土日のために平日があるとまでは言わないけれど、人間は遊ぶために生まれてきたというのには賛成。
突然の告白だが、猫ミームが大好きだ。ちょっともう時代遅れかもしれない。あんまりにも好きすぎて、一日中ひたすら見ていた時期もあったので、大概の猫ミームのモノマネは出来るようになった。しょうもない特技なことこの上ない。そろそろ流行は下火だとは思うが、それでもなお必ず新作が出るたびに視聴しているシリーズがある。とあるイラストレーターが美大時代の話を猫ミームに乗せて動画にしているのだが、これが笑いあり涙ありの傑作揃いなのだ。そんなものばかり見ていると、やはり自分も創作欲にかられ、またこんなものを書こうとしている。彼に倣っておいてなんだが、今回はあまり昔話はしない。
社会の海に揉まれ始めて、早一か月。
念願の自分だけの城を手に入れ、職場近くのジムにも通い始め、近所に行きつけ(になるだろうはず・まだ訪問は二回だけ)のコーヒー豆屋さんも見つけ出した僕だが、まず思ったことがある。
「いや休みの日、過ぎるの早くないか???」
早いのだ。マジで。仕事は楽しい。仕事仲間も先輩も上司もとっても素敵な人たちだし、仕事の日がつらくて長いと感じる・・わけでは──いやしかし休日が早く過ぎ去ると感じているということはすなわち、逆説的にそうでない「仕事がある日」が消費されるのが、相対してあまりに遅いと思っているという、いやそういう考え方はやめておきたいもので──ないのだ。
確かに初めて覚えることは多いが、シンプルに楽しいと感じる時も、今までにない達成感を得られることも、新たな場所と経験にほくそ笑むことの方が多い気はする。
けれど、これだけは言える。
「休日、過ぎるの早くないか????」
大学時代、オフの日、みたいな概念がまるでなかった。
たかが一か月前に学生の身分を取り上げられた僕だからこそ説得力があるというものだが、大学生にとって「休日」という概念の重要さは非常に、非常に薄かった、気がする。やらなければいいことと、やらなくてもいいことの曖昧さの狭間に浸かる毎日だからだ。大学生にとってやらなければならないことなんてない・多分選択肢が少なく、明瞭な高校生よりも少ない。やらなくていいことだらけだ。さすがに暴論かしら。もちろん授業に研究にバイトに恋に就活に、やらなきゃいけないことは無数にある。けれど、そのすべてを放棄したとして、いったい誰が、どう困るというのだろう。まあそんなこと言ってしまえば社会人だってそうなのかもしれないけれど。
ここまで書いておいてなんだが、これは僕だからこそ思っていることなのかもしれない。私立文系なんて単位を取るのもとってもイージーだし。まあ、偏った意見の一つとして聞いてほしい。
そんな毎日がホリデー状態の僕なので、別にいつ飲み会に行ってもいいし、デートをしてもいいし、逆に自分の部屋にこもって勉強をしてもよかった。
例えば大学四年時・平均的な僕の一日を恥ずかしながら言うと、朝九時に起床、朝ご飯という名の昨日の残り物とお茶漬けを流し込み、電車に乗って大学へ、とりあえず部室に荷物を置き、授業を受けたり受けなかったりして昼休みから学内の飲食店でアルバイト、あり得ない量のから揚げをトッピングした鶏塩レモン丼(目が飛び出るほどうまい)を賄いで頂き、ジムでインストラクターさんと力比べ、図書館でふんふんと物色した後、夜8時くらいまで部室でメールを返したりハンコを押したりだらだらと同期たちとくっちゃべったりして、二郎系ラーメンか焼き鳥屋へ行って、下宿している友達の家に少し寄ってから帰路につく、みたいな。
いやほんとなんもしてねえな!
たまに生産的な一日もあったと思う。例えば新歓時期とか、大学祭とか。そういうイベントのある日は、どんなに先の予定でも、やけにやってくるのは早く感じたし、終わってみると長かった。
くだらない、だらだらと過ぎる同じような毎日が一番楽しかったし、よく笑った。
けれど、社会人になってから「オンの日」「オフの日」はやけに色味が違っていて。
僕は連休ではなく、一日の休みが飛び飛びで存在する、みたいな勤務形態で働いているので、週の中でも休みと仕事の日を切り離して考えるようになった。正直、最初のうちはその感覚がよくつかめなくて、休日も仕事内容ばかり考えていた。PCを開いては自分の会社の情報を集めてみたり、株価を見てみたり、まあそれくらいだけれど。
ただ、先輩に「そんなに気張らなくても!はやく休みな!」なんて言われてしまったので、とりあえず一人でもできそうな遊びを考えてみることにした。
あなたにとって、最高の休日とは?
最近、ある女優が「最高の休日の過ごし方」を聞かれて「どこかの美術館に行って、近くのカフェでエスプレッソを飲んで、蔦屋書店に行く」と言っていた動画を観た。
これだ!!と感銘を受けた僕は、早速蔦屋書店が近くにあるか調べてみた。
全然なかった。仕方がないので自分好みの本屋があるかにすり替えることにした。うむ。幸福度を上げるには今あるもので満足することだと、何かで読んだ。休日を過ごすにしても、大事なことは多少の妥協だ。
今やっている展覧会をサーチ、いい感じのカフェも見つけ(前に連れてきてもらった)、準備万端である。
これも最近読んだ本に書いてあったことだが
「土日に何をするかは、水曜くらいに決めておこう 土日のために、平日がある。人間は、遊ぶために生まれてきたのだ。」
とあった。まあ僕は土日が休みとは限らないわけで全然働いている可能性もあるが、休みの計画を早めに、軽めに立てることは大事だと読み解いた。(僕は遊ぶためではなく、働くためでもあると思います!と、もしかしたらどこかでも見ているかもしれない人事の方へもアピールをしておきたい)
そうして、ついに本日はやってきた。計画をした、という意味で実に待ちに待った休みである。まあ思いついたのも三日前くらいやけど。
出勤するいつもよりは少し遅めに、アラームなしで(このアラームなしで、という部分が最も重要だ。ここだけで一本かける。もしかすると今回一番伝えたいのはここかもしれない)起床。
電車に揺られて美術館へ。最近、一人で遊ぶとなるとサウナばかりの僕だったので、とても久しぶりにその大きな建物に足を踏み入れる。コインロッカーにバッグを預けて身軽に。重いのは、それだけで罪である。喧騒溢れるグッズ売り場を横目に、チケットを切り離してもらって順路を進む。
美術館は、それが注目されていない会であればあるほど、とても静かだ。
静謐な空気が自分の中にさえも満ち満ちていく。正直、アート、芸術、よくわかったためしがないし、実を言うと絵画よりも横に書いてある解説を読んで、ああでもないこうでもないと見比べながら押し問答をしている時間の方が長い。けれど、これだから好きだ。
まあたまにめっちゃ一人でしゃべってるおばちゃん改めマダムとかいるけど。まあほんとに芸術が好きなんだろうな。その熱量、実に尊敬に値する。
そうしてコーヒーを飲んで、初めての本屋さんも訪ねてみた。あんまりにも居心地がよかったので、ほかのお客さんがいなくなるまで物色して、その後ちょっと店主さんと話していると、近くの「友達がしている」という古本屋さんも教えてもらった。結局3軒ハシゴして、もう5月に差し掛かろうとしている今日の夕方も終わるころ、足を棒にしながら、ようやく家に帰ることにした。
いい一日だったな。これがあるなら、ほんとに、社会人も、悪くない。
学生との違いは、ひとえに「休みを意識するかどうか」なだけだと思う。社会人にならないとできないことなんてほとんどない。確定拠出年金くらい?
ちなみに冒頭の女優への質問は、ほんとは「理想のデートは?」だったし彼女は「庭園美術館行って、白金のいい感じのカフェでキャラメルラテ飲んで、蔦屋書店に行く、解散」と言っていた。蔦屋書店以外ぜんぜんあってなかった。どこだよ白金。それでも綺麗な一日にはなったし。
結局昔話ちょっとしちゃった。すみません。
そんなこんなでなんとか荒波でも生きている僕だが、これではどんどん一人遊びが磨かれていってしまいそうである。
プロになってしまう前に、またラーメン食べに行きましょう。
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