【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第4話
彼女は、否定とも肯定とも取れるあいまいな表情を作っていた。
「自己紹介がまだだった。俺は、篠原悠生」
「……」
久深は、先程から一言も口を聞いていない。
困った悠生は、幾分饒舌気味に話していた。
「さっき君が言った『風の色』の事なのだけれど」
「……もういい」
彼の言葉を、久深は静かに遮った。
「突然あんな事を言った私が間違っていました。ごめんなさい、忘れて」
寂しげにヴァイオリンをケースにしまった彼女は、そのまま立ち上がろうとする。
その背中に、悠生は言葉を掛けた。
「……風の色は、どんな色?」
久深の脚が、ぴたと止まる。
彼は、残りの台詞をゆっくりと紡ぎ出した。
風の色は、君の色
夢を求めて、いたいから
君を残して、去っていく
サヨナラの、言葉も言わず
風の様に、去っていく
「エッセイ集、持っているんだ」
驚いた久深の表情を見て、彼は少し照れくさそうに言った。
「君の詩かと思ってたけど、違うみたいだね。恋人の……かな?」
彼女は、ううんと首を振った。
暫く、打ち寄せる波の音だけが辺りに響いている。
「お兄ちゃん……なんです」
久深は、決心した様にポツポツと話し始めた。
オトドケシマス・イヤシノヒトトキ!
黒珈の週末ストーリィランド🐈⬛☕️✨
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