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表現の幅を拡げるためには ~【櫻坂46】演技から学べること~

 先日行われた全国ツアーの時、「Overture」の後に、時計の音と共に短いムービーが流された。映像の中で、それぞれに黒っぽい服装を着たメンバーが1人ずつ登場する。
 スマホ、月、雲の合間から見える太陽、深い森、大都会の街並み、顕微鏡、大きな桜の木・・・。櫻坂46の楽曲に出てくるモチーフが、メンバーのシーンの間に差し込まれており、これからのステージを暗示させるものになっている。彼女たちが地下からの長い階段をあがると・・・。現実の舞台にメンバーが登場する。映像の中の森田さんがエレベーターに乗って上のボタンを押すと、扉が閉まり・・・。そのまま現実の舞台に彼女がせり上がってくる。

 短い映像であったが、観客たちを一気に櫻坂46の世界に引き込む見事な演出である。彼女たちの表情から、次の展開がどうなるのか、観客が固唾を呑んで見守る中、舞台にメンバーが登場することで、そこで展開されていることが現実なのか虚構なのか、境界線が曖昧な世界にいざなわれる。
 ライブの世界観を決定づける導入として、とても効果的なものと言えるだろう。

 その後に披露された「Dead end」から「BAN」まで、一連のパフォーマンスが終わると、再び映像の世界に・・・。スマホを手にした山﨑さんを導入として、メンバーが手にしているスマホに「ミタゾ」というメッセージが何度も繰り返し送られてくる。誰かに見張られているような気配を感じているのだが、相手の姿は見えない。やがてメンバーが地下の通路に次第に集まってくる。メンバーが見守る中、扉が開き、田村さんが現れる。こちらに向き、ゆっくりと腕を前に上げる彼女の手には銃が握られている。こちらに照準を合わせたまま・・・。画面には、「どっから飛んできた?」の文字が・・・。
 ここから、現実の舞台に場面が転換する。そこには、メンバーの姿があり、センターの田村さんが銃を構えて、一発撃ち放つ・・・。そのまま「流れ弾」のイントロが流れ、パフォーマンスが始まる。
 ライブを観た方であれば、ここまでの情景を思い浮かべることができるだろう。台詞は一言も発せられないのだが、映像だけでも十分にこのライブの世界観が伝わってくる。
 今回の映像を観ても、彼女たちの表現力が非常に上がっていることがわかる。登場するメンバーの表情や佇まいがとても美しく、非常に画になっている。
 このような映像を見せられてしまうと、どうしても彼女たちがドラマや映画に出演する姿が観たくなってしまうのは、ファンとして、当然の願いと言えるだろう。

 今回の映像もそうだが、音楽番組のパフォーマンスなどを見返してみても、回を重ねるごとに、表情が豊かになり、力強さが増していることが確認できる。
 欅坂46時代は、どうしてもクールな格好良さが前面に出ていたことから、表情の幅も余りなかったのだが、櫻坂46になってからは、楽曲の幅が拡がったことに呼応するように、メンバーの皆さんも、いろいろな表情を見せてくれるようになってきている。
 このように表現の引き出しを増やすことは、パフォーマンスの質を上げるだけでなく、ドラマや映画など演技に取り組む際も、大いに役立つことだろう。

 今までは、演技の機会がほとんど与えられてこなかった二期生にも、そろそろ舞台やドラマなどの仕事を与えてもよいのではないだろうか。
 櫻坂46のパフォーマンスは、1つの物語のような振付となっていることもあり、二期生が演技経験を積むことで、グループ全体のパフォーマンス力が大きく向上することが期待できる。
 ファンとしては、メンバー全員が参加するドラマなどであれば、非常に楽しめるのだが、年齢の幅が拡がっていることから、以前のドラマのように、全員が同級生という設定では、少し厳しいかもしれない。
 『ボーダレス』のように、有名作家によって書かれた彼女たちが演技することが前提となっている原作や脚本などがあればよいのだが、なかなか実現は難しいだろう。
 どのような話であれば、彼女たちに相応しいのか、いろいろと考えているのだが、役柄のギャップが大きいものがはまりそうな予感がしている。
 何かに困っている依頼者のために、さまざまな扮装をしたメンバーが抜群のチームワークでサポートしていくアクション活劇や、潜入捜査専門の探偵や秘密警察的な組織として難解な事件を解決していく物語など、ライブで流された映像から刺激を受けて、原作の構想をしている時間がとても楽しい。
 どちらにしても、演技の仕事をするのであれば、共演していただく俳優の方々と、がっつりと絡めるものであると、演技力の向上が望めるだろう。目の前で、圧倒的に演技力が高い方々とお芝居をしていくことで、多くのことを学ぶことができ、難しいことに挑戦することで大きく覚醒する可能性があるからだ。
 できれば二期生全員が参加できるとよいのだが、ドラマ選抜として7~8人が参加するだけでも、グループにとって、大きな刺激となることは間違いないだろう。

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