サックスのパッドを自分で替えてみた【自己責任】
メイン楽器のCannonballのテナー、パッド(タンポ)を自分で交換してみました。プロのリペアにお任せすべきなのは当然ですが、年末で納期も長く、何週間も吹けなくなるのはツラいのと、これから先ずっとサックスをやっていく中で簡単な修理は自分でできるようにしておくべきだろうということで自己責任でチャレンジしてみました。もちろんプロのような仕事はできませんが、適切なツール(安物)があれば何とかなることはわかりました。
必要なツール
① ヒートガン
サックスのパッドはシェラックという樹脂(カイガラムシの分泌物だそうです)でキーカップに接着されているので、それを溶かすための熱源が必要になります。プロですと、バーナーやアルコールランプを使うのですが、ちらかった部屋で裸火を使うのはさすがに怖いのと、熱の調整ができずにラッカーを痛めたり、パールを溶かしたりしたら最悪なので、ヒートガンを買いました。
ヒートガンとはドライヤーの強力なやつです。Amazonで3500円くらいのやつを買いました。サックス以外にもいろいろ工作に使えるのでDIY派の人は持ってて損はないと思います。ゴミにするペットボトルをつぶすのにも便利です。買ったやつはデジタル表示で温度調節が可能なので、パールを溶かしたりという事故は少ないと思います。また、ほとんどのヒートガンは手で持って使うだけでなく、机に横に立てて使えるようになっていると思いますが、もし、上記以外のを買う場合は立てて使えるかを確認した方がよいと思います。
②パッド
パッドはちゃんとしたのを買うとワンセットで2万円くらいします。初めてで失敗すると痛いので、Amazonで約2000円の安物を買ってみました。Luxiumei Deluxeという謎のブランド(中華)です。AmazonやeBayで格安パッドを買うと大抵これになるようです。SaxOnTheWebの情報によると品質的に「悪くはない」ということです。耐久性については取り替えたばかりなので何とも言えません。
③ホットグルー
パッドをキーカップに接着するのはシェラックが本式です。シェラックはサウンドハウス等でも売ってますが、ちょっと高いので、手芸工作に使うホットグルー(グルースティック)をDAISOで買いました。20本で100円です。尚、ホットグルーを溶かすためのグルーガンもDAISOで200円で売っており、これもお買い得ですが、サックスのパッド交換においては、ホットグルーはヒートガンで溶かせますので、グルーガンはなくても大丈夫です。
④リークライト
パッドを取り替えた後の調整に必要です。
あとは、ドライバーやラジオペンチなどは当然に必要です。
今回は、目視でちょっと怪しいBbキーのパッドを交換することにしました。ちょっと前にG#のキーを交換して何とかうまく行ったのですが、動画も写真も撮らなかったので、今回はちょっとだけ記録に残すことにしました。
工程1:キー外し
まず、キーを本体から外す必要があります。Bbキーを外すには、先に右手薬指(G)のキーを外す必要があります。スプリングをフックから外す専用工具もありますが、私はDAISOで買った編み棒を使用しています。
外したネジをなくさないように慎重に管理する必要があります。緩めるだけでよく、完全に外す必要がないネジはそのまま本体に付けておいた方が良いと思います。
Bbキーのパッドは微妙に皮が裂けており密閉が悪い状態になっていました。こういう状態ってリークライトで見てもわからないのですが、低音を吹いて圧力がかかったときだけ微妙にリークするので低音のレスポンスが悪くなります。
工程2:旧パッド外し
古いパッドを熱して外します。ヒートガンを200度に設定して、机に立てて、キーカップの裏から熱します。Bbキーはパールが付いているので、これを裸火でやると、パールを痛めない熟練技が必要になると思いますが、ヒートガンだと温度が上昇しすぎないのと特定部分だけを熱することができるので楽ちんです。1分ほど炙ると、シェラックが溶けてパッドが外せるようになります。普通のドライバーでこじり取ります。シェラックが柔らかい内にキーカップから余分なシェラックをこそぎ取ります。
工程3:新パッド取り付け
パッドのセットからキーカップにジャストフィットするものを選びます。ホットグルーをヒートガンで溶かしてキーカップの内側にたっぷり塗ります。新パッドをはめ込んで固定します。
工程4:組み立て
キーを元の位置に取付けます。
工程5:調整
この工程がたぶん一番難しいです。リークライトで見ながら、キーを閉じたときにパッドが均等に閉じることを確認します。リークライトの光が均一の線になって閉じると同時に一度に消えるのが理想です。また、他のキーとの連動も見ます。Bbキーの場合は、左手薬指キー(C)との連動が必要です。まだホットグルーが軟らかければ、キーをムギュと押すことで調整可能です。パッドの水平合わせ用の専用工具もありますがなくても何とかなります。ホットグルーが堅くなってしまった場合は、キーカップを本体に付けたままでヒートガンで再度熱します。熱しすぎないよう細心の注意が必要です。ヒートガンならまだしもこれをバーナーでやるのはプロじゃないと絶対無理な気がします。
交換後は低音のレスポンスがめちゃくちゃ良くなりました。低音のレスポンスの問題って、低音のパッドに問題があるケースは少なくて、実際には高音部のパッドが微妙に痛んでいて低音を吹く時の圧力に負けてリークすることによることが多いです。
もちろんプロのリペアマンに任せた方が良いのは当然なのですが、こんな感じで自分で定期的にパッド交換できるようになるのも悪くないと思いました。自分でもやってみようという方は自己責任で。