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【小説】「インベンションマン」011

「エリア66、異常無し」
「了解(ラジャー)」
 発信機から聞こえる部下の声に、冬流は小声で返答した。

 現在は午後11時。
 あれから簡単な打合せをして解散した相談室員達は、各々着替えた後、再び女子寮の前に集合した。
 春都が作戦行動を説明する。

 急遽の対応となったため、女子寮への男子入館許可を取り付ける事は出来なかった。
 その為、寮内部の警備は秋希と夏純、そして女子新聞部有志2名で行い、寮周辺での不審者捜索を春都と冬流及び男子新聞部員2名が担当する事となった。

 彼等は今、女子寮の庭を5メートル四方を1マスに見立て、約400マスを手分けして潰しに掛かっていた。
「これで南エリアはオールグリーンか、次は西に移るかな」
 どこかの部屋から、夜間のため若干ボリュームを絞った福●雅治の曲が聞こえてくる。
 冬流は、曲に合わせてリズムを取りながら、中庭の池に掛かった石橋に飛び乗った。

 その時、水面の片隅が微かに光った様な気がした。
「!?」
 瞬時に頭上を見上げた彼の瞳が、屋根伝いに流れていく黒い影を捕らえていた。
「ビンゴ」
 冬流は静かに走り出し、耳元からマイクを引き出してメンバーに指示を出す。

「こちら鷹の目(ホークアイ)……エリア70でターゲットを発見した。野郎ども、戦争だっ!」

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