未来ってどうデザインしていくの?:Designshipで開催されたSFプロトタイピング✕AIのワークショップに参加してみた
「未来」はどのようにデザインできるのでしょうか?
生成AIをはじめ様々な技術が急速に進歩している今、妄想する未来が実現するスピードは早まっており、未来を考える必要性が高まっています。そんな中、未来を考えるツール「SFプロトタイピング」が再び注目を集めています。
9月30日と10月1日の2日間にわたって開催された「Designship 2023」では、多彩なセッションが展開された中で、「SFプロトタイピング」をテーマにしたワークショッププログラムが開催され、自分も参加してきました。
自分が参加したワークショップがこちら。
富士通デザインセンターのチーム「インスピラボ」の方々が主催をしてくださった「未来の境界線」をテーマにしたワークショップです。
この記事では、SFプロトタイピングのプログラムと実際に参加してみての発見についてお話していきます。
SFプロトタイピングってそもそもなに?
ワークショップの紹介の前に軽くSFプロトタイピングについて触れていきたいと思います。
SFプロトタイピングとは、まだ見ぬ未来の世界や生活の思考実験を行う取り組みです。2010年頃から話題になり始め、インテルのフューチャリストであるブライアン・デビッド・ジョンソン氏が提唱したメソッドとしても知られています。
IntelやMicorsoft、ソニーなどの名だたる企業が、未来に対して実行可能なビジョンを作るためにこの取り組みを行っています。
SFプロトタイピングに興味がある方は、以下の記事もどうぞ。
「未来の境界線」を考えるSFプロトタイピングワークショップ
それではDesignship 2023で開催されたSFプロトタイピングのワークショップについて紹介していきます。
事前登録を行うイベントページでは、以下のように紹介されていました。
これだけでもグッと惹かれます。
まずは「AI ✕ SFプロトタイピング」の組み合わせ。ChatGPTかBardを使えるデバイスを持ってくるようにとの指示もあり、昨今話題になっているAIツールを使って、どのようにSFプロトタイピングを展開させていくのでしょうか。
次にテーマである「未来の境界線」。考えてみると自分たちの生活は様々な境界線に囲まれており、未来ではそれらがどのように変わるのでしょうか。
そして今回主催をしてくださった「インスピラボ」。富士通デザインセンターのチームで、未来を発想するためのインスピレーションを探索しているようです。調べてみると様々なフィールドでワクワクする取り組みをしているようですので、ぜひ見てみてください。
今回のワークショップのプログラムでは、インスピラボの方々のファシリテーションのもと、SFプロトタイピングのアプローチで、未来を舞台にした短編小説ショート・ショートを作っていきました。
「未来の境界線」を考えるプロセス
それでは今回自分が参加したワークショップについて見ていきます。
このワークショップはDesignshipの中のイベントの一つだったこともあり、90分と限られた時間でしたが、シンプルでワークし易いプログラムに設計されていました。
まずチェックインで、SFプロトタイピングの紹介と同じテーブルでワークする方々との自己紹介がありました。自分のテーブルは、UXデザイナー、UIデザイナー、PdMなどに携わる4人でした。さらにテーブルには、インスピラボの方が一名テーブルファシリテーターとしてついてくださいました。(心強い!)
最初のワークでは、様々な先進的な取り組み事例をインスピラボの方々から紹介いただいて、それをベースにワークテーマとなる「境界線」のアイディエーションを行いました。
このとき、それぞれの事例について、「どうすれば〇〇と〇〇の境界線を無くせるだろう?」や「もし〇〇と〇〇が交差したらどんな体験になるだろう?」などの問いをご用意いただいていて、限られた時間の中でもスムーズに発散できる工夫がされていました。
次に、事例から作品のテーマとなる「境界線」とかけ合わせ、ショート・ショートの物語を構築するための要素を強制発想のアプローチで考えていきます。
今回の強制発想では、インスピラボの方々が用意してくださった特製のカードを使って進めていきました。(カードの質感やカードの内容を含め、このカードの完成度がすごく高かったです!)
4つのカテゴリがあるカードの束からそれぞれ3枚ずつ取り、さらにそこから2つのカードを選択してショート・ショートの物語の土台になるサブテーマを決めていきました。
そうして決めていった自分のテーマが以下のものです。
境界線は「正常↔異常」で、サブテーマが「かき混ぜる」と「指輪」。
最後に、ChatGPTにこれらのテーマを伝えて、ChatGPTにショート・ショートを作ってもらいます。そう、ショート・ショートを作るのは人間ではなく、ChatGPTです!
インスピラボの方々が事前にChatGPT/Bardに入れるプロンプト(AIへの指示テキスト)の型を作ってくれていたので、その型に選んだ境界線と選んだカードを挿入するだけで準備完了です。
そこからはAIにショート・ショートを作ってもらい、気に入らなければプロンプトを修正したり、条件を追加したりなどをして工夫をしていきました。
自分はChatGPTを使って、ショート・ショートを作りました。その結果がこちら。
うーん、なんとも。抽象的なテーマすぎて、ChatGPTを困らせてしまったかもしれません(笑)。
プロンプトを変えつつ何回か試してみたんですが、テーマが難しいことに加えて、時間も限られていたので、なかなか気に入るようなストーリーにはなりませんでした。今回はそこもご愛嬌かなと思います。
一方で、他の作品の中には、しっかりと物語性とテーマ性が組み込まれているものもありました。やはりちょうどいい情報量と設定のプロンプトがありそうです。
AIと共創するこれからのSFプロトタイピング
ChatGPT/BardといったAIツールを活用したSFプロトタイピングを実践してみて、AIを使う、AIと対話をすることによって、人間の認知を超えた発想ができると可能性を感じました。
SFプロトタイピングのそもそもの意義の一つは「『今』あるバイアスを取り外すこと」です。
私達の普段の思考は、これまでの体験や社会通念に沿って行われています。今の社会で生きていくためには必要なことですが、未来は今と異なる体験や社会通念が広がっているはずです。
20年前には今のような情報アクセスを可能にするWebサービスやデバイスも、それを取り巻く言葉もルールもありませんでした。つまり、未来を想像/創造するためには、今の価値観で考えるだけでは不十分で、思考の枠組み(バイアス)を外す必要があります。
今回のワークショップでは、このバイアスを「境界線」と表現されていました。今の境界線の先にある風景や物語を考えることによるバイアスを超えるための思考実験とも言えるかもしれません。
生成AIは良くも悪くもインプットを渡すとなにかしらのアウトプットを出してくれます。今回の自分の例では、「かき混ぜる」「指輪」「正常と異常」といった通常では結びつかない、もしくは結びつけようとしないものでもつなげてストーリーを創り出してくれます。
実際にワークショップに参加して、色々な方のアウトプットを見て、「AIを活用することで、今自分たちが持っているバイアスの境界線/輪郭を発見して、未来の社会の境界線/輪郭を見つけることができるのでは」と感じました。
とはいえ、もちろん闇雲にキーワードを使ったSFプロトタイピングをやっても効果は薄いです。
十分な効果を持つAIを使ったSFプロトタイピングに取り組むためには、AIツールの特性の理解とそれを踏まえたワークの設計が必要になります。この領域はSFプロトタイピングの取り組みの中でも、まだ探索ができていないので、これから考えていきたいですね。
(今回は文章でのアウトプットでしたが、Midjourneyなどの画像生成を行うAIなどと組み合わせることで、強引なインプットからでも可能性の探索が可能になりますね。)
未来をデザインしていく
SFプロトタイピングは未来を対象としたデザインであり、未来を考えるためのプロセスもデザインの対象だと考えています。
今回、DesignshipでSFプロトタイピングのワークショップが開かれると知って、すぐに申し込みました。前々からSFプロトタイピングに興味があったのもありますが、デザイン業界が取り組むSFプロトタイピングに興味がありました。
実際にワークショップに参加してみて、未来をデザインの対象と見て、そのプロセスもデザインしていくことで、SFプロトタイピングとデザインのシナジーが生まれてくるといいなと感じました。
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