君の物語 16 テルミンの反撃
棚やテーブル、机の上にあるものを片っ端から下に落とすのも、きっと猫にはよくある行動なんだろう。
小さな手でちょいちょいと寄せていく様は可愛い。
小さい文房具なんかは簡単に落とせるけど、時々苦労していることもある。文庫本とか濡れた布巾とか。
どっしりした電卓を落としたときは、鼻息荒く勝ち誇って悠々と去っていった。
〈勝ったんだね〉と見送る。
今回は長いことガリガリ頑張っていた。何を苦戦しているんだろう?と思ったら、狙った獲物がちょっと遠かった。『大人の科学』マガジンのテルミン(夫のお気に入り)。
これなら届かないだろうという高い棚に置いてあったのに、それでも標的になったようで。一生懸命に腕を体ごと伸ばして、少しずつカシカシと寄せていく。
猫は長〜く伸びるということを、うっかり失念していた。
ガコーンと大きな音がして、ようやく落とした。
ーー自分の水飲み場へ。
衝撃と飛び散る水しぶきに驚いたルゥは、ピューンと退散。
ものすごい慌てようで、爪が床を滑っている。
テルミンは無傷(不思議なことに)だったけど、ルゥの飲み水が入ってる器は無惨に割れてしまい、辺りは水浸し。
テルミンのみごとな反撃。
すぐに同じものを買い求めましたとも。
だから気にしないで。
そんなこともあるさ。
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