君の物語 38 あなたの物語
あれからどのくらいの時間が流れたんだろう。
通りがかりに猫を見つけた。
立ち止まって見つめていたら目が合った。
猫と目が合うのはルゥ以来だ。
泣けてきた。
猫はすぐに立ち去ってしまった。
あの猫にも物語があるのだ。
親との、兄弟たちとの。縄張り争いした相手や仲良しもいるかもしれない。
夏の猛暑や冬の寒さを耐えた、自分自身の物語。関わり合った人間もいるかもしれない。
ルゥにはどれだけの物語があるんだろう。私は君をどれだけ知っているんだろう。
全てを知りたいなんて我儘で傲慢だ。
君自身の物語は君だけのものだ。