見出し画像

201809 小笠原諸島の森と海で稀少な植物や動物を観る

 4月、念願の小笠原二(ふた)航海(東京湾を昼前に出航した船は24時間後に父島に着き、3晩停泊して再び東京湾に戻る。合計6日間が一(ひと)航海。通常期、二航海だと12日間必要)の旅に出た。2年前に新造されたおがさわら丸は、速くなり、乗り心地も向上。1等個室を奮発して、快適な航海を楽しみ、翌日父島へ入港。さすがに暖かい。
 夕方、小高い丘の上のウェザーステーションへ。専門スタッフの解説付きでザトウクジラ観察会。1月から4月まで、陸と海からザトウクジラを観察できる。一通りの説明の後、双眼鏡を手に待機。と、ブロウ、の声。潮を吹いたのだ。残念ながら見つけられず。が、その後2回はしっかり目視。海上に胸びれを出す様子も観察できた。
 翌日はレンタカーを借りて、島内ドライブ。まずは海岸沿いに南下。境浦の湾内には、太平洋戦争中に空襲で座礁した濱江丸(ひんこうまる)が残骸を晒している。さらに南下すると、小港海岸。砂浜の穏やかな湾。川沿いの遊歩道、対岸の崖を野生化した黒ヤギが登っていた。
 北端の宮之浜は、すぐ目の前に兄島が見える。子連れのお母さん達がお弁当を食べていて、泳いでいる人もいた。
 夜は、居酒屋で夕食。カウンターに座ると、隣席に外人カップル。同じ船で来た人達で、昼間、行く先々で出会った。大将は彼らには英語で食材の説明をしている。刺身盛合せ、島野菜天ぷらなど、どれも美味しかったが、一番は亀の刺身。他店の前にも、新亀あります、と書かれていた。亀のシーズンらしい。生臭くはなく、ふんわりした食感で美味。亀のホルモン炒めも滋味深い味わいだった。
 翌朝、ははじま丸で母島へ。真っ白の霧に包まれた海上を2時間走ると、入港時にようやく青空が見えた。
 初日はレンタカーを借りて、南端南崎から北端へ。途中、道路脇に、小笠原唯一の猛禽類で天然記念物、オガサワラノスリが1羽。北へ向かうと道路は狭くなり、スマホが圏外になる。事故のないよう注意。母島北端は北港(きたこう)。戦前は集落があり、クサヤや鰹節を作っていた。小学校跡まである。
 母島2日目の朝は、早起きして散歩。浜の一角にウミガメの産卵のための保護区が設けてあり、数頭ぷかぷか泳いでいた。よく見るとカメ以上に多くのサメがいる。ネムリブカという、人にもカメにも害のないサメ。一緒に泳いでも平気だよ、と後日、地元の子供が教えてくれた。
 朝食後、楽しみにしていた石門(せきもん)トレッキングツアーへ出発。石門は公認ガイド同伴が必須、1日の入山者数も決まっている。10月から2月は一切立入禁止。知人に紹介された女性ガイドは、植物研究者もよく案内するという頼もしい人。靴底を洗い、酢をスプレーしてから入山。いきなり深い森に分け入る。
 ひとつ山を越し、核心部分へ下る前に弁当休憩。鳥の水場が設けてある。母島にしかいない特別天然記念物、ハハジマメグロが飛んできて、目の前で水浴びを始めた。贅沢なランチタイム。
 窪地へ下ると、シマゴショウ、セキモンノキ、セキモンウライソウ、シマホルトノキ、ムニンミドリシダなど、他では見られない珍しい植物ばかり。
 そして、小さな葉っぱが5、6株。葉の裏には胞子のう群。ヒメタニワタリだ。シダの仲間で、生育するのは国内では母島石門と北大東島だけ。半年前に北大東島へ行った際、森の中を散々探し回っても見つけられなかった。やっと観ることができて感無量。
 その後、父島に戻り、船からクジラを見たり、イルカと一緒に泳いだり、南島に上陸したり、初めてSUP(サップ=ボードの上に立ってパドルを漕ぐ)を体験したり…。小笠原の美しい森と海を存分に満喫した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?