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【小説】「インベンションマン」024
二人は、先程の場所から歩いて数分程の所にある、雑居ビルに入って行った。
数年前からの急激な再開発によって、駅前周辺は色々なひずみを生み出していた。
事実、この北口近辺は、何かに引き寄せられる様に、様々な闇が巣を広げていたのだ。
エレベーターは、最上階の9階で止まった。
足を踏み入れた途端、雰囲気が一変する。
隅々まで綺麗に磨き込まれた室内は、古いビル特有の埃臭さを微塵とも感じさせず、洒落た家具等がその小綺麗さを一層引き立てていた。
「さて」
彼女は、一番奥のチェアに腰掛けた。
「聞かせてもらいましょうか、報告を」
「H-17がヘマを起こしてね……」
ソファに座った男は、テーブルの上に両足を投げ出しながら話を進める。
「でも、代わりに面白いものを見つけた」
胸元から抜き取った一枚の写真を、女の方に投げる。
そこには、暗所で撮影したので輪郭がハッキリしていないが、覆面姿と思われる男子生徒が写っていた。
彼女は無言で、説明の続きを求める。
「こいつが、H-17を半殺しにした。もっとも、トドメは俺が刺したのだが」
「只のコスプレ少年じゃないの?」
あまり興味がなさそうに写真をひっくり返していた女の手が、はたと止まる。
「ちょっと待って、映っているこの場所は?」
その言葉を待っていた男は、ニヤッと笑って言った。
「そう、これは校舎から校舎に『跳んでいる』瞬間の写真さ」
位置的に、4階位の高さだろう。
写真の中の少年は、確かに宙を跳んでいた。
「それに、何やら飛び道具らしきものを使っていた」
男は、新しいシガーに火を付けた。
「失敗作とはいえ、H-17は元々あんたの優秀な部下だ。それを倒したとなれば、こいつはあんたの目的の為に必要なガキかも知れないぜ」
「分かった」
スーツの胸元からスマートフォンを取り出して、女は言った。
「調べてみるわ、この少年を」
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【インベンションマン】ACT.1
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