻や音に関するもの、手話やジェスチャーで活性化します。さらに有意味なものの認識になるほど左に側性化します。
次は中側頭回についてです。
中側頭回はMT野とも呼ばれ、構文や読解などの言語機能の他にも、思考の抑制や記憶への関与、前庭系の情報処理領域の一部となっています。運動視の場所でもあり嘔気に関与します。
この部位の損傷で物体中心のUSNが出現するとされています。
また、統合失調症で灰白質の減少が認められています。
思考の抑制、構文処理前庭系の情報処理など、多機能との連携を取りながら様々な機能を司っています。
ウェルニッケ野の損傷が広範にわたると同時に損傷を伴いやすいです。また、ミラーニューロンシステムの一部でもあります。
紡錘状回だけでなく、中側頭回、下側頭回でも相貌失認が生じます。また、中側頭回はその他の部位と連携し道具の使用知識と問題解決、選択などに関与しています。
運動視による嘔気については下前頭後頭束での連絡が重要とされています。
ミラーニューロンは模倣や他者の行為の理解に繋がります。
中側頭回はUSNの責任病巣の一部でもあります。
後頭葉からの情報は複数に分かれます。
下側頭回や紡錘状回は視覚の腹側経路で、色や形を判別しています。また、下前頭回との言語ネットワークでは、主に意味関連の処理に関与していると推定されています。
下側頭回は腹側視覚路の一部で、損傷により視覚情報処理の障害による視覚性失認や相貌失認などが生じる。
また、音で賦活され、右側は環境音による賦活が強くなっている。
中・下側頭回で超皮質性感覚性失語となることもあるようです。
また、把握反射は右上前頭回・下側頭回とも関連しているようです。
前頭側頭認知症に属する意味性認知症では側頭極、中・下側頭回の萎縮を呈します。
意味性認知症とは意味記憶障害が特徴的な認知症です。
右下側頭回と自閉症のscaleが相関していることから、疾患への腹側経路の影響も考えられます。
また、様々な線維と接続し、心理的ストレスと睡眠の質との相関への媒介もみられています。さらに命名課題へも関与しているようです。
下側頭回の非対称性はうつ病の重症度と関連しているようです。
健忘性軽度認知障害に移行した被験者は下側頭回の36%の喪失を示しています。
下側頭回の後部は視覚刺激の数学的処理にも関与しています。
身体表現性障害(身体症状症)では下側頭回の結合が増加していました。さらに、右の下側頭回と不安スケールは優位な相関が得られました。
左の下側頭回は曖昧な単語がタスクに関連する場合に強く関与し、意味処理いに関与していることが示唆されています。
次は下頭頂小葉についてです。
角回は構成失行、計算障害、ゲルストマン症候群に関連しています。
縁上回は言語性短期記憶、内言語操作などに関わります
次は角回についてです。
角回は、後頭葉、側頭葉、頭頂葉など異なる感覚を統合する場所としても働いています。さらに読解と理解、計算にも関与していることが報告されています。
ゲルストマン症候群にも関連する部位となっています
角回は安静時にも働いているようです。
デフォルトモードネットワークは、安静時に働くネットワークで、内省であったり空想など安静時のネットワークです。これに下頭頂小葉として関与しています。両側の角回は自己言及領域であったり、休息やエピソード記憶の想起、将来の展望にも関連しています。
次に注意機能と記憶機能についてです。
AGは転換性注意に関与します。
特に、ボトムアップ(不随意)的な注意に関わります。
記憶との関連では、言語作業記憶や回想、自伝的記憶にも関与しています。
角回は葛藤解決とToMにも関与しており、
葛藤課題ではgo/no-go課題でにおいて抑制することに関与しています。
ToMでは文脈上、に関する判断をサポートしていますね。
クロスモーダル統合領域とは、多感覚の統合のことです。
角回は概念の組み合わせやリーチにも関与しています。
角回は左右で機能的な違いがあります。右は注意や競合解決なのに対して、左角回は言語や文脈的な機能が多いです。
両側が共に機能するとなると、DMNや注意、記憶、計算、ToMなど様々なことに関わります。
下頭頂小葉は運動するために必要なようです。
さらに他者を眺めているときに重要な役割を果たしています。
まるでミラーニューロンのようですね。
角回は、計算、言語、空間課題で血流増加が観察されています。特に計算において強く賦活されるようです。
驚きですが、大きな数の計算よりも簡単な加算課題の方が大きな活性化が確認された研究もあります。
次は縁上回についてです。
縁上回は言語性短期記憶や、道具の使用、使い方などにより賦活されます。
また、左側はワーキングメモリに関与し、右は言語のプロソディー障害(抑揚や大きさ、タイミングなどの感覚的抑揚)と関与します。
境界性人格障害(BPD)では右下頭頂小葉が関与しているようで、精神面についても関与が考えられます。
ASDでも皮質の異常がみられており、ASDの表情・感情認識に関与している可能性が考えられます。
教育年数が関与し、さらに感情認識と関連しているようです。
上記スライドの内容とも一致する部分がありますね。
道具の使い方を研究した結果では、頭頂間溝との接続性が大幅に変化したようです。ここから運動前野等の運動領野に接続されていそうですね。
また、右縁上回では特定の時間の長さに反応するニューロン群があり、時間感覚や時間の自己管理にも直接影響することとなります。
左縁上回は動作と物体の統合だけでなく、動作の認識と理解にも関与します。
さらに、聴覚、言語的な短期記憶にも関与するようです
縁上回は行動の計画にも関与します。
ここでも運動に必要な感覚情報などが統合され、パフォーマンスの引き出しも行われるため、病変により両側の上肢失行を引き起こします。
文法力も影響するようで、高文法力と低文法力で脳活動に差がある様です。
高文法力であれば少ない活性化で済み、低文法力であれば大きな活性化が必要となると考えられます。
注意に関しては、腹側注意ネットワークの一員として活動しています。
下に難しく書いてありますが、縁上回が外的刺激に注意を高め、角回が文脈を協調しつつ、入るべき刺激を調整しています。
縁上回は記憶の符号化(記銘)にも優先的な役割を果たしています。
身体所有感は前頭―島―頭頂と関連し、身体無視にも関与しそうですね。
興味深いですが、100均などで他にいい道具ないかな?と探しているような思考中(いろんな空想や計画)時に角回と共に関与しているようです。
プレッシャーなどの脅威の条件下では前頭前野と縁上回の活性化が低下しているようです。圧迫面接等では対象者の思考力低下時の状況などもみれるんでしょうか。
長期の乗り物酔いを2度経験したケースにおいて、どちらも得状回の海綿状血管腫からの少量の出血が検出されたようです。
縁上回は前庭感覚の統合にも関わると考えられるので、乗り物酔いと関連している可能性があります。
右半球損傷の方が頻繁に、重度な半側空間無視を呈します。
下頭頂小葉を重視する報告と、TPOJが重要であるとの報告があり、空間関係の感覚統合が上手くできないこと、その統合結果を頭頂葉、前頭葉にうまく運べないことなども関与していそうです
自己中心性無視は下頭頂小葉、上側頭回、中・下前頭回と関連し、物体中心性無視では、下側頭部の損傷と関連しているとの報告もあります。
また、上縦束も損傷によりUSNの残存に関わる一つとなっています
ボクセル研究において、右縁上回~中心後回までの皮質、白質がUSN出現と関連していると報告されています。
体性感覚と空間感覚の離断が原因と考えられています。
USNは、感覚領域から縁上回と皮質下の損傷が深く関与しているものと考えられます。
次は病態失認について述べていきます。
多くの領域で確認されてますね。
深部白質が最も重なりの多い領域ともあります。
持続する場合、運動前野、前帯状回、TPJ、海馬、扁桃体の損傷が伴うようです。
続いて、色名呼称障害についてです。
視知覚は良好であるが言語化しようとすると失敗するものです。
離断が考えられていて、右視野は入力されず、左視野は言語処理できないという状況がこうさせるようです。
次はPusher現象についてです。
多くの部位で認められますが回復が遅延する場合、上縦束や皮質脊髄路などと重度麻痺が共通するそうです。
次は計算についてと、ミラーニューロンシステムについてです。
より難しい計算は左下前頭回と左下頭頂小葉との連携によってなされるようですね。
ミラーニューロンシステムとしては、頭頂間溝、下頭頂小葉だけでなく、上側頭溝や中側頭回にも活動がみられています。
失行については左下頭頂小葉の角回周囲が重視されているとのことです。
縁上回でも発症はしやすいです。
音の空間情報は上側頭回後部→縁上回で担うようです。
次は、本題の弓状束についてです。
弓状束損傷による伝導失語は、ブローカ野とウェルニッケ野の接続が断たれたことで生じると考えられています。
現在はそれだけではないとする論文も散見されます。
弓状束(AF)のみの損傷は珍しく、弓状束だけに限定された伝導失語症の患者は少なく、ほとんどは他の部位も損傷した中でAFが最も損傷した症例であったようです。
さらに皮質のみでも復唱障害が生じることもあり、AFが完全に関与しているとするのは難しいようです。
弓状束は言語に大きく関連していることもあり、左の側性化があるようです。
弓状束の電気刺激では、後方と前方へ、双方向性に連絡することが明らかになっています。
伝導失語症患者の半数はブローカ野の代謝低下をしましています。
ウェルニッケ野では患者全員が代謝低下を示しています。
これは損傷による1次性の低下だけでなく、2次的なものも含まれていると考えられます。
IQとアルコール摂取量は相関しており、高いほど乱用のリスクが高いことが示されています。
弓状束がIQに関与しており、この両方がアルコール依存症のリスクと有意な相関を示しています。
ですが、弓状束のFA値が直接影響しているわけではなく、高いIQによることが明らかになっています。
弓状束の損傷は失語症に関連しています。
弓状束の後部が最も重要であることが示唆されました。
前頭葉と側頭葉の白質結合がメロディーのリズム変調に重要な役割を果たしているようです。
mTBIの右AFの側方部分のFAが負の相関を示したのに対し、健常者では正の相関がみられています。
ASDの言語発達に遅れのある対象者ではFA値の有意な減少が観察されています。
語彙の知識は左弓状束のFAと関連し、低下した場合年齢の影響は受けておらず、対照的に処理速度の低下は年齢の影響によるとのことです。
被殻出血患者では失語症スコアやDTTと正の相関がみられます。
流暢さと理解のスコアに関しては、左弓状束のFA値にわずかに正の相関がみられています。
ブローカ野の損傷のみでは長期的な障害には関与せず、弓状束の
同時損傷によることで持続性言語性障害と関連する。
言語野の病変と左AFの拡散指数が言語機能(理解、復唱、命名、失語症状)と有意に関連しています。
攻撃性や怒りの問題を抱えた群では、自己制御に関するAFのFA値が著しく低いことが示されています。
トリリンガルの弓状束は右側の役割が顕著となっています。
自閉症スペクトラム障害にいおいてAFは両側で大幅に減少しています。言語発達とも関連がありそうです。
弓状束の損傷が慢性的な無視と関連しています。
弓状束について、論文を集めてみました。
いかがだったでしょうか。
また続けて連合線維を追っていくので気になる方はチェックしてみてください。
ご覧になっていただきありがとございました!