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寄居町貧乏移住体験記 #11

2024.10.05(土) その1


 「キーンコーンカーンコーン」と学校のチャイムのような音が鳴り響く。時計を見る。午前7時。1時間後にアラームをセットしていたのにぱっちりと目が覚めた。いつも東京ではすごく目覚めが悪いのに。すがすがしくて、街が静かなうちにこのまま帰りたい気持ちになった。帰るかとどまるか30分くらい迷って、行ってみたい場所に行くことにした。この決断が、今回の寄居旅の印象を180度ひっくり返すとは知らずに。
 
 9時に宿を出発。今日も霧雨。最初の目的地である「門口(かどぐち)寄居」さんには、昨日Instagramで「今日お会いできませんでしょうか」とかなり非礼なメッセージを送ってしまっていた。「返信があればありがたい」という気持ちで、10時にお店を見に行こうと思っていた。それまでの時間、荒川沿いにある「雀宮公園」と川沿いを散策することにした。

 水辺にいると、しょぼくれた気持ちがふっと上向く感じがした。スニーカーを泥で汚しながら、ところどころぬかるんだ散策道を歩く。荒川を背にして15分ほど歩くと、宗像神社という、寄居町の祭を統べる神社がある。行こうか迷った。
 「迷った時は心に聞いて、本音で動くのが一番」。大好きなエッセイスト、浅見帆帆子さんの言葉を思い出す。水辺にいたかったので、宗像神社へは行かず、写真を撮りながら荒川沿いをとぼとぼと歩き続けた。
 雀宮公園の東屋にリュックを下ろす。もうすぐ10時。そういえば、今日は街おこし協力隊員Mさんは、1日Yotteco(よってこ)の総合案内に入っていると仰っていた。寄ってみようと思い、足を向ける。
 
 Yottecoで重いリュックを下ろそうと思っていたが、あいにく満席。その一角で、缶バッジを作っている男性がいる。Mさんに昨夜の話をすると、「寄居の方ですよ」と、その缶バッジの男性を紹介してくださった。深谷出身のIさん。缶バッジは10月13日(日)開催の「ゆるゆるツーリングクラブ」のイベントで参加者に配るのだそう。「特別に」と笑顔でバッジをくださった!超フライングゲット!

 Iさんはとても優しい方で、楽しい話を一方的にたくさん話してくれた。これから「喫茶ベアー」さんに行くと話したら、「僕はすぐ近くに住んでいるのに、一度も行ったことないんですよ。オーナーさんがめちゃくちゃしゃべる人と聞いているんですけど、どんだけしゃべるんだろうと思って」と笑う。
 
「11時になったら帰る!」と缶バッジを作りながら、Iさんのマシンガントークが続く。居心地よくて、私も11時まで一緒に過ごした。Iさんは帰宅、私は「門口(かどぐち)寄居」さんに足を向けた。Mさんが、「くりたまさんは『私はこれができます!』に焦点をあてたらネガティブになってしまう人。だからそこは考えなくてもいいです。寄居をとにかく楽しんで」と送り出してくださる。
 思いがけず寄居の方に出会えたこととMさんの言葉がうれしくて、足取りが軽くなる。
 
 「門口寄居」さんは、来月オープン予定のランニングステーション&カフェ&日本酒バー。オープンに向けて、古民家をリノベーション中。その現場を見に行った。
 古民家の半分は見事にリノベーションされつつあり、カウンターキッチンが出来上がり、椅子も置かれていた。真っ白な壁が印象的。ここを拠点にトレイルランニングする妄想をしながら、霧雨の中をしばしたたずむ。そして次の目的地「喫茶ベアー」さんに足を向けた。
 
 この後、寄居旅が急展開を見せることになるとは、この時思っていなかった…。

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