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『失敗の本質』から学ぶ株式投資戦略について考えてみました
『失敗の本質』から学ぶ株式投資戦略
株式投資、とりわけ個別株投資に関しては失敗がつきものです。一般の投資家が個別株投資で連戦連勝などということはまずありえませんし、優秀な株式FM(ファンドマネージャー)でもできない相談なのです。
そこで今回のメモでは、失敗の本質と株式投資について考えてみました。失敗の本質といえば思い起こすのが野中郁次郎・一橋大学名誉教授の共著(「失敗の本質」(中公文庫))です。防衛大学教授時代に旧日本軍の戦略・組織を分析し旧日本軍の失敗の今日的課題を探った名著です。
「失敗の本質」については読んだ方が多いと思います。株式投資にも通ずる論点は、2章の戦略組織における日本軍の失敗の分析と3章の日本軍の失敗の本質と今日的課題です。印象に残った事項として、
①戦略を立案するうえで発想が硬直的であり決定プロセスで場の空気が支配していた、
②人的なネットワークに関する配慮が優先し失敗の経験から学ぼうとする姿勢が欠如していた、
③旧日本軍の教育では教官の模範解答の近さが評価基準となっており現場重視という視点が欠けていた、などの点を指摘できます。コーポレートガバナンス(CG)の良くない企業にもよく見受けられる共通の問題点ではないでしょうか。
翻って、「失敗の本質」から学べる株式投資のインプリケーションは、まず失敗した事例を学ぶことです。株式投資に関しては、指南書・雑誌等が書店の投資・運用コーナーで見ることが出来ます。ただし、こうした書籍に紹介されている戦略、アイデアに基づく成功談が再現するかどうかは投資環境に左右される確率が高いと考えられるためです。投資行動での失敗を避けることは地雷を踏まないという意味では大事な投資資金目減りの防波堤になるだけでなく、重要な長期運用を可能にする重要な役割を担うことになります。
コロナウイルス禍の米国株式市場ではGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などの一部IT関連企業の株価上昇が相場を牽引しています。今回はコロナウイルス禍による業績への影響が出にくい銘柄を選別する動きに加えFRBなどによる大幅な金融緩和も後押ししているという側面も大きいようです。今回の米国株式上昇相場が持続し続けるかどうかが最大の焦点となっています。強気な意見を目にする一方で悲観的な見方をする専門家からは、1990年頃から2000年のIT(ドットコム)バブルに似ているという指摘も出ているほどです。
今回の米国株式相場がバブル崩壊に繋がるかどうかは見方が分かれますが、少なくても更なる株価上昇にはIT関連企業株価に対して膨らんだ期待に応えられるだけの業績を残し続けることが必要になってくると考ええます。これまでの歴史を顧みると、株式市場が極端に過熱化すると
「今度だけは違う!(This Time is Different)」
というような説明がよくなされました。これに類した解説が出てきた場合は要警戒、バブル崩壊に備えければならない注意シグナルの役割を果たしているようです.
次に、個別株投資でストラテジスト、アナリストなど専門家の言うことをうのみにすることも失敗の原因になりやすいと考えます。それには、良く知っている土地勘のある銘柄から選択するという投資行動はもちろんですが、影響している材料がどこまで株価に織り込まれているのかを自身で考えてみることが重要なポイントとなります。消費財の関連企業であれば、アナリストレポートなどの投資関連資料に目を通したうえで、実際に店頭で類似商品との比較、評判、棚割りなどを確認することもできます。
今回のコロナウイルス禍では、企業業績予想の開示を控えている会社もあり、PER(株価収益率)などの投資尺度が機能しにくくなっています。それだけ、企業収益の安定した、業績予想のしやすい会社に投資資金が集中しやすい投資環境になっているといえます。であるならば、個別株投資に関しては「休むも相場」と割り切り、どうしても株式に投資したいという方は運用実績のある投資信託か株価指数連動型の投資信託を諸費用等を勘案して選択するのがいいかもしれません。
今回のネタ本は多くのビジネスマンに読まれている「失敗の本質」(中公文庫)です。投資だけではなくマネージメントにも通じる多くの問題点を反面教師的に示唆する名著です。時間がある方には一読をお奨めします。
Malon, 7. 27. 2020