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安田記念 3ステップ考察(予想から回顧まで)
この投稿はGⅠ安田記念を考察した記事です。本日から来週明けまで一週間、3ステップに分けて更新していきます。
くりがしら「5月は全然ダメだったから、6月は10倍のパワーで本気だす!」
界王様「いま使っておるのが、その10倍界王拳なのだ・・・・・・」
記事の内容と更新スケジュールの詳細は以下のとおりです。
1:有力馬考察
netkeibaの予想オッズ1~5番人気の馬を考察します。
(※公開中)
2:馬券予想
個人的な予想の印と馬券の買い目を投稿します。あまり多くの金額はかけず、だいたい1000~2000円くらいの気楽な豆券予想です。
(※土曜日の夜に更新予定)
3:レース回顧
レースの回顧を投稿します。
(※翌週の月曜日に更新予定)
1:有力馬考察
★グランアレグリア(1番人気想定)
本馬の卓越した脚の速さは、母が2本もつ『インリアリティ』と『ダマスカス』にあります。どちらもパワーに優れた血ですが、それを強靭な推進力としてスピードの爆発へと昇華させているのが特徴です。このパワーを500キロを超える雄大な馬格によって手の内に入れており、成長とともにどんどん凄みを増してきました。引き締まった上質な筋肉をまとっており、弾むような走りをしています。
スプリンターズSを勝つなど1200m戦でも活躍しているものの、その内容は後方からゆったりと追走して、マイラーとしての切れ味で全馬を斬り捨てるもの。規格外の能力で勝っているだけで、短距離の競馬をしていません。一方マイル戦では中団の良い位置からスピードを爆発させる王者の走りで、付け入る隙がまったくありません。
得意のマイル戦に戻った前走のヴィクトリアマイルでは、次元の違う走りで4馬身差の圧勝。超高速馬場ではなかったと思うのですが、それで上がり3ハロン32秒6は破格です。今回は牡馬が相手になるので簡単にはいかないでしょうが、普通に走れば結果は付いてくるでしょう。あとは中2週でのGⅠ連戦で疲労がどうか、そこだけですね。
★インディチャンプ(2番人気想定)
ステイゴールド×母の父のキングカメハメハという中距離然とした構成ですが、祖母・トキオリアリティーの資質が色濃く表面化しており、屈強なパワーと前向きな気性で突進するスピード型に出ています。最大の武器はハイケイデンスなピッチ走法による加速力。道中でためた脚を、直線で弾丸のように一瞬で爆発させることができます。
短距離へ挑戦した近走は速い流れに乗ることに苦労して、脚をためることができず、いつもの良さが出せませんでした。しかしレースを重ねるにつれ慣れてきており、前走の高松宮記念ではいつもの爆発力が戻りつつあります。
ようやくスプリントの競馬に慣れたタイミングで、再びマイル戦に戻ることがどう影響するかですね。経年とともに走りから「抜け感」が薄れ、リラックスして走りづらい気質になりつつあるように感じます。短距離への路線変更もその影響を受けてのものと思われるので、昨年よりは難しい立場になるかもしれません。ゆったりめのペースでジッと脚をためるのがベストなので、福永騎手にはシャフリヤールのような競馬をしてもらいたいです。
★サリオス(3番人気想定)
母方に『デインヒル』の血をもつハーツクライ牡駒が2~3歳春に活躍するケースが増えており、本馬はその代表格。母のサロミナが「ニニスキ≒デインヒル」2×3のため、重厚な突進力がより強く発現しています。朝日杯FSでは前半1000mが57秒2というハイペースだったにもかかわらず、3番手で付いていき、0秒4付き離して完勝。ピュアマイラーとしての高いポテンシャルを感じさせる存在です。
ハーツ×デインヒルの配合馬というは、強靭な筋肉で緩さ引き締め、若駒らしからぬ体幹の強さを得る仕組みになっています。これは競走馬としてのバランスを高めて成長曲線の上がり幅を前倒しにしているかたちでもあり、根本的な素質の底上げにはなっていません。そのため3歳春を過ぎて古馬との戦いになったとき、“完成度”という最大の武器が通用しなくなることでスランプに陥ります。問題は、それがサリオスにも当てはまっているのかどうかという点です。大阪杯の敗戦は2000mという距離の壁なのか、デインヒルの成長の壁なのか・・・。マイルCSでは5着に敗れたものの、内伸び馬場のなか大外から上がり最速で追い込んできており、負けて強しの内容でした。少なくともその時点まではスランプという雰囲気はなく、配合の枠に収まらない稀有な存在かもしれないと感じていたくらいなので、前者であると思いたいですね。
★シュネルマイスター(4番人気想定)
父は現役時代にマイラーとして活躍したキングマン。一方母のセリエンホルデは独オークス勝ちの重厚型。スピード×スタミナという構成で綺麗なバランスになっています。それでいて面白いのは、父と母の適性が違っていながら、構成は相似配合になっているところ。「フォーリンクーリエ≒ハイリヴァー」4×4、クリス4×5、ミルリーフ5×6、リファール5×6など多くのクロスを作っています。 両親ともに実績のある馬だけに、その血を満遍なく刺激して受け継がせたことが大きな恩恵をもたらしたようです。クロスの内容も日本向きのクセのない血ばかりで良いですね。
前走のNHKマイルCは前半1000mのタイムが56秒9。過去5年の同区間が57秒7~58秒0で収まっていたことを考えると、非常に速いペースといっていいでしょう。弥生賞で2000mのスローペースを走っていたこともあり、道中の追走に苦労している雰囲気すらあったものの、それであの勝ち方ができるのですから、持って生まれた素質の高さは間違いなさそうです。斤量が3キロ減ることを考えると、現時点でも普通に通用しそうな手応えはあります。ただ現状は走りに非力さが残っており、競走馬として完成するのはまだ先かなという感じもしています。
★ケイデンスコール(5番人気想定)
ロードカナロアらしいスピード馬ですが、母の父のハーツクライから柔らかみを受け継ぎ、持続力に秀でたマイラーに出ています。2代母の父にアレミロードのパワーが入って土台を固めており、全体的な柔と剛のバランスも良好。カナロア×母父ハーツは本馬以外にもトロワゼトワル、ヴァルディゼールを出しており、配合の根拠もしっかりとしています。
NHKマイルC2着以降パッとしないレースが続いていましたが、昨年の秋に1400mを2回使ったことがターニングポイントになったように思います。
そのときは結果こそ凡走でしたが、あれで馬がピリッとして、スイッチが入ったのではないでしょうか。京都金杯の勝利は前残りで展開に恵まれたこともあり、まだ懐疑的に見ていましたが、中山記念では速いペースに対応して接戦の2着。そして前走のマイラーズCでは中段でしっかりと脚をためて、直線外から差し切る貫禄勝ちですから、まさに充実一途の内容です。成長力が持ち味のダイナサッシュ牝系の出身で、母の父・ハーツクライも5歳でピークを迎える血。 いまが最盛期と言っていいでしょう。
2:馬券予想
まともなら1~3番人気で固いでしょうが、もし荒れるとするなら、ペースが遅くなったときではないかと思います。サリオスはマイル適正の高いタイプなので、ゆったりと我慢して走るのは好まないでしょう。インディチャンプもスプリント仕様に体を作ってきたあとだと、スローで折り合わせるのは大変かもしれません。今回逃げ馬がトーラスジェミニしかおらず、鞍上が戸崎騎手では極端なペースにはならなそう。馬券的には一波乱を期待したくなりますね。
◎ダノンプレミアム
◯グランアレグリア
▲シュネルマイスター
△ダノンキングリー
◎ダノンプレミアム
ここのところ東京のGⅠはロベルトもちが好走しているので、この馬の一発に期待してみたくなります。昨日の英オークスで衝撃的な勝ち方をしたスノーフォールは、インティカブの血をもつディープインパクト産駒。血統は時折目に見えない不思議な力が働くことがありますから、血の勢いが海を渡って、日本で激走を引き起こすかもしれませんよ。
◯グランアレグリア
言うまでもなく、どんな展開になっても能力は絶対でしょう。ただ気になるのは体調面。重馬場の大阪杯を走ったあと、ヴィクトリアマイルを勝って中2週となると、疲労が残ってないとはかぎりません。実際、この中間は脚元に軽微な違和感があったようですし、万全と言えるのかどうか。シュネルマイスターの鞍上が水曜日まで決まらなかったのも、もしかしたらグランが流動的で、ルメール騎手をスライドさせる可能性があったからかもしれません(僕の勝手な邪推です)。馬優先の藤沢和雄厩舎ですから、出した以上問題ないとみるべきでしょうが、ちょっと穿った見方をしてみたくなりました。
▲シュネルマイスター
サリオスやインディチャンプが凡走する=スローで折り合いに苦労することを前提に考えたとき、有利になりそうなのがこの馬。前走のNHKマイルCは速いペースに戸惑った感じがしたくらいなので、負荷が低いレースになれば斤量を活かして頑張ってくれるのではないかと。
△ダノンキングリー
これもペースが遅くなることを前提とした予想です。本質的には1800~2000くらいが良さそうなので、緩い流れからの決め手勝負が良さそうです。
3:レース回顧
好スタートをきった内枠のダイワキャグニーが先手をとり、それを外からトーラスジェミニが付いていくかたちになりました。ペースはさほど上がらず、前半1000mは57秒8。これは過去5年でもっとも遅いタイムです。中盤が緩く流れたことで、生粋のマイラーにとってはストレスがかかり、1800mあたりを得意とする馬がちょうど気分良く走れた感じでしょう。展開に関しては、ほぼ読みどおりでした。
印4頭だけつけて、△◯▲で決まって、◎だけバシルーラするとか、まじでGⅠどうやって当てるの?🦅
— くりがしら🐴/佐藤かずあき🖌 (@kurigasila_kaz) June 6, 2021
おめでとうございます!のコメントを結構いただいたんですけど、僕は◎ダノンプレミアムの1頭軸で買っていたのでね・・・😟💧
ダノンキングリー(1着・8番人気)
昨年の大阪杯で逃げたことが影響したのか、近走は我慢が利かず力んで走っている印象がありました。長期休養でそのイメージがリセットできたのでしょうか。とはいえ、今回めちゃくちゃリラックスして走っているように見えたかと言われると、あとから見返しても劇的に変わったとまでは感じません。川田騎手もレース後に「返し馬の雰囲気が正直あまりいい感じではなかった」と話していますし、萩原師も「馬自体は昨年より少し大きくなったかなとは思いますが、大きな変化は感じません。距離については対応できると思いますが、まだ本来の適性はつかめていません」と言っているくらいですから、競馬は本当にわからないものですね。適性が1800m寄りの本馬にとって、ペースが緩んだことで気分良く運べたのが勝因でしょうが、前走最下位だった馬が、まさかグランアレグリアとの追い比べを制して勝ってしまうとは・・・。
グランアレグリア(2着・1番人気)
中団に付けるもいつもの行きっぷりがなく、ルメール騎手に促されながらなんとか追走。それでも少しづつポジションを下げていくような感じで、走りからは覇気が感じられませんでした。やはり間隔を狭めたローテーションが堪えたのでしょうか。僕の師匠の望田潤さんや、みんなのKEIBAに出演していた細江純子さんが、馬群に入ることを好まないのではとお話ししており、その影響もあったかもしれません。それでもあと一歩まで差を詰めてきたのは突出した才能のなせるところです。
シュネルマイスター(3着・4番人気)
まだ若駒ゆえの緩さが残る現状、このくらいゆったりとしたペースのほうが力を出しやすい状態なのだと思います。3歳のこの時期にグランアレグリアに肉薄するところまで持ってくるのですから、将来が楽しみですね。体がしっかりしてくれば、先行力も追走力も質が上がるはずです。
インディチャンプ(4着・2番人気)
スプリント路線を戦ってきた馬にとって、このペースは遅いです。そのなかでも、馬群に入れてしっかりと脚をためようとする福永騎手の意図は感じられました。直線もこの馬だけ明らかに仕掛けを遅らせており、耐えて耐えて一瞬の爆発力で決めようとしています。ただ直線入ってすぐに前が開けたため、馬自身に我慢が利かなくなってしまったところはあったかもしれません。理想は前を壁にしてギリギリまでためたかったところですが、ラウダシオンが早々に手応えを失ってしまったのが痛かったです。
ダノンプレミアム(7着・6番人気・僕の本命😢)
おなじ東京コースでも、天皇賞・秋は19年2着、20年4着と大崩れしていないのですが、安田記念では19年16着、20年13着、そして今年も7着と奮いません。11秒台前半のラップが続くようなレースでは、展開の速さについていけなくなっている気がします。サウジアラビアRCの勝ち方をみるに、2歳時はそんなことなかったと思うのですが、母がロベルト+ダンジグ4×3と重厚なだけに、加齢とともにズブさが出ているのかもしれません。
サリオス(8着・3番人気)
もともとはハイペースのレースでも好位でうなるように先行していた馬ですが、今回は前進気勢が感じられませんでした。ライバルのコントレイルが長めの距離を使い続けたことで、大阪杯では追走力が鈍っていたように、それとおなじことが本馬にも起こっているのかもしれません。皐月賞、ダービー、毎日杯と中距離を使い、マイルCSは後方から。再び中距離に戻して大阪杯という使い方をしたことで、マイラーとしての才覚が衰え、悪い意味で丸くなってしまったような印象です。ただ今回に関しては、単純に大阪杯の反動が取り切れてなかったところもあったでしょうね。
オマケ:血統ワンポイント解説
母方に『リローンチ』の血をもつディープインパクト産駒の牡馬は、19頭中12頭が勝ち馬。本馬のほかに、三冠馬のコントレイル、今回の安田記念にも出走していたギベオン、今週のエプソムCに出走予定のアルジャンナなどが出ています。好相性の組み合わせとして覚えておきましょう。
すでに2歳馬からも、開幕週の東京1600mで強い勝ち方をしたコマンドライン(アルジャンナの全弟)が登場。また6月27日・宝塚記念の日の阪神1800mにもキラーアビリティとチェルノボーグ(ギベオンの全弟)が出走を予定しています。ほかにもコントレイルの全弟・サンセットクラウドや、セレクトセールで4億7000万円で落札されたリアドなど、スター候補が目白押し。今年もリローンチ旋風が巻き起こりそうですね。