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「バリュー株に投資チャンスがあるのか」について考えてみました

「バリュー株に投資チャンスがあるのか」

世界の株式市場を見ると、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アルファベット)といった巨大IT関連企業、EV専業メーカーのテスラの株価が大きく上昇したり、米ナスダック総合指数が高値を更新したりとグロース株優位が続いています。そこで、今回noteではグロース株投資の対極にあるバリュー株に投資チャンスがあるのか考えてみました。

まず、結論を先に言ってしまえば、一定の条件を加味するとバリュー株は不確実性が高い現在の投資環境下では割高感のあるIT関連株をはじめとするグロース株に比較して相対的に低リスクの投資先と判断できます。この背景として、以下の4つの要因を挙げられます。

①主要中銀の過剰流動性供給とFRBのゼロ金利政策により株式投資に配分される待機資金が潤沢な反面、コロナウイルスの影響や米国大統領選の帰結、巨大IT企業に対する規制の行方をはじめとして投資環境に不透明要因が多すぎる。

②株価の理論値がグロース銘柄と比べれば正しく推計しやすく、株価バリュエーションも割高でない投資先が少なくない。

③先進国債券の投資魅力が減退するなか、代替投資先として高配当株が注目されている。

④投資の致命的な大失敗を回避できる。

一定の条件とはバリュー株には「バリュートラップ」と呼ばれる割安の罠が存在することが知られていますが、これが解消に向かうことを前提にしています。バリュートラップとはPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)が激安でも、出来高が少なかったり、将来に対する不安(減配・減損リスクなど)から株価が全然上がらないような事象です。これを解消するのがカタリストでM&A、増配・自社株買いなどが代表例として挙げられます。

特に、アクティビスト(物言う株主)の活動が目立つ我が国ではカタリストとなりうる親子上場の解消、増配といった要請が強まった結果、割安に放置されていた企業の株価が親会社による子会社買収、MBO(経営陣による買収)などを通じて妥当水準まで上昇するケースが従来より増えています。前回のメモで紹介したNTTによるNTTドコモの完全子会社化ではTOB(株式公開買付け)価格に40%の上乗せプレミアムが付与されています。米投資銀行ラザードによると、アクティビストが日本企業への新規提案や要求件数(対象企業、時価総額5億ドル以上)は今年9月末時点で22件と昨年の19件を上回り米国(52件)に次ぐ水準に達しているそうです。それだけ、カタリストが出現し株価が上昇するケースも期待できるという訳です。

次に、グロース株投資家とバリュー株投資家の違いを確認したうえでバリュー株投資の本質・今注目できる理由を詳述していきたいと思います。オークツリー・キャピタルの共同創業者であるハワード・マークス氏はそれぞれの特徴を次のように要約しています。

グロース株投資家は、(たとえ現在の本質的価値が現在の株価との相対的な比較で見て低くても)将来的に十分な利益を生み出すほど本質的価値が急増すると確信すればその株式を買う。

バリュー株投資家は、(たとえ本質的価値が将来にほとんど増大しないにしても)現在の本質的価値が現在の株価との相対的な比較でみて割高と確信すれば、その株式を買う。

どちらのアプローチを採用するかは、割安感や成長性のどちらかではなく現在の本質的価値と将来の本質的価値のどちらを重視するかによるというのです。

グロース株投資家が現在の本質的価値を推計するには、将来のマクロ経済情勢や競争環境、技術進歩などの見通しを考慮せざるを得ないことになります。ということは、足元のような極端に不確実性が高い投資環境の中では、正確に本質的価値を推計する道筋が見出しにくいといえます。一方で、バリュー株投資家の場合にはバリュートラップさえ回避できれば比較的、候補銘柄の妥当株価水準がイメージしやすいので現在の株価対比で投資行動を起こしやすくなります。

さらに、投資プロセスが地味で将来の株価に軸足を置いていないため、行動経済学でよく取り上げられる群集心理に基づく投資行動に巻き込まれる事態は起こりにくくなります。その結果、大きな投資損失を被るリスクが比較的小さいという特徴を指摘することができます。ただし、バリュー株投資ではカタリストが認識され株価が上昇するまで時間が読みずらいという側面があります。また、バリュー株投資で成功するためには良い会社に投資するより事よりも良いトレードをすることが重要であり、そのためには株式市場の株価サイクルを認識し掘り出し物を我慢強く待つといった点に留意が必要となります。

今回のメモでお伝えしたかったことは、崖下に転落して致命傷となるような大失敗を株式投資で避けることの重要性とバリュー株投資にはそうした要素が備わっているという点に尽きます。ウォーレン・バフェット氏(以下、バフェット氏)が総合商社5社の株式に投資したりする動きは我が国株式市場にはバリュー株投資のチャンスが大きいことを示しているのではないでしょうか。ですが、バフェット氏もアマゾンといった成長株にも投資している訳ですから、決してグロース株投資を否定しする訳ではありません。

ところで、バフェツト氏は普通の人が自分のようにうまく投資できるようになることを懐疑的にみています。投資先とすると、手数料の低いインデックスファンドへの投資を薦めるているほどです。バリュー株に投資するファンドにはM&Aファンド、高(好)配当株ファンド、バリュー株指数に連動する投信などがあります。バリュー株投資に興味のある方は該当するファンドの目論見書、月報等で運用方針、運用成績とリスク・リターン、主要投資銘柄、信託報酬等の手数料などを確認することをお勧めします。

今回のnoteの参考資料は、ハワード・マークス氏の「投資で一番大切な20の教え」(日本経済新聞出版社)、投資の大原則(バートン・マキール&チャールズ・エリス、日本経済新聞出版社)、バフェット&マンガー氏の著作です。マークス氏の著書では、価格(株価)と価値の重要性、株価の習性(サイクル・振り子)、落とし穴を避けることなどバリュー株投資で重要な論点を解説しています。ぜひ参考にしてください。

Malon, 10. 22. 2020

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