マイルCS 3ステップ考察(予想から回顧まで)
この投稿はGⅠ マイルCSを考察した記事です。来週明けまでのあいだ、有力馬考察・馬券予想・レース回顧の3ステップにわけて更新していきます。
1:有力馬考察
★グランアレグリア(1番人気想定)
卓越した脚の速さは、母がもつ『インリアリティ』と『ダマスカス』にあります。どちらもパワーに優れた血。それを強靭な推進力としてスピードへと昇華させているのが特徴です。このパワーを500キロを超える雄大な馬格によって手の内に入れており、成長とともにどんどん凄みを増してきました。引き締まった上質な筋肉をまとい、弾むような走りをしています。
前走の天皇賞・秋はスピード値の高さを殺さないよう、あえて我慢させずに2番手で先行。最後で甘くなり3着に敗れたものの、エフフォーリア、コントレイルと接戦を演じたことは素直に評価したいです。敗因はシンプルに距離ではないでしょうか。懸念されていた喉の状態も問題ありませんでした。
マイル戦は2走前の安田記念で2着に敗れています。このときはいつもの行きっぷりがなく、ルメール騎手に促されながらなんとか追走する状態。それでも少しづつポジションを下げていくような感じで、走りに覇気が感じられませんでした。重馬場の大阪杯を走ったあと、ヴィクトリアマイルを勝って中2週というローテーションが堪えたのでしょう。この敗因を踏まえるのであれば、天皇賞・秋で大接戦を演じたあと、中3週のローテで挑む今回はどうなのか。まともなら圧勝してもおかしくはないだけに、焦点はそこだけですね。
★シュネルマイスター(2番人気想定)
父は現役時代にマイラーとして活躍したキングマン。一方母のセリエンホルデは独オークス勝ちの重厚型。スピード×スタミナという構成で綺麗なバランスになっています。それでいて面白いのは、父と母の適性が違っていながら、構成は相似配合になっているところ。「フォーリンクーリエ≒ハイリヴァー」4×4、クリス4×5、ミルリーフ5×6、リファール5×6など多くのクロスを作っています。クロスする血の質は、日本向きでクセのないものばかり。実績のある両親の資質を刺激して、しっかりと継承させる仕組みは好感が持てます。
前走の毎日王冠は、先行馬有利の流れを後方ふた桁番手から差し切り勝ち。しかも直線で外に出すのに手間取り、決してスムーズに加速できたわけではありません。GⅠ勝ち馬ゆえに、3歳ながら他馬と同斤量の56キロを背負っての勝利。かなり強い競馬をしています。いずれは総合力の高いマイラーに完成するとみていますが、肉体的に完成しておらず、緩さを残す現状。1800m質の緩いマイル、もしくはマイル質の淀みない1800m、このくらいの流れが向いていそうです。
★インディチャンプ(3番人気想定)
ステイゴールド×母の父のキングカメハメハという中距離然とした構成。しかし祖母・トキオリアリティーの資質が色濃く表面化しており、屈強なパワーと前向きな気性で突進するスピード型に出ています。最大の武器はハイケイデンスなピッチ走法による加速力。道中で溜めた脚を、直線で弾丸のように一瞬で爆発させることができます。ただし経年とともにフットワークから「抜け感」が薄れ、リラックスして走りづらい気質になっています。短距離路線への挑戦もその影響を受けてのものでしょう。マイルでの安定感は以前と比べて薄れつつあるように感じます。
久しぶりのマイル戦となった前走の安田記念。スプリント路線を戦ってきた馬にとっては遅いペースでした。そのなかで、馬群に入れてしっかりと脚を溜めようとする福永騎手の意図は感じられました。直線もこの馬だけ明らかに仕掛けを遅らせており、耐えて耐えて一瞬の爆発力で決めようとしています。ただ直線入ってすぐに前が開けたため、馬自身に我慢が利かなくなってしまったところはあったかもしれません。前を壁にしてギリギリまで我慢させるのが理想でしたが、ラウダシオンが早々に手応えを失ってしまったのが痛かったです。
★サリオス(4番人気想定)
近年は母方に『デインヒル』の血をもつ牡駒が2~3歳春に活躍するケースが増えています。その筆頭格が本馬。2歳時にGⅢサウジアラビアRC、GⅠ朝日杯FSを勝って3戦無敗。母のサロミナが「ニニスキ≒デインヒル」2×3で増幅しているため、上記の特徴が顕著に出たようです。
この配合はデインヒルの強靭な筋肉でハーツクライの緩さ引き締め、体幹の強さを得る仕組みになっています。ただこれは競走馬としてのバランスを高めて成長曲線の上がり幅を前倒しにしているだけで、根本的な素質の底上げにはなっていません。そのため3歳春を過ぎて古馬との戦いになったとき、“完成度”という最大の武器が通用しなくなることでスランプに陥ります。それがハーツ×デインヒル最大の弱点です。サリオスの場合は、古馬との初対戦となった毎日王冠が3馬身差の圧勝。配合の枠に収まらない稀有な存在かと思わせましたが、その後の走りは常識的な範疇に収っているのが少し残念です。もともとはハイペースでも突進するように先行していた馬ですが、前走の安田記念では前進気勢が見られませんでした。大阪杯を使った反動が取り切れてなかったのもありそうですが、原因はそれだけではないでしょう。皐月賞、ダービー、毎日杯と中距離を使い、(20年の)マイルCSは後方から。再び中距離に戻して大阪杯という使い方をしたことで、マイラーとしての才覚が衰え、悪い意味で丸くなってしまったように感じます。
ただおなじハーツ×デインヒル仲間のカテドラルが5歳になって復活したように、早熟であっても、決して早枯れではありません。辛抱の時期を乗り越えれば、“第2のピーク”が訪れるはずです。
★グレナディアガーズ(5番人気想定)
5代血統内で発生しているクロスはミスタープロスペクター4×5・5、ブラッシンググルーム5×5の2種類のみ。それほどアクの強い配合ではありません。ただ奥のほうではノーザンダンサー4・5×6・6、バックパサー6・6×7、ソング6×6、ヘイルトゥリーズン6×7、エルバジェ6×7、ワイルドリスク7×6・7など、いろいろなクロスが詰まっています。全体的にみれば主要な血のほとんどを押さえた緩い相似配合馬。父・フランケルの功績は言うまでもありませんが、母・ウェイヴェルアベニューも北米GⅠのBCフィリー&メアスプリント(ダ7F)の勝ち馬。優れた父と母の資質を増幅して継承させることは、シンプルながら大きな効果があります。どちらかと言えば母方の特徴が濃く出ているようで、速い流れを積極的に乗っていける追走力が持ち味。突進して押し切るスタイルゆえに、スピードの持続性はやや劣ります。
前走の京成杯AHは休み明けの影響か、いつもの行きっぷりがありませんでした。流れ自体はこの馬が好む質だったはずですが、仕掛けどころで外を回すかたちになったため、決め手が甘くなったようにも感じます。3歳で56キロを背負い、この競馬で3着なら力は見せたのではないでしょうか。今回はスプリント戦で逃げる競馬をしているサウンドカナロアが出走。淀みないペースを好む本馬にとっては、ありがたい存在になりそうです。
2:馬券予想
陣営のコメントをチェックしたら、サウンドカナロアは控える発言をしているんですね。これまでの戦歴を見ると、条件戦とはいえ5戦連続で1200mで逃げている馬。にわかには信じがたいのですが・・・😟
というわけで、普通に逃げると思って予想しようと思います。この馬と最内枠に入ったホウオウアマゾンが積極的に引っ張れば、そこそこ流れるのではないでしょうか。先行力のあるグレナディアガーズが付いていけば、後続もノンビリしているわけにもいかなそうですね。純度の高いマイル戦が見られるのではないかと期待しています。
◎グランアレグリア
安田記念は体調が整わないなか、タイム差なしの2着でした。勝ち馬のダノンキングリーは今回不在。ペースが遅く千八寄りの切れ味勝負だったあのときと比べ、レースの質も違ってくるはずです。前走の天皇賞・秋も、中距離だからと下手に控えることはしませんでした。前進気勢を損なわせない競馬をしたおかげで、マイルに戻っても立ち遅れる心配はないでしょう。正直、状態は万全じゃないと思っています。ただこの馬の能力なら、それでも戦えると信じて本命で。
○インディチャンプ
▲シュネルマイスター
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※公開はレース終了までとなります
3:レース回顧
サウンドカナロア陣営の控える発言。どうせブラフだろうと思ってました。もしブラフじゃなかったとしても、結果的に逃げるかたちになると思ってました。まさか後方2番手とは・・・😣
代わりに逃げたのはホウオウアマゾン。2番手以降の馬は追いかける素振りを見せません。昨年の前半・半マイルのタイムが46秒9だったのに対し、今年は47秒6。道中緩める余裕もあり、かなりのスローペースでした。中距離寄りの切れ味が通用する流れだったともいえますね。
グランアレグリアの上がり3ハロンは32秒7。シュネルマイスターは32秒9。ダノンザキッドは33秒0。GⅠ馬が性能の違いを見せつけるかたちで上位を独占しました。
グランアレグリア(1着)
中団からじっくりと追走。凄い豪脚で撫で斬りました。昨年のようなピンチもなく、どうやっても敵わないと思わせる絶対的な強さ。ラストランで再び見ることができてよかったです。
シュネルマイスター(2着)
競走馬としてはまだ完成しておらず、緩さも残す現状。マイルらしい激しい展開になったときにどうなるだろうとは思っていました。ただ今回はペースが遅く、毎日王冠で見せた高いパフォーマンスをそのまま活かせる流れ。そこの部分は問われずに済みました。内枠で捌くのに苦労した部分も考慮すると、かなり強い競馬だったのではないでしょうか。来年が楽しみですね。
インディチャンプ(4着)
サリオスの後ろで上手く脚を溜める競馬をしました。ただ持続力にやや弱点を抱えるタイプだけに、1800m寄りの決め手を問われる競馬だと、どうしても最後で甘さが出てしまいます。資質にそぐわない展開でもここまで戦えるのですから、あらためて良い馬だなと思いました。
オマケ:血統ワンポイント解説
ディープインパクト×ダマスカスの血のニックスは、本来なら牡馬向きのパターンです。しかしグランアレグリアは牝馬でありながら、500キロを超える雄大な馬格に恵まれています。そのおかげでニックス効果を牡馬と同レベルで享受することができたのでしょう。
あの超人的な豪脚は、ある種、配合論の枠を越えたところで生み出されたものかもしれません。本当に強い馬でした。
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