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【小説】「twenty all 2」005

「はぁ……」
 レジの前で、佳乃は大きく溜め息を吐いた。
 夕方の混雑する時間までは、まだ余裕がある。

「老けるぞ、佳乃」
 横合いから、そう言って嗜める声が聞こえてきた。
 彼女が首を廻らすと、Tシャツデニムに緑色のエプロン姿の男子店員が、笑いながら彼女を見ている。

「失礼な言い方ね、マサト」
 佳乃は、幼馴染兼バイト仲間である相澤正人(あいざわまさと)に毒付いた。
 正人は、良くも悪くも彼女が地を出せる、数少ない相手だ。
 ちなみにもう一人は、従姉妹兼彼の恋人である月島伊織(つきしまいおり)だ。


「すげーじゃん、いきなりナンバー2かよ!」
 休憩時間、飲み終わった缶コーヒーを軽く振りながら、正人は言った。
「他人事だと思って……ふぅ」
 彼の反応に少しむくれた佳乃は、通算100回目の溜め息をつく。
「部員も10人超えたし、全員同学年なのよ。何で私が、って感じ」
「確かに井隼さんや吉田さんの方が適任かもなぁ」
 正人は3人娘と面識があるので、素直に感想を述べる。
「でしょう?あーぁ」
 机に突っ伏した佳乃に対して、正人は優しくこう言った。

「俺は、佳乃がダメだなんて、一言も言ってないぜ」
「え?」
 予想外の台詞に、ガバッと顔を上げる佳乃。
 それを見た正人は、ニヤニヤしながら言葉を続けた。
「それだけ期待されているんだよ、『王子サマ』にね♪」

「……その言い方はやめて」
 耳を赤くした佳乃は、手にしたバンダナをキュッと巻き直した。
「さあ、休憩時間終わったよ。戻った戻った」
「へーい」

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