コロナ禍でのシマフサラと左の意味
旧正月を祝い、旧暦1月5日に火の神さまを迎えたら、いよいよ新たな1年が始まります。
島で一番最初に行われるニガイ=願い、御願=ウガン、は、シマフサラ、(スマフサラ)です。
※地域によっては、シマフサラシ、とも言います
シュウ組と呼ばれる島の男たちが中心に行われし神事で、島に邪気や魔物、疫病が入ってこないように、禍が起こらぬように、と島に結界をはるという神事です。
いわば、悪疫払い、邪気払い、といったところでしょうか?
結界?
はい、結界です。
結界を張ります。
どのように張るか。
豚の骨をくくりつけた縄を道の上に張り巡らせます。
島によって、7か所だったり、8か所だたり、10か所だったり、
或いは東西南北であったり、
道の上に、その縄をピンと張ります。
来間島だったら、
来間大橋への坂道にも、
畑へと繋がる道にも、
港に降りる階段の入り口にも張ります。
そして、シマフサラの縄は、左縄です。
左縄、とは、ひだりない、左に綯う、ということです。
左に巻く、左にねじられている、ということです。
通常の縄は、右巻きです。
なので、左巻き、とは、普段とは逆の方向に綯うということです。
この、左巻き、というのが大事なのです。
実は、正月に飾るしめ縄は左綯いになっています。
左、とは、払う、力があると言われています。
内に向かう力ではなく、外に払う力になります。
そうやって、島に悪いものが入ってこないように、と願うのが、
来間島で行われる一番最初の神事なのです。
シマフサラ(またはシマクサラシ)は、地域によっては、旧暦2月だたり、旧暦10月にやるところもあります。
また、沖縄本島の糸満では6年に一度行われるそうです。
来間島では、この日取りを決めるのに、干支が関係してきます。
日取りや手法は、それぞれ違いますが、左縄は共通項のようです。
あと、邪気払い的な意味で考えると、2月2日の節分、これもそうですよね。
節分は、季節の分け目を意味していて、そういう時は邪気が入りやすいそうです。
旧正月から旧十六日祭までの期間も、魔物にいたずらされやすいから気を付けれ~、とオジィから教えられましたね。
義母なんかは、この間はユタのところにすら行ってはいけない、と言ってました。それくらい、慎重にしなさい、と。
だけど、ある時、どうしてもすぐにでもユタに聞きたい案件があって、義母の言うことを聞かず会いに行ったけど、どのユタにも会うことができなかった、ということがありましたね。
まあ、それは色々あって、不思議なこともたくさんあって、で、何故会えなかったかには、ちゃんと理由があって、まあ、その話はまた今度。
シマフサラと節分、邪気払い、疫病退散。
これは、やはり先人たちの知恵なんだな、と思います。
寒い時期だから風邪などひかぬよ~、と、
気を付けて過ごしなさいよ~、と、
そうやって脈々と伝えてきたことが、今も人々の心に脈々と生き続けている、ということなのだと思うのです。
そんなわけで、先日2月2日に開催した「節分に仕込む・来間島伝統製法による神酒(みき)作りワークショップ」では、シマフサラにあやかり、邪気払い、の意味を込めて、左に回して神酒を仕込みました。
シマフサラでも、節分でも、願うことは一緒です。
コロナが流行る前からも、
ずっとずっと昔から、願ってきたことはただ一つ。
島人たちの願いはただ一つです。
病が流行りませんように、
害虫が入ってきませんように、
島のみんなが健康で元気に過ごせますように、
ただそれだけです。
これほどの素朴な願いが、
暮らしをつなぎ、
祈りをつなぎ、
命をつなぎ、
そんな風に島の1年が始まるのです。