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君の物語 15 引っ掻き傷

ルゥと戯れているムギを見て、気づくことがある。
私「あ、血が出てるよ。」
ムギ「うん。」
 「ひっかかれたの?」
 「うん。」
ルゥから目を離さず、笑顔で返事する。

 「痛くないの?」
 「痛いよ。」
言葉とは裏腹に、笑顔を崩さない。

私ならひっかかれた瞬間はどうしても「うっ」とか声を出してしまうし、ビクッとなる。
けどムギはそれが全くない。

ルゥとよく戯れている(おもちゃを使うのではなく、文字通り戯れている)ムギは、ちょくちょくひっかき傷ができている。
しかしその痛みに顔を歪めることは、一瞬たりとも無いのだ。

寝ているムギの上を飛び越えようとして額に爪が引っかかり、思い切り流血したこともある。
しかし全く慌てない。垂れてくる血をティッシュで抑えながら笑顔のまま起きてくる。
「痛いことは痛いけど、大丈夫。ルゥはわざとじゃないから。」
わざとじゃないのはわかるし、もちろんルゥを責めたりしないよ。

私が気になるのはそこじゃなく、痛いはずなのに全く動じない君ですよ。
普段はかすり傷でも大騒ぎなのに。



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