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楽しいホットケーキの焼き方

幼稚園から小学校低学年くらいまで、休日は母方の祖父母の家によく入り浸っていた。(預けられていた)


「今日のおやつはおばあちゃん特製のホットケーキを焼こうかな。」
うわぁーい!

大きなボウルに卵と牛乳、ホットケーキミックスを〈1箱〉
ガシガシと混ぜていく。
私たちは興味津々で見学している。
う〜ん、甘い香り。
もう焼かなくても美味しそう。

おばあちゃんは大きなフライパンをよっこらせと持ってくると、コンロではなくストーブの上に乗せる。

ストーブは何かと便利。
お湯を沸かせるのはもちろんのこと、お父さんはよくお酒を熱燗にして、その横でイカや干し餅を焼いている。
でもそれだけじゃない。
子どものおやつだって作れるんだ!

大きなフライパンにタネを〈全部一気に〉流しこんだら焼けるのを待つ。
「プツプツ穴が空いてくるんだって。」
おばあちゃんが言う。
「だから、それまでひっくり返しちゃだめだよ。」
へえ、そうなんだ。
ストーブを挟んでおばあちゃんと向かい合わせに座り、ワクワクしながら待つ。


プツプツはしてないけど、香ばしい匂いがしてきた。
もうすぐかな?
ーまだだね。



だいぶ香ばしいよ?
まだかな?
「まだプツプツいってないよ。」
そうだね。

待ってる間、おばあちゃんと楽しいおしゃべり。


ますます香ばしいよ?
まだかな?
まだかな?
「焦らない、焦らない。」



あ、プツプツしてきた!
「慌てないで。今ひっくり返すから。」
大きなフライパンいっぱいに分厚く広がっているから、簡単にはひっくり返せない。(1箱分だもの)
フライ返しを使って慎重に、且つ、大胆に!
おばあちゃんは華麗にホットケーキをひっくり返した。
さすが!!

……あれ?

真っ黒だね。

カチカチだね。

「大丈夫、大丈夫」
おばあちゃんは慌てない。
「でも、ま、これくらいでいいかな?」
おもむろにフライパンをストーブから下ろした。
おばあちゃんは落ち着いている。

フライパンの上で直接切り分けると、ザクザクと硬い音がした。
表半面は分厚く真っ黒。
裏半面は生焼け。

「焦げてるところは取って食べてね。」
う〜ん…はい。



おばあちゃんは〈失敗した〉とは言わない。もしかしたら失敗したとは思ってないのかもしれない。

でも、いいの。
こんな楽しいホットケーキは他にはなかった。


ホットケーキを焼くたびに思い出す。


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