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寄居町貧乏移住体験記 #13

2024.10.05(土) その3


 「喫茶ベアー」で思い切り笑って、足取り軽く「門口寄居」へ。…あれ?誰もいない。メッセージに「買い物に出てきます」とあった。15分前。遅かった〜。
 
 しばらく店の前にたたずむ。その姿はどう見ても不審者。待つこと約15分、奥様が自転車で戻られる。立ち尽くす私の背中を見て、やはり軽く驚かれたらしい。

 「旦那が言ってた方ですか?」「はい。移住希望のくりたまです。なんだか怪しくてすみません」と変なご挨拶になってしまったが、奥様はすぐに笑顔を見せて「雨で大変だったでしょう。どうぞ入って」とオープン前の店内に招き入れてくださった。
 まさかオープン前の店内に!突然押しかけた、見ず知らずの人間を、温かく迎え入れてくださる優しさ。感激で胸が詰まる。
 「お茶どうぞ」とペットボトルをくださった。(そこまでしてくださるんですか…)と再び感激。ご夫妻は昨夜「実験スナックrutsubo」に20時頃行かれたそうだ。20時といえば、私がスナックを出た時刻。入れ違いになっちゃったんだ!でもここで会えてすごくうれしい!
 そこへご主人が戻ってこられた。
 
 ご主人がお店の説明をしてくださり、ご夫婦で「どうぞ上がってください」と奥へ招き入れてくださった。シャワールーム、更衣室まですでに出来上がっている。「ここまでは11月にオープンできそうです」と。それから、まだ改装していないエリアも案内してくださった!

 家具類はすべて取り払ってあり、古びた畳の間が1階、2階と続いている。急傾斜の木の階段は昨夜泊まった「泊まれるオーガニックレストランmujaqui(むじゃき)」でも見られたもので、古民家であることを感じさせる。「(古さが)すごいでしょう?」と笑うご夫妻。奥様が「ここも改装しようと思ってるんだよね。庭もね」とご主人に笑いかける。「そうなんだよね!夢だけはあるけど他には何もないよね!」と胸を張るご主人。会話の息がぴったりで、とっても仲のいいご夫婦。見ていて幸せな気持ちになる。
 
 ご夫妻は私の住んでいる隣の区で10年間日本酒メインの飲み屋さんを経営していて、順調だったにもかかわらず、生き方を変えたいと3年かけて寄居に居を定めたとのこと。移住して2年。思いが形になるまで5年。やはり時間がかかるものだなあと思う。
 しかし、一つひとつを自らの手仕事でお店を作り上げていくことを、ご夫妻は心から楽しんでおられる様子がひしひしと伝わった。
 
 とても大切なものを見せていただいた。お店も、古民家も、ご夫妻の温かな交流も。
 深々と頭を下げ、「門口寄居」を後にした。オープンしたらお客さんとしてまた来ます。

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