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白質に関連するMRIの用語について

初めまして、くろと申します。
今回、白質を調べようと思いました。
理由としては、療法士は、下記脳画像のようなものを見る機会があるかと思います。

関わる疾患は脳卒中、脳腫瘍、そのた脳関連疾患など多岐にわたります。
私は、脳に関する書籍、論文を読み漁り、調べました。
そして思ったのです。
「病変、損傷が白質線維付近だとその場所の機能障害と、他の機能障害も出るのではないか?それなら今の知識では太刀打ちできないのではないか?」
そうです、仮に灰白質のみでも違う症状が出現する方も見受けられます。
ならば、白質を絡めた損傷であれば、何がでるかわからないのです!!
そして主要な白質線維を調べることに決めました。
主要な白質線維(連合線維)といえば

  • 上縦束Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ

  • 弓状束

上記あたりでしょうか。上記ほどではないですが有名な他の線維は

  • 上前頭後頭束

  • 下前頭後頭束

  • 中縦束

  • 下縦束

  • 鉤状束

  • 前頭斜走路

  • 帯状束

上記あたりだと思います。※他にも白質線維はあります。
白質は分類していくと下記の様に複雑になります。

これを紐解いていくことが脳卒中や脳腫瘍、外傷性脳損傷など、脳関連疾患の方々の理解に繋がるのではないでしょうか。

ということで、白質線維の論文を読んでいくうちに、
知らない単語が出てきたので紹介していきます。

先にまずはMRIのDWI、DTIについて学んでいきましょう。
(白質研究に使われることが多いので。)



  • FA値:拡散した水の方向性

  • RD値:垂直拡散方向

  • MD値:平均拡散

  • AD値:主拡散方向

  • ADC値:見かけの拡散係数(MD値から計算する)

  • 正常白質:低MD/高FA

等です。最初は何なのかさっぱりでした。
次にMRIのDTIの画像を見てみましょう。


“DTI は、神経内膜を取り囲む脂肪ではなく、実際の神経管を表示する唯一の画像法です。DTI は、白質の分析、特に標準的な MRI スキャンでは見えないびまん性軸索損傷および外傷性脳損傷 (TBI) の病理の検出に役立ちます。
DTI は、加齢に伴う変性、脳虚血、多発性硬化症、てんかん、代謝障害、脳腫瘍の検出にも使用されています。
脳腫瘍の場合、DTI は追加の組織分化を提供するだけでなく、神経外科計画のために神経路の組織不全を特定します。

https://www.umimri.com/dti/

DTIというものは、MRIのDWIを応用して、白質を可視化したものになります。水素原子の陽イオンのランダムな運動を、MRIでは拡散と呼びます。これには二種類の拡散があります。
・等方性拡散(MD)
・異方拡散(FA)

まずはFA値
これが肝になります。
簡単にいうと拡散した水の傾きです。

よく水にインクを垂らした状況を例として挙げることがおおいです。

ある点からすべての方向に対して一様に広がる物理現象のこと。
インクを水に垂らすと、水の中で球状に広がる。
脳脊髄液などの自由水が存在する領域では、プロトンはすべての方向に
対して同じ速度で拡散している。等方性拡散を生じ球状で表される

佐藤 英介, 磯辺 智範, 山本 哲哉, 松村 明, 拡散テンソル画像の基本原理と画像解析, 医学物理, 2016, 36 巻, 2 号, p. 97-102, 公開日 2017/02/02, Online ISSN 2186-9634, Print ISSN 1345-5354, 
https://doi.org/10.11323/jjmp.36.2_97, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp/36/2/36_97/_article/-char/ja,

図にしめすと下記の様になります。
異方性は水が何かにあたって、まんべんなく広がれなかった状態ですね。
等方性拡散はそのまま広がることができています。

白質路内の拡散率を測定するため研究では、拡散異方性(FA)を計算します。
さまざまな方向にわたる拡散率の比は0 から 1 の範囲であり、FA 値が高いほど管内での拡散率が低く、これは「完全性が高い」と解釈されます。
2番目に重要な値は平均拡散率 (MD) で、すべての移動方向にわたる平均拡散値を表しています。
FA値とMD値はどちらも、軸方向の拡散率 (AD) と半径方向の拡散率 (RD) の値によって決定されています。


左:等方性拡散   右:異方性拡散
異方性:左0←←←←→→→→右1

・AD値:主繊維方向に沿った長手方向の拡散
   値が高いほど拡散が低いことを示す
  「より完全性が高い」と表現されます。
・RD値:(半径方向拡散率)は水の垂直拡散を表す
    より高い値は「完全性の低下」を示す
FA または MD 値に加えて AD と RD を検査することは、拡散の違いや、白質の微細構造の違いを正確に特定するのに役立つ可能性がある。とのことです。

次はFA値についてです。

・限りなく等方性拡散に近い
→FA値は最小値(0)に近づく
・異方性拡散が強い
→FA値は最大値(1)に近づく
このようにFA値を求めることにより、
関心領域(ROI)内の拡散異方性の定量評価が可能となる

・FA値が大きい(1に近い)と画像上は高信号(白)
・FA値が小さい(0に近い)と画像上は低信号(黒)を呈する
白質は神経線維に富むため拡散異方性が高く、
画像上は高信号(白)となる。
微細構造組織の損失は、FA の減少/ MD の増加を伴う。

佐藤 英介, 磯辺 智範, 山本 哲哉, 松村 明, 拡散テンソル画像の基本原理と画像解析, 医学物理, 2016, 36 巻, 2 号, p. 97-102, 公開日 2017/02/02, Online ISSN 2186-9634, Print ISSN 1345-5354, 
https://doi.org/10.11323/jjmp.36.2_97, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp/36/2/36_97/_article/-char/ja,

次に、FA値の低下する疾患と、上昇する疾患の表を作ってみました。

(青木 2013 これでわかる拡散MRI p42)  

増える疾患もあるようですね。
興味深いです。
今度は研究を調べてみました

病変部ではFA値が低下、上昇するものなど、さまざまな報告がある。
脳白質神経線維の障害などで生じる拡散異方性の変化が要因。
(Firbank et al.,2011)
アルツハイマー型認知症の場合はFA値が上昇すると報告されている
 (Douaud et al.,2011)
AD減少によるFA低下は、急性・原発性軸索損傷のマーカーと考えられる。
FA値の測定ならびにFA mapの取得により、
各部位の拡散異方性を定量的かつ視覚的に把握することが可能となる。

ADは軸索損傷に対してより感受性がある。
RDはミエリン喪失、脱髄に対してより感受性が高い。
低FAは軸索喪失を示すと考えられる。

【FA正常値】
被殻0.2~0.5
視床0.3~0.5
内包後脚0.6~0.8
脳脊髄液0.1~0.2
大脳深部白質0.4~0.6
脳梁膝部0.7~0.9
大脳皮質0.1~0.3
脳梁膨大部0.7~0.9

【FA異常を示す疾患】
病変部ではFAが低下するのが原則。
異常があればFAは低下すると考えてよい。
白質の場合、神経線維が一定方向に揃って走行しているために
異方性が生じている。神経が障害されれば異方性は失われる。
さまざまな疾患で時期により
局所的にFAが上昇する。
(Wieshmann et al.,1999)
(青木 2013 これでわかる拡散MRI p43)

FA値は、損傷部位において脳血管疾患等により低下するため、
リハビリテーションの中で白質の形態的変化の指標として頻用される。
脳血管疾患発症後の CST 関連領域のFA が小さいほど、運動機能の
予後が不良である可能性が高い。
脳梗塞・脳出血発症から14~21日時点の中脳大脳脚FAの低下は、
回復期からの退院時のBRSの重症度と高い相関関係を示した。
(Koyama et al.,2018)
FMA の上肢スコアを使用した比例回復ルールにフィットしない患者は、CSTにおけるFAの低下が顕著で、所見による予後予測を補う形での活用も期待されている(Kumar et al.,2016) , (Kumer et al.,2016) , (Buch et al.,2016)
※CST=皮質脊髄路

DTTで、完全断裂・部分断裂・断裂がない場合の3群に分け、2年後の上下肢機能の状態との関連性を調査した結果、完全断裂群では上下肢機能の回復が不良で、部分断裂群では断裂なし群よりも機能回復が乏しかったと報告した。(Kim et al.,2018)
復唱機能の低下は左SLFと左AF、読解力の低下はAFのFA低下と関連していた。(Breier et al.,2008)
左半球における AF、SLF、IFOF、UF、ILFのFAからWABの失語指数(AQ)による重症度の予測を調べた。
AFおよびSLFのFAからの予測精度は高くIFOF、UF、ILFからの予測精度は低かった。AF、SLF、IFOFを合わせると単一の予測より高い精度を示した。(Lee et al.,2021)
急性期に無視症状が出現し、慢性期でも残存していた場合は、IFOF ・UFの損傷を認めた。(Karnath et al.,2011)

発達過程において、FAは上昇し、MDは低下する。
これは軸索の成熟・髄鞘化、細胞外液の減少を反映している。
(青木 2013 これでわかる拡散MRI p51)
加齢により組織学的には、軸索・髄鞘、グリアの変性がみられる。
全体としてFA値は20代でピークを迎え、その後徐々に低下する。
MD値は40代ほどで底となり、その後上昇する。
白質容積は40代でピークとなりその後減少する。
最近の研究では、FA、MDに加えてテンソルの長軸方向を示すAD値と、
長軸と垂直方向の拡散を示すRD値も含めて検討されている。
RD値は加齢により増加がみられるが、ADは上昇や低下など一定しない。 (Huppi et al.,2006) , (Madden et al.,2012)

1)佐藤 英介, 磯辺 智範, 山本 哲哉, 松村 明, 拡散テンソル画像の基本原理と画像解析, 医学物理, 2016, 36 巻, 2 号, p. 97-102, 公開日 2017/02/02, Online ISSN 2186-9634, Print ISSN 1345-5354, 
https://doi.org/10.11323/jjmp.36.2_97, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp/36/2/36_97/_article/-char/ja,

2) Song SK, Sun SW, Ramsbottom MJ, Chang C, Russell J, Cross AH. Dysmyelination revealed through MRI
as increased radial (but unchanged axial) diffusion of water. Neuroimage. 2002;17(3):1429-1436.
doi:10.1006/nimg.2002.1267

3) Budde MD, Xie M, Cross AH, Song SK. Axial diffusivity is the primary correlate of axonal injury in the
experimental autoimmune encephalomyelitis spinal cord: a quantitative pixelwise analysis. J Neurosci.
2009 Mar 4;29(9):2805-13. doi: 10.1523/JNEUROSCI.4605-08.2009. PMID: 19261876; PMCID:
PMC2673458.

4) 京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 病理学研究室(形態形成医療科学)Kyoto University,
Graduate School of Medicine, Human Health Science, Laboratory of Pathology (Human Morphogenesis)
拡散テンソルイメージング (DTI-MRI) http://www.hs-kyoto.net/?page_id=7669

5) Firbank MJ, Blamire AM, Teodorczuk A, et al.: Diffusion tensor imaging in Alzheimer’s disease and
 dementia with Lewy bodies. Psychiatry Res. 194: 176–183, 2011

6) Douaud G, Jbabdi S, Behrens TE, et al.: DTI measures in crossing-fibre areas: increased diffusion
 anisotropy reveals early white matter alteration in MCI and mild Alzheimer’s disease. Neuroimage 55: 880–
 890, 2011

7) Koreki A, Niida R, Niida A, Yamagata B, Anamizu S, Mimura M. Comparison of White Matter Structure of Drug-Naïve Patients With Bipolar Disorder and Major Depressive Disorder Using Diffusion Tensor Tractography. Front Psychiatry. 2022 Feb 14;12:714502. doi: 10.3389/fpsyt.2021.714502. PMID: 35237182; PMCID: PMC8882824.

8) Wieshmann UC, Clark CA, Symms MR, et al: Reduced anisotropy of water diffusion in structural cerebral abnormalities demo strated with diffusion tensor imaging. Magn Reson Imaging 17: 1269-1274, 1999.

9) Huppi PS, Dubois J: Diffusion tensor imaging of brain development. Semin Fetal Neonatal Med 11: 489-497, 2006.

10) Madden DJ, Bennett I), Burzynska A, et al: Diffusion tensor imaging of cerebral white matter integrity in cognitive aging. Bio-chim Biophys Acta 1822 : 386-400, 2012.

11) Koyama T, Koumo M, Uchiyama Y, et al:Utility of Fractional Anisotropy in Cerebral Peduncle for Stroke Outcome Predic-tion:Comparison of Hemorrhagic and Ischemic Strokes. J Stroke Cerebrovasc Dis 27:878—885, 2018

12) Kumar P, Kathuria P, Nair P, et al:Prediction of Upper Limb Motor Recovery after Subacute Ischemic Stroke Using Diffu-sion Tensor Imaging:A Systematic Review and Meta—Analysis. J stroke 18:50—59, 2016

13) Kumar P, Yadav AK, Misra S, et al:Prediction of upper extremity motor recovery after subacute intracerebral hemorrhage through diffusion tensor imaging:a systematic review and meta—analysis. Neuroradiology 58:1043—1050, 2016

14) Buch ER, Rizk S, Nicolo P, et al:Predicting motor improvement after stroke with clinical assessment and diffusion tensorimaging. Neurology 86:1924—1925, 2016

15) Kim AR, Kim DH, Park SY, et al:Can the integrity of the corticospinal tract predict the long—term motor outcome in post-stroke hemiplegic patients? Neuroreport 29:453—458, 2018

16) Breier JI, Hasan KM, Zhang W, et al:Language dysfunction after stroke and damage to white matter tracts evaluated usingdiffusion tensor imaging. AJNR Am J Neuroradiol 29:483—487, 2008

17) Lee JK, Ko MH, Park SH, et al:Prediction of Aphasia Severity in Patients with Stroke Using Diffusion Tensor Imaging. Brain Sci 11:304, 2021

18) Karnath HO, Rennig J, Johannsen L, et al:The anatomy underlying acute versus chronic spatial neglect:a longitudinal study. Brain 134:903—912, 2011


いかがだったでしょうか。
これから白質線維に関する内容を色々上げていきます。
興味がある方はまた会いましょう。
今日はここで失礼します\(^-^)/

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