KEYAKIイズムとは ~欅坂46からの系譜③~
第3回 彼女たちのパフォーマンスは、なぜ刺さるのか
欅坂46のことを紹介する時、よく使われる言葉として「笑わない」「世間や大人に対する反抗」という歌詞や雰囲気からくるものと、パフォーマンスの様子を表現するものとして「鬼気迫るパフォーマンス」「一糸乱れぬダンス」という2つの種類がある。
彼女たちをよく知らない人々にとっては、そのようなリードによって、ある程度の先入観のもと、パフォーマンスに触れることになる。
それらを確認するように視聴し、興味が湧かなければ、そのまま消費されていくのが、ふつうの鑑賞方法となるだろう。TVなどは、特にその傾向が強く、ほとんどの情報は、ただただ垂れ流されているだけになることが多い。
そのような中で、少しでも人々の興味を惹きつけ、好きになってもらうためには、相当の段階を超える必要があることは想像に難くない。
以前も話した通り、TAKAHIRO氏に与えられた欅坂46のコンセプトにも、「一糸乱れぬ動きを見せたい」というテーマがある。
このテーマを与えられたTAKAHIRO氏は、ダンススキルと共に、パフォーマンスの真髄とも言うべきものを伝授している。
TAKAHIRO氏は、振付をする時、以下の流儀を欠かさないそうである。
ダンススキルの向上はもちろん重要であるが、それよりも大切なこととして、「歌詞を理解して、気持ちを作ること」をあげているのである。
彼は『SONGS』の中で、以下のように話している。
彼のこの発言を聞いた時、欅坂46のパフォーマンスが、観客の心に突き刺さってくる理由がわかったような気がした。
TAKAHIRO氏がそう話す様子を見ながら、平手さんが噛みしめるように頷いている。
欅坂46から始まる「この伝統」(=KEYAKIイズム)は、櫻坂46や日向坂46となった今に至るまで、しっかりと受け継がれている。
欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」のMVを観ると、彼女たちのダンスは、決して「一糸乱れぬもの」では無いことが確認できる。
ダンススキルが余りないメンバーでも、しっかりと揃って見えるように、ポイントごとにTAKAHIRO氏が振付をしているのだが、細かく観ていくとバラバラであることがわかる。
それにも関わらず、なぜ揃っているように見えるのか。
このことは、平手さんも、『こち星』(欅坂46の冠ラジオ番組)の中で話題に上げており、実際にTAKAHIRO氏に質問したらしい。結局、番組内で明確な回答は得られなかったが、共演していた齋藤冬優花さんとの間で、「気持ちが揃っているから」ではないかという結論になっていた。
確証はないが、自分もやはり、そうではないかと考えている。
しっかりと気持ちを作り、それをメンバー間で共有した状態でパフォーマンスをする。
振りを揃えようとするのではなく、気持ちが揃っているから、振りが揃う。
これこそが、彼女たちのパフォーマンスが、聴衆の魂を揺さぶる理由ではないだろうか。