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マイルCS 有力馬血統考察

セリフォス

 母の父のルアーヴル、2代母の父のフリーダムクライが重厚な欧州血統。これが底力となり、ダイワメジャーの突進力を支えています。父の配合論に忠実であり、理にかなった構成です。ダイワメジャー産駒といえば、メジャーエンブレムやレシステンシアのように、タフな消耗戦で後続をふるい落とす競馬スタイルが持ち味。ただ本馬はそのようなタイプではありません。むしろダイワメジャーらしからぬ柔らかい走りをします。どうやら父の資質より、祖母がもつボールドビダー、セクレタリアトの「ボールドルーラー×プリンスキロ」的な軽さが表面化しているようです。
 4歳の秋を迎え、そろそろ競走馬としてのピークを迎える時期。このまま柔らかみを活かすタイプとして完成していきそうです。昨年のマイルCSで見せた、後方から全馬を斬り捨てる姿はまるでグランアレグリア。ダイワメジャーからこういう子が出るなんて、やっぱりちょっと不思議な感じがしますね。前進気勢が強く、エネルギーを漏出しやすいのが難点。溜めれば鋭い切れ味を使えますが、かなり乗り難しい馬です。


シュネルマイスター

 父は現役時代にマイラーとして活躍したキングマン。母のセリエンホルデは独オークス勝ちの重厚型。スピード×スタミナという構成で、綺麗なバランスになっています。それでいて面白いのは、父と母の適性が違っていながら、構成は相似配合になっているところ。「フォーリンクーリエ≒ハイリヴァー」4×4、クリス4×5、ミルリーフ5×6、リファール5×6など多くのクロスを作っているのです。実績のある両親の資質を刺激して、しっかりと継承させる仕組みは好感がもてます。クロスする血が日本向きで、クセのない上質なものばかりなのもいいですね。
 体質が柔らかく、優れた決め手を使うタイプ。直線の長い外回りコースは合います。ただ柔らかいぶん、身を粉にして突き進むような競馬はできません。どちらかと言えば1800m寄りにシフトしたマイラーでしょう。淀みのない引き締まったレースより、少し中だるみがあるくらいの流れが理想です。前走の毎日王冠は直線で前が壁になってしまいました。一瞬の切れ味を使うキャラではないだけに、ロスはかなり大きかったと思います。ゴール前の脚は際立っており、スムーズなら勝っていたはずです。


ソウルラッシュ

 母のエターナルブーケは、ストームキャットの血をもつマンハッタンカフェ産駒。これはショウナンマイティ、レッドアンシェル、エーシンミズーリ、マッハヴェロシティ、アンシェルブルー、トレンドハンターなど多くの活躍馬をだす好相性のパターンでした。エターナルブーケ自身の現役時代は未勝利で、結果がでていません。しかし配合的なポテンシャルは高かったのでしょう。母親としてソウルラッシュをだしたことで、血の真価を発揮したかたちです。本馬はルーラーシップ産駒としては珍しく、マイル路線を主戦場としています。これも母方の影響が大きそうですね。
 本馬の長所は高速巡航能力。その反面、トップスピードを長く維持させるのが得意ではありません。3、4コーナーからエンジンをかけてポジションを上げていくような、王道の差し競馬をすると、最後で甘さがでてしまいます。脚の使いどころがかなり難しいタイプです。
 前走の京王杯AHは逃げ馬が速いペースでいったこともあり、2番手以降のペースも乱高下が少なめ。勝負どころで無理せず、じわじわと差を詰めるかたちで、エンジン全開の区間が短くなりました。本馬にとって理想的な展開だったと思います。


エルトンバローズ

 本馬の祖父にあたるディープインパクトは、ブライアンズタイムの血と好相性。ディーマジェスティ、モンドインテロ、ゼーヴィントなどの活躍馬をだしています。息子のディープブリランテも、その相性の良さを引き継いでいる可能性が考えられます。ブリランテ×母父ブライアンズタイムの牡駒は該当馬が4頭しかおらず、ニックスかどうかまでは断定できません。しかし本馬とセダブリランテスの2頭が重賞を勝利しており、じゅうぶんすぎる実績を残しています。どちらもラジオNIKKEI賞の勝ち馬というのが興味深いですね。パワーと機動力を主体とする構成であり、福島のようなタフな小回りコースに強いのも納得です。本馬の祖母・ニュースヴァリューは、現役時代に札幌スプリントS(※函館スプリントSの前身)で2着になっています。本馬はタイプこそマイル~1800m型ですが、前で競馬ができるスピードと前進気勢は、牝祖の遺伝子がしっかりと受け継がれている証左でしょう。
 血統背景を考えると、東京・良馬場の毎日王冠で高いパフォーマンスをみせたことに驚きはあります。直線でしばらく内に閉じ込められていましたが、持続型ではないので、かえって良い溜めになったとみるべきかもしれません。


ナミュール

 ハービンジャー×ダイワメジャーという構成は、硬いタイプを想像させる字面です。ただ実際は、小柄ながら全身を使ったフットワークが目を引きます。これは母・サンブルエミューズの現役時代を彷彿とさせる走り。前脚を掻き込んで推進力を得る走法は、3代母・キョウエイマーチから代々受け継がれてきた、この牝系特有の個性です。本馬はハービンジャー産駒というカテゴリではなく、牝系の資質を色濃く受け継いだ、母似の競走馬と見るべきでしょう。
 3歳時は桜花賞以降、中距離で折り合い重視の競馬に専念。オークス、秋華賞でも好走しました。4歳初戦の東京新聞杯で、久しぶりにマイル戦に出走。かつての尖った才能が丸くなっているのではないかと懸念しましたが、結果は生き生きとした走りで2着。淀みの少ないマイル然としたレースにも、問題なく対応してみせました。牝系の影響が強いぶん、本質的にはマイル~1800mくらいが走りやすいのでしょう。
 ヴィクトリアマイルでは向こう正面で接触を受け、大きくブレーキを踏むロス。安田記念でも直線で前をカットされ、勝負を諦めました。久しぶりにスムーズな競馬ができた前走の富士Sでは、これまでの鬱憤を晴らすかのような爆発力をみせて完勝。さすがに力を出し切ると強いです。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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