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新しい言葉を使うとき

耳慣れない言葉を聞くことが多くなったが、人が新しい言葉を使うのは2つの場合がある。新しいモノや概念について話すときと、新しいモノや概念について話しているフリをしたい場合だ。

実際に新しいのは、例えば安全保障の場面でいう「デュアルユース」や「ハイブリッド戦」などだろう。

デュアルユースは日本語にすれば「軍民共用」で、技術などが民間用途としても軍事用途としても利用可能なことを指す。これまでは軍事用途が払い下げられて民間用途になることが多かったから、新たな概念と考えてよい。

ハイブリッド戦は、軍事的な手段だけでなくサイバー攻撃やフェイクニュースを含めた情報戦を組み合わせて戦争目的を達成することで、ロシアがクリミア半島を奪取したような戦い方を言う。また中国が台湾を狙うのも、ハイブリッド戦が予想されている。

いずれも新しい概念を表すための新しい言葉として適切だろう。

これに対して、例えば「ジェンダーフリー」などというのは、「男女平等」とどう違うのか分からない。

これまでの「男女平等」は生物学的な分類に基づくもので、ジェンダーは社会的に規定された男女間に依拠したもの・・・と言われても、では具体的な対応として何が違うのか、良く分からない。

今、改めて男女平等を言いたい人が、何か新しいことを言ってるように装いたいがために「ジェンダー」という言葉を使っているのではないかと邪推している。

「多様性」などというのも、イマドキ感を出したいがための一種の演出ではないかと思う。人種や宗教による差別を禁ずるのと、何が違うのか。

微妙なのは「クラウド」や「デジタルトランスフォーメーション」あたりだろうか。数十年前からあるRSSなども主にはサーバー側の処理であるからクラウドといえばクラウドといえるし、デジタルトランスフォーメーションもふつうには「電算化」という。

これまでよりもさらに手元のデバイスに拘らず、どこにいても同じサービスを享受できるということを強調したいための「クラウド」というのは分かるし、DXもこれまでの電算化よりももっと全面的にデジタルへ移行して、という意図があるのは分かる。

とはいえ、一応私がシステム屋なので、このあたりの言葉には多少甘いのかもしれない。世間一般には全く違いが分からなくても、当事者にとっては大きな違いに感じることはある。

いずれにしても、耳慣れない新たな言葉が聞こえてきたら、それが本当に新しいことを言っているのか、それともそういうフリをしたいだけなのか、冷静に見極めたいものだ。

得てして世間でかまびすしく言われるような、ソフトでクールでスマートな耳障りのいい言葉ほど信用できないものだから。

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