国民民主党 第3回憲法調査会「憲法改正の作法とは」1

井上武史先生講義「Ⅰ フランスの改憲プロセス:2008年改正を例に」までの文字起こしです。

■冒頭挨拶

(山尾)
おはようございます。
今、榛葉議員からお話あったように、ちょっと今日は国際会議場を取ることができましたので、皆さんなんかちょっと世界議連みたいな、国連で日本の憲法を議論するぞみたいな、ちょっとそんな感じでちょっと新鮮な気持ちでまた今日取り組めればなというふうに思っております。
今日は第3回の国民民主党 憲法調査会ということで、井上武史先生にお越しをいただきました。冒頭はいつも国民民主の玉木代表からまず挨拶をいただいていますけれども、今日は所用で、でも必ず遅れて何とかくるというふうに聞いておりますので、ちょっとそこはお待ちをいただいた上で、まずは舟山政調会長から今日のご挨拶をいただきたいと思います。

・舟山政調会長

皆様おはようございます。
今日は第3回、3週連続第3回目ということでありますけれども、来週以降国会が始まりますので、この朝の日程少し変則的になっていくと思いますけれども、こういった憲法議論、これは私毎回冒頭に申し上げてますけれども、何か憲法の議論をするということ自体が何か国を壊すような、そんな印象を持たれている節がありますし、それこそ改憲派と護憲派と、二項対立のように言われてますけれども、やっぱり自分たちの国の憲法が今どういう位置にあるのかということを考えることが大事だと思いますし、また他国においてもいろんなプロセスを経て憲法の議論をしていると。
これがやはりいろんな意味で時代の変化に対応しまた前向きな議論に繋がってるんじゃないのかなと思っています。
1回目で、私はその日本の憲法があまりにも条文が少ないというところで余白が多くて解釈の余地がある、それが解釈改憲とかいろんな議論に繋がっているということを私印象に残ってますし、2回目のときには、やはりこのいわゆる右左の、かつての保守革新のような対立軸に、何かこの憲法が、憲法議論しようとするとあいつは保守だ右だと言われ、守ろうとする人が左だ革新だと言われるという、やっぱりそういったところが、何かこういびつだということ、そんな話が印象的でありました。
今日はこの国内の憲法議論の参考にするために、フランスにおける憲法改正の議論について、井上先生、関西学園大学の井上教授にお越しいただきまして、お話を伺いたいと思っております。
今日は本当にありがとうございました。
よろしくお願いいたします。

・山尾憲法調査会長

本当に今舟山さんがおっしゃった通り、やはり憲法の議論に挑むというだけで、ちょっと重たいレッテルを貼られるっていう、この日本の状況を何とか打開したいなと私もずっと思っていました。
そういうときにフランスでは、それこそ左派政権であっても、右派政権であっても、きちっと大統領が変わればこの国のゆがみを憲法でどういう形で直していくことができるんだろうっていうことを、与党野党に関わらず提案するのが、ある意味当たり前のことで、それに対して与党の提案が取り入れられたり、野党の提案もまた取り入れられたりと、こういうプロセスがあるということを教えてくださったのが井上武史先生で、今日はぜひ皆さんにもこの話を一緒に聞けたらなということで、ご無理をお願いして新幹線に乗って来ていただきました。
早速とは思いますけれども、ちょっと皆さんのお手元の資料を一度おさらいをさせてください。いつもの通り、4種類ありますけれども一つが次第です裏もいつもの通りのお手紙です。
「違う意見を尊重しあおう」なんて最初に肩肘張って書きましたけれども、十分そういうことがもう出来ている調査会になっているので、もうこれはあまり説明はいらないかなというふうに思っています。ここで書いているのが、記録映像とか、この議事録をきちっとアーカイブ化して、皆さんにこれは提供していきたいというふうに書いてあります。記録映像のところまでは何とか作業が追いついているんですけれども、議事録のアーカイブ化、そしてあの2時間のテキストを全部読むのはほとんど難しいので、それをちょっと圧縮した説明文みたいなものも1回からさかのぼって出していきたいと思っておりますので、ちょっと一生懸命作業しますが、少しだけお時間をいただければということをお伝えさせてください。
そして相変わらずアンケートもちょっとバージョンアップできてなくて申し訳ありませんが、常にこの私のあの下手、下手くそこくみんうさぎのアンケートになっていますが毎回読んでいますし、これもまた、公表もきちっとしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
そして、次回のお知らせです。
これは終わりのときにまたご報告をしたいというふうに思います。
そして今日これからお話を聞かせていただくこの井上武史先生の綺麗な色刷りのレジュメということになります。
それでは、井上武史先生、今日はぜひ私もって話を聞いて目から鱗が落ちるっていう経験をしましたので、ぜひ今日の聞いてくださってる皆さんの目からも鱗が落ちるという体験をシェアしたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

■井上先生講義

皆さんおはようございます。関西学院大学の井上武史と申します。
本日は山尾議員にですね、引っ張っていただきまして、誠にありがとうございます。
東京に来るのは実は8ヶ月ぶりぐらいでして、久しぶりにきて緊張しておりますのと、あと大学今オンラインでやってまして、対面で話してることは実は今期1回もないですね。まだですので、少しあの緊張するかもしれませんけども、どうぞよろしくお願いいたします。それでは座らせてくださって話させていただきます。

本日は「憲法改正の作法とは」ということでフランスの改憲プロセスについて話してほしいというふうな依頼でしたので、そのような内容で構成させていただいております。
スライドですね、皆さんのお手元のレジュメに従ってお話をさせていただきますのでよろしくお願いします。
私の自己紹介はですけども、一番特筆すべきとすればですね一番下の2016年にですね、衆議院法制局の委託調査でですね、フランスの憲法改正について現地で話を聞いたりする機会がありましたので、今日のご報告もその点を踏まえてお話をさせていただきたいなというふうには思います。
フランス憲法と言えばですね、ここに座っていらっしゃる山尾先生がおそらく国会議員の中では一番造詣が深いと言いますか、これまでも数々の関わりを持ってこられましたので、それを多少紹介させていただきたいなと思います。
私がですね、フランスの先生がこられたときに、多少おせっかいだなと思いつつ。でも山尾先生だと意見交換をしてくださるかなと思って一応声を掛けるんですよ。そうするといつも快くお引き受けいただいてるっていうことです。
左の写真はですね、2年前になりますかね、ドミニク・ルソーというですね、フランス憲法学の第一人者の方が慶応大学に講演に来られまして、その際ですね、山尾さんと意見交換会を、議員会館で1時間2時間ぐらいですかね、かなり長い時間をやったと思います。ちょうどこのときはドミニクルソー先生も本を書かれていて、山尾議員も「立憲的改憲」という本を書かれていまして、ちょうどいい交流になりまして有意義だったと思います。
右の写真はですね、昨年の10月に、これフランスの国会、下院でですね、「日仏の憲法改正」に関するシンポジウムというのがありまして、そこでですね山尾議員が日本の国会議員ただ一人ご参加されて、日本の憲法の状況を報告したという趣旨の写真でございます。
ちょっと写ってますのはフランスの国会の中の委員会室でありまして、写真の右端に写っておりますのは、これ下院の法務委員長の方だったと思うんですけども、確か当選1回っていうかなり日本の状況が違うなと思いましたけども、1回の人が一番右でちょっと写真切れておりますけども、載っております。大変ですね山尾先生堂々とした報告で、私も大変感銘を受けたところでございます。
これまでも山尾議員といろいろ共著を出させていただきましたので、ご紹介させていただきました。

・本日の内容

それでは中身に入っていきたいんですけども、何故フランスを参考にするのかというところをまずお話をしたいと思います。
憲法は普通の国では、普通の国ですと本来ですね、国家とか国民を統合するという役割とか機能を果たしているわけなんですけども、日本ではですね、憲法の議論をすると分断されてしまうんですね、議論が。これはですね、諸外国とですね大きな違いということになります。
それはなぜかと言いますと、改憲派と護憲派がですね、もう歩み寄りなくイデオロギー対立をしておりまして、最近弱ってきたと思いますけども、そのような中で合理的な議論がなかなかできないという状況ですね。例えば改憲派は極端なことを言いますと、憲法一文字でも全部変えたいと。護憲派の人は一文字も変えたくないと言う人の対立でしたので、どんな有益なですね、制度改革論議とか、改憲論議っていうのもですね、なかなか議論が合理的にならないということがございます。
そのためですね憲法は1946年の制定以来、これまで先生方ご案内の通り一度も改正されたことがありません。で、70年以上も一言一句憲法が変わらないっていう状況はかなり特殊な状況でして、そういう中で私たちは憲法の議論をしているということになります。
これに対して今日見ますフランス憲法はですね、1958年、日本の憲法で12年遅れて制定されておりますけども、常にですね、24回の改正を経ております。
山尾先生が先ほどおっしゃったように政権がですね、右派になっても左派になっても憲法議論をしてまして、憲法の改正を実現しているということで、日本にですね、そこで行われている議論っていうのは日本にもですね、示唆的だなというふうに思いまして紹介させていただきます。
特に2008年が、これが最終の改正で、24回目の改正ですけども、内容的にも手続き的にも非常に重要な意味を持っておりますので、このときの改正のプロセスをご紹介をしながらですねフランスの議論をですね、紹介していこうかなというふうには思っております。
本日の内容ですけども、以上の3点ですね、これはフランスの改憲プロセスを見まして、フランスの憲法論議の中身についてもですね少しご紹介させていただきます。
最後今後の議論のためにということで、日本の議論に繋げていければなというふうに思っております。

・Ⅰ フランスの改憲プロセス:2008年改正を例に

早速ですね、1のフランスの改憲プロセスというところに入ります。
まずフランスの憲法改正手続きを簡単に紹介をさせていただきます。
改憲手続きは3段階ありまして、改憲原案提出で国会の審議で承認手続きということになります。
まず誰が改憲法案を提出できるかといいますと、これは国会議員と大統領にですね、分属してる分有してるというふうに考えられておりますし憲法にもそう書いております。
さらに国会審議ですけども、これは日本と違いまして、両議院の過半数の賛成で国会で可決をする必要があるということになります。
3番目の承認手続きですけども、これは少し説明の必要なところでして、国会議員が提出した改憲案っていうのは、必ず国民投票に付されなければならないということになっております。国民投票の過半数で承認されます。
大統領が提出した改憲法案につきましては、これは国会での可決の後ですね、原則は国民投票で承認をされるものというふうにされております。ただしですね、大統領提案の場合は、国民投票以外に、両院合同会議を招集して、その5分の3の賛成で承認するという手続きが認められているわけですね。
実はこの例外である両院合同会議での可決承認っていうのがですね、フランスでも大変多いわけでして、この例外が原則化している、常態化しているという状況にございます。
というのがですね、憲法改正のための国民投票が行われたのが、実は2000年の改正の1回だけなんですね。このときは投票率も非常に低くって、30%ぐらいしかありませんでしたけども、その1回しかなかったということで原則と例外がですね、逆転しているということです。
今後どういうふうになるかといいますと、これもインタビューしたときにはですね、もう国民投票は選択されないだろうと、もう今後も。両院合同会議でのですね、方向がもう定着していくというふうにおっしゃっていたのが印象的です。
24回の憲法改正があると申し上げましたけども、全て大統領の提案により実現しておりまして、実は国会議員が提出した改憲案っていうのは一度も成立したことがないんですね。一度もない。ですので、でもですね日本と大きく状況が異なるというところだと思います。
ただですね、後でご紹介できるかも知れませんけども、国会議員の先生がたはたくさん法案を出しています。憲法改正の法案を出しております。日本と違いまして1人でも法案を、改憲案を出せますので、各議員の先生が自分の思いを憲法改正案として提示するということは認められておりまして、この点にですね政治的な機能があるというふうには考えられております。ただ議員として改憲が行われたことは一度もないという状況でございます。

次に2008年の改憲プロセスを見ていきたいと思います。
で、もちろん24回目の、2008年の憲法改正ってのは、現行憲法下で行われた最大規模のもので、半分の、約半分の条文が改正されたっていう大改正だったわけです。
これは大統領、当時のサルコジ大統領の政治主導を背景としながらも、専門家による審議会というのも行われまして、そこでの検討が大きな役割を果たしたということでも注目されるものでございます。
経過についても簡単に今から見ていきたいんですけども、①②まずサルコジ大統領が選挙公約として憲法改正をすると、このときに出ていたキーワードはですね、「現代化」というものでした。っていうのもですね、2008年に憲法制定から50年を迎えるということで、その節目で大改正をする、そのテーマが「現代化」ということだったわけですね。
②ですけども、サルコジ大統領は5月に大統領に就任した後、割合すぐにですね、専門家会議というのを設置しまして、憲法改正の論議を始めます。
そのときに開かれた委員会、専門家会議がですね、バラデュール委員会というものでして、正式には「第五共和制の統治機構の現代化と均衡回復に関する検討と提案のための委員会」ということでですね、ここで議論がされるということになっております。
で、その委員会の内容構成ですけども、バラデュール委員長というのはですね、右派の重鎮の人、政治家でして、非常に有名な方です。その他、政治家や実務家、あと法学者もですね、やっぱり多数入っておりまして、かなり専門性、技術性は重視した議論が行われたということになると思います。
その報告書が10月にも出されるんですけども、先生がた、憲法改正のですね、どういう時間スケジュールで行われるかっていうのもご関心あると思いましたので、日付入れましたけども、7月に専門家会議が開かれまして、10月には報告書が出てるんですね。これがより民主的な第五共和制っていうもので、今日私も持ってきましたけれども、こういう本としてですね、実際に販売されてまして、誰でも簡単に見ることができるわけでございます。
この報告、改憲のですね、テーマですね、報告書のテーマにもなってますけども、3点ありまして、執行権の統制と、議会の権限の強化というものと、市民の権利保護ということになって、それぞれ三つのパートからなっております。
そこでは憲法改正だけがですね、対象目的とされているわけではなくて、法律改正でありますとか、議員規則の改正というのもですね、併せて提案されたり議論されたりしてるわけですね。
ですので憲法改正といいましてもその中身、改革の中身がやっぱ重要なわけでして、憲法改正そのものがですね、重要というふうには位置づけられておりません。
実際どういう提案をしたかというのは、次のスライドなんですけども、ちょっと字がちっちゃいので申し訳ありませんけども、一番上のこの青で、背景のあるとこですね、これがテーマなんですね。
これ三つの柱でして、上が「執行権の統制」下が「議会の強化」ということで、一つずつ、一つ二つ例を挙げております。
番号10と左で書いてあるのは10番目の提案ということですけども、そこで緊急事態についての提案を書いているわけでして、これはここでもわかります通り、執行権の統制というテーマで議論されているわけですね。
3に提案がありまして、条文案というところで具体的な条文案を委員会としては示しているということになります。
しかしですねこのバラデュール委員会は改憲を提案しましたけれども、結果としてこれは実現しておりません。ていうのは政府がこの委員提案採用せずに、憲法改正を進めたという経緯があるからなんですね。
下のですね41番を見てもらいますと、これは政府統制に関する議会の役割っていうですね項目で、提案がありまして、これも条文案が提示されております。
で、この条文案は改憲で実現したということで、実際よく似たような条文ですね、可決されてるわけですね。
44番見てもらいますと、政府質問制度における野党の権利の拡大ということがテーマになってまして、これも提案の内容がですねそこに書かれています。しかしですねこの改革の内容というのは憲法改正じゃなくても実現できるということで、委員会の議院規則の改正を提案しております。それを受けまして実際議院規則が改正されまして、内容が実現されたというこういうふうになってるわけなんですね。
ですので日本はですね、条文、憲法の条文に非常に注目が集まるんですけども、フランスではですね制度の内容が、この内容が重要でして、憲法改正するかどうかは手段と。手段の一つという位置づけがですね、捉えてられているのだなということがですね、わかると思います。
報告書が出ましたら、今度は政府で原案を作成するということになります。
報告書を受けまして、政府は法務省の民事局憲法広報課というところに回しまして、原案を作成いたします。フランスでは憲法改正の所管は法務省でして、議会のですね、答弁に立つのは法務大臣ということが一般的でございます。ここの下の方のですけども、2008年憲法改正の条文を作成いたしまして、報告書が提案した4分の3の条文が選択されております。
重要なのは、これは報告書を出したからと言いましてこれをそのままですね、政府が採用するというものではありません。バラデュール委員会は大統領が設置したものですけども、あくまで諮問的な意味でして、それを採用するかどうかっていうのは政府に全く委ねられているわけでございます。
で、司法省ですね、法務省が担当と言いましたけども、改憲内容によってはですね、首相官邸とか他省庁の助けを借りて原案作成作業が行われるということもなされたようです。実際2016年の緊急事態条項のときには、緊急事態はこれ警察に関わりますので、内務省の関係者もいたようで、更にですね、緊急時の対応っていうのは、これ国際人権条約との関わりがありますので、外務省も関係するわけですね、人権条約を扱う。ですのでこういうことが行われるわけですね。
写真の説明を多少しますと、左上がこれが法務省でして、下の写真がですね首相官邸ですね、首相部の中の担当者がヒアリングしたときの写真を掲載しております。
で、原案がですね、作成する過程で、フランスではその法案の事前審査というのも政府の中で行われます。これは普通の法律案でも同じでして、憲法改正案でも、事前のコンセイユ・デタというですね、機関で行われることになります。
このコンセイユ・デタ、国務院と訳されることもありますけども、これ非常に伝統のある組織でして、1799年にナポレオン一世がこれを創設したというものです。最高行政裁判所と政府の法律顧問、法制顧問の2つの任務を持っておりまして、日本の内閣法制局のモデルとなった機関だというふうに考えられています。
ここで事前の審査をしまして、憲法改正の必要性ですとか条文の形式、体裁などをですね、チェックをいたします。政策評価は基本的にはしないというふうには言われてますけども、案件によっては微妙なこともあるようで、この辺の区別はちょっとはっきりしないところがあります。
で、コンセイユ・デタの審査結果はですね、日本の方と結構違いまして、インターネットで全て公開されますので白日のもとにさらされるわけですね。国会で答弁することもほとんどありません。もう報告書で、インターネットで公開された審査結果というのが全てということになりますので、あとは政治で議論するということになります。
コンセイユ・デタはですね、政府の人、組織ですけども、必ずしもべったりというわけではありませんで、過去の憲法改正案について否定的な考え方を、政府に突きつけたということも何回かございます。
否定的・否定的・肯定的・否定的と書きましたけども、一応はですね、一応法律の観点からチェックをしたということで、その観点から意見を述べると。で、コンセイユ・デタの否定的な意見を述べたとしても、政府はあえて憲法改正をやるということもしておりまして、最後はやっぱ政治決断ということにはなっているわけですね。
2016年のときも緊急事態条項の導入が実は問題になったわけですけども、このときは肯定的な評価を与えたというふうに伝えられております。ただしいろんな注文をつけておりますので、やはり審査の意義っていうのは大事なのかなというふうに思います。
このですね、政府内での原案作成が終わりましたら、閣議決定をされまして改憲法案が国会に提出されるということになります。これが2008年の4月23日でして、報告書が政府に提出されてから半年で、条文作成作業を一応終えたということになっております。
その次は「国会での審議・議決」に移ります。
憲法改正法案は議会の法務委員会っていうところで審査をされます。
これ常任委員会の一つです。日本と違いまして、あくまで憲法改正の法律案ということで通常の法律と同じ手続き、同じ委員会で審議をするというのがですねフランスの方式だそうです。で政府の提出から国会審議の間までに委員長が改憲法案を分析検討しまして、報告書を、委員のために作成をいたします。それを基に審議をいたします。
で、国会での審議は法務大臣が国会答弁を行うというのは先ほど述べた通りです。議会では、国会議員とか政府から多数の修正案が提出されました。下院の審議だけでですね、955件の修正案が出されておりまして、非常に活発といいますか、ちょっと複雑だと思うんですけども、さばくのが大変なんですけども、こういう議論がされているというふうになります。
ただ審議時間はそんなに長いわけではありませんで、下院で62時間、上院で50時間ですね、そんなに長い期間ということではございません。ですのでこれ4月23日に国会に提出されましたけれども、7月の16日にはもう国会で両院で何回か往復して可決されてますので、実質的な審議時間、新規期間と言えば2ヶ月ぐらいで審議しているということになります。日本みたいに国家いくつまたぐとかですねそういう感覚では全然ないわけですね。
で、2008年の憲法改正では、大統領が両院合同会議での承認手続きを選択をいたしましたので、その手続きに移行するということになります。
両院合同会議は国会議員全員が、パリではなくベルサイユ宮殿の中にある両院合同会議場に向かいます。これはですね、事情はいくつかあると思うんですけども、一つは日本と違いまして、フランスの国会は上下両院が別の場所にあって、建物も違うので、パリでなかなか集まれないっていうのがあると思うんですね。もう一つはベルサイユ宮殿にみんなが一定移動するっていうことで、やっぱり普通の法律の可決手続きとは違うんだという意識を持つといいますか、そういう効果も持ってるのかなというふうに思います。ここかつては、もちろん現役で使われているわけですけれども、かつてはですね、私10年ぐらい前行ったときは、ここが博物館になってまして入ることができたんですけども、今はちょっと入れないようです。昨年行ったときも入れませんでしたので、状況は変わってるということだと思います。
これがですね7月21日に承認されたんですね。ですから国会で可決されたのは7月16日なので、そこからわずか5日ぐらいで両院合同会議で承認しているということになります。
実はこれ5分の3のですね賛成が必要なんですけども、一票差で可決されたんですね。野党議員の人が、1人造反者といいますか、その名前も特定されてまして、でも非常に批判を受けてましたけども、有力な人だったので皆さん納得したということかもしれません。とにかく一票差でも可決されれば承認ということになりますので、そういうことが行われたわけです。
日本との関係では国民投票が大事かと思うんですけども、国民投票が行われたのはただ1回。それが2000年の憲法改正ですね。このとき大統領の任期を7年から5年にするっていう大きな改正で、私が小さかったときの大統領って7年、2期14年で長いなって思ってたんですけども、2000年で5年、シラク大統領のときに変わりましたが、それが2000年の憲法改正だったわけです。
このときは、改憲案が6月29日に国会両院で可決されまして、9月24日に国民投票が行われております。ですので、国会での可決から国民投票まで3ヶ月あるか、ないかぐらいですかね、行われてるっていう時間感覚もですね、お伝えをさせていただきたいなというふうに思っております。
戻りますけども7月21日に両院合同会議で承認されまして、23日にはもう公布をされたということで、これが一番最近のですね、憲法改正ということになります。
この改正については、バラデュール委員会がその後2年後に「改憲状況のあり方を検証する報告書」というのを出しております。ここまで一応セットでなってるわけですね。
この委員会では77の提案を自ら出した、もともと出したわけですけども、その達成状況を検証してまして、2/3の条文が達成されたというふうに総括をしているわけですね。実際、これも印刷して持ってきましたけれども、達成したかどうかっていうのをですねウィとかノンと書いてありまして、一番右のところに。自己検証と言いますか、ちゃんと行っているわけですね。
で、概ねですね、バラデュール委員会、もともと提案したものが実現されてるということですけども、多少問題点も指摘をされております。
改正憲法を実施する法整備が遅れてるっていうクレームと、もう一つはですね、新しく導入された制度を、破毀院、破毀裁判所はですね、ちゃんと守ってないと。憲法で定められたことをちゃんと守ってないからしっかりやりなさいということをですね、言っておりまして。実際この破毀裁判所はですね、事後審査制ができたときに非常に抵抗しまして、つまり今まで自分が一番最高裁判所だったのにその上に憲法判断を受ける憲法裁判所が上に来ることになったわけですね。
ですので事件をですね、上に送らないっていうことをやったんですよずっと。それは望ましくないということで、バラデュール委員会この検証2年後の検証ではですね、批判されてるというですね、そういう話がございます。
以上が、非常に簡単でしたけども、2008年の憲法改正ということになります。
先生がたにですね、内容、プロセスと共に時間の感覚もお示ししましたので、ぜひ参考にしていただけましたらというふうに思います。

いいなと思ったら応援しよう!