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【小説】「インベンションマン」006

 数カ月前、春都のスマートフォンに送られて来た一通のメール。
 そのメールには、ソフトが添付されていた。

 彼は早速、技術同好会で使用していたパソコンにメールを転送、ファイルを開けてみた。
 すると、画面にある文字がタイプされた。

―Are You Inventor?(あなたは発明家ですか?)

「アー、ユー、インベンター?」
 よく分からないが、好奇心を覚えた彼は、『Yes』と打ち、エンターキーを叩いた。

 すると、ややあって『プログラムを解凍しています……』というダイアログが現れた。

 待つ事数分。
 砂時計が消えると同時に、画面の中には座敷童子の様にちょこんと座った女の子が出現していた。

『ハジメマシテ』
 彼女は、機械的な口調で言った。
『いんべんしょんぷろじぇくとヘノゴサンカ、アリガトウゴザイマス。ワタシハアナタノさぽーとぷろぐらむデス』

(インベンション、プロジェクト?)
 初めて聞いた言葉に戸惑う春都だったが、その疑問が直ぐに解決することは無かった。
 サポートプログラムである彼女も、プロジェクト自体については何も分かっていなかったのだ。
 彼女曰く、時期が来れば自ずと明らかになるらしい。

(まあ、もともと偶然送付されて来たものだ。特に気にする事はない)

 春都はそう割り切って、彼女との会話を続けていった。
 暫く話をした彼は、これは天命ではないかと実感する。
 彼には、『発明癖』があったからだ。

 彼が思い描く画期的な装置や機械は、どれも現代の技術文明では実現不可能なものばかり。 
 机上の発明王は、毎日叶わないアイデアを毎日虚しく宙に彷徨わせていたのだ。

 しかし、ナタリーの出現により、状況は一変する。
 彼女の中に組み込まれていた高度なプログラムによって、春都の発明品は現実的に可能なレベルまで修正された。
 あとは、商品化する為の『財力』である。

 そこで春都は、ダメ元で中学からの腐れ縁である蔵敷に相談を持ちかけたところ、二つ返事で協力してくれる事になった。

 蔵敷は、日本で三本の指に入る巨大財閥、『旭納グループ』社長の三男坊だったのだ。
 彼自身が自由に使える資産は、一地方自治体の年間予算より多いと言われている。

 頭脳と資金、強力な後ろ楯を得た春都は、以前から構想していた計画を実行に移した。

 学園を表から統率している『相談室』だけでは自ずと限界がある。
 よって、相談室ではカバー出来ない案件等を引き受ける組織を必要としていた。

 こうして、たまみらい学園の正義を守る裏組織『インベンションマン』が誕生。

 そして、この『技術準備室』は『インベンションマン』の秘密本部となっているのだ。

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