カブで鉱業都市巡り 大分佐賀関・津久見
大分市佐賀関
佐賀関は大分市の東部で、2006年に大分市に吸収合併された町。佐賀関半島があり、対岸の愛媛県佐田岬半島の間に豊予海峡を形成している。鉄道路線では行けず、大分駅からバスで80分くらい1日20便ほどある。
佐賀関は日立や日産の源流になる久原財閥により銅精錬所が建設され、のちに日鉱金属(現JX金属グループ)として、現在も日本最大規模の銅精錬所として稼働している。2023年現在日本で産出した鉱石から銅を作ることはなく、輸入とリサイクルでまかなっている。
佐賀関の場合、南米チリの鉱山から運ばれてきた銅精鉱(銅純度30%程度の原料)を複数回の精錬をすることで純度99.99%の銅地金(電気銅)として様々な工業製品向けに出荷される。佐賀関の銅地金の生産量は愛媛県現新居浜市の別子にある住友金属鉱山の精錬所と並び2トップで、2社で日本シェアの50%を占める。
銅は電気伝導率が高く加工しやすく価格のバランスがいいので、電線や自動車のハーネス、電気製品の回路などに使用される重要な非鉄金属材料。また銅の精錬の過程で取り除かれる不純物からは金・銀・ニッケル・セレンなども生産されるほか、特に気体(二酸化硫黄=亜硫酸ガス)からは副産物として硫酸が生産されていて、硫酸は化学工業や鉱業に必須の基礎的化成品として日本や世界中へ輸出されている。
歴史的には銅精錬(銅以外の金属も同じ)によって排出される不純物の金属や、亜硫酸ガスなどが対策をせずに垂れ流されたことによる鉱毒公害が問題にもなっており、土壌や河川の汚染、亜硫酸ガスにより森が枯れる、直接的健康被害などの公害が発生している。特に栃木県の足尾銅山は有名で、日本史上における工業、環境、市民運動などの分野の重要事件として記録されている。
津久見市
津久見市は大分県の南東部にあり大分県の市としては一番小さいながら、日豊本線の特急ソニックとにちりんの全列車がとまる。大分駅までは50分ほど。津久見は日本最大の石灰石鉱山があり、その石灰石を使ってセメントを生産する太平洋セメントの工場を擁するセメントシティ。
石灰石は日本で唯一100%自給できる鉱物資源で、津久見を代表する大分県は生産量日本一を誇りシェア19%。上位4県の大分、山口、高知、福岡の4県で日本の50%を占める。そのうち津久見では年間約2500万t、日本全体の生産量は年間約1億7万t%とのことで14%超を占める。
石灰石の主成分は炭酸カルシウムで主用途はセメントの材料として建築・インフラに活用されるほか、生石灰(酸化カルシウム)は製鉄では鉄以外の不純物を取り除くのにも不可欠、ガラス、農業肥料・農薬、基本的なアルカリ材料として様々な産業に活用される。
ちなみに福岡県の苅田町は日本最大のセメント生産地で、UBE三菱セメントの旧三菱とUBEの2工場と麻生セメント苅田工場(政治家の麻生太郎の実家グループ企業)の3工場合わせて、太平洋セメント津久見工場の2倍の生産量。苅田も石灰石の産地であり、筑豊地域の石灰石鉱山へも地の利がある。
おまけと宣伝
同じように鉱山と精錬で栄えていた町の話。
セメントに関連して、秩父鉄道はセメント会社の鉄道。山陽小野田に行った時の話も。