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種牡馬・スワーヴリチャードについて考える

 スワーヴリチャードは23年の秋、種付料がそれまでの200万から1500万に大幅アップ。当時の大きな実績はコラソンビートの京王杯2歳Sのみでした。いくらなんでも強気すぎる価格設定だと思いましたね。しかしその後、すぐにレガレイラがGⅠ・ホープフルSを勝利。年が明けても勢いはつづき、スウィープフィートとアドマイヤベルが重賞で優勝。さらにはアーバンシックが菊花賞、レガレイラが有馬記念を勝ち、GⅠ2勝をくわえて24年を締めくくりました。

 24年の年始時点で、レガレイラ陣営は日本ダービーへの挑戦もあるとコメント。実際そのとおりに出走してきました。ダービーというのは、将来の種牡馬候補の価値を高める意味で、牡馬にとって一番重要なレースといっても過言ではありません。種牡馬ビジネスとして貴重な機会を潰す可能性が生じるにもかかわらず、それでもノーザンファームが牝馬を送り込んだ。その意図をどう考えるべきでしょうか。

 個人的な推測ですが、21年生まれの世代は牡馬の価値よりも、種牡馬・スワーヴリチャードに箔をつけることを優先していたのかな? と思うところはあります。結局レガレイラはダービーで結果を残せませんでしたが、有馬記念を勝って父にあらたな勲章をプレゼント。種付料と実績を伴わせることに成功しました。ノーザンの本心としては、アーバンシックのGⅠ2勝目が理想だったかもしれません。それでもちゃんとセカンドベストの結果をだしてくるところはさすがノーザンです。
 

 ここからは種牡馬・スワーヴリチャードの印象や、配合の傾向について考えてみたいと思います。


牡駒は安定感、牝駒は大物率が優秀

 まずスワーヴリチャード産駒を牡馬と牝馬に分けて、成績データを調べてみました。

※25年1月6日集計


 牡駒は勝ち馬率が高めです。その反面、重賞勝ちはアーバンシック(菊花賞)のみ。大物は多くありません。重厚さが濃く、スピードに欠けるタイプが多い感覚です。スワーヴに似て成長曲線が緩やかな印象も受けます。第一世代が古馬になった今年から、一皮むけた馬の活躍が増えてくるかもしれません。

 一方の牝馬は勝ち馬率や連対率などが低め。全体的にみると安定感に欠けています。しかしGⅠ2勝のレガレイラを筆頭に、コラソンビート(京王杯2歳S)、スウィープフィート(チューリップ賞)、アドマイヤベル(フローラS)の4頭が重賞勝ち。大舞台での実績は牝馬のほうが優れています。ペーパーオーナーゲーム(POG)でスワーヴ産駒を狙うのであれば、仕上がりが早く、切れ味がある大物がでやすい牝馬を重視すべきでしょうか。

 ただし牝馬も当たり外れが大きく、それなりのリスクは覚悟しなければいけません。優秀な種牡馬であることは確かですが、POGで狙う場合の難易度は高めですね。個人的にはドゥラメンテ産駒の傾向に近いイメージをもっています。僕はドゥラメンテから当たりを引いたことがないので、スワーヴ産駒を上手く拾える自信がまったくないです💧


現4歳世代は『ダンジグ』もちが活躍

 21年生まれの現4歳世代は、『ダンジグ』の血をもつ産駒が大活躍しています。25年1月現在、17頭中9頭(52.9%)が勝ち馬。GⅠ馬のレガレイラ、アーバンシックをはじめ、重賞馬のコラソンビートとスウィープフィートが該当。ほかにショーマンフリート(3勝)、パワーホール(札幌2歳S2着)などもいます。

 スワーヴリチャードは柔らかな体質を伝えるタイプの種牡馬。それを引き締めるために、ダンジグの筋力が効果的に機能するのでしょう。またスワーヴの母であるピラミマは、オリンピア4×4のクロスをもちます。これを考えると、ダンジグが血統内にオリンピアを内包することにも意味がありそうです。単に引き締めるためだけの存在ではなく、ピラミマの特徴を継続できることも大きいのではないかと思います。


現3歳世代は『ヌレイエフ』もちが主流

 4歳世代では猛威をふるったダンジグもち。しかし22年生まれの現3歳世代は、8頭が出走して勝ち馬はゼロ。頭数自体が少ないので、これで傾向が変わったと判断するのは早計ですが、勢いに陰りがみられるのは気になるところです。そのぶん存在感をみせているのが『ヌレイエフ』。3歳世代は13頭中6頭(46.2%)が勝ち馬。いまのところスワーヴ3歳全体で勝ち上がっている馬は6頭。つまりすべてがヌレイエフもちということです。

 実は4歳世代も20頭中10頭(50.0%)が勝ち馬になっています(※牡駒に限れば勝ち馬率61.5%)。大物がいないぶん、ダンジグもちの陰に隠れていましたが、もともと親和性の高さを見せていた血です。今後はダンジグとの二枚看板になっていくのでしょうか。


グリーンデザートもちに注目?

 せっかくなので、未来の予想もしてみたいと思います。もし推測が当たったら褒めてください。外れたら…、今後にいかしますので生暖かい目で見守っていただけると助かります🥺

 さきほどスワーヴリチャードの母・ピラミマはオリンピア4×4をもつと書きました。しかし広い見方をするなら「ラッキースペル≒リヴァーオブスターズ」3×2のニアリークロスもちと表現してもいいかもしれません。オリンピア、ロイヤルチャージャー≒ナスルーラ、プリンスキロ、マームードなどが脈絡。柔軟性をパワーの両面を兼備したスピードが増幅されています。
 

ピラミマは「ラッキースペル≒リヴァーオブスターズ」3×2と見ることもできる


 この仕掛けをさらに強化するできるのが『グリーンデザート』の血。グリーンデザートはオリンピア、ナスルーラ、ロイヤルチャージャー、プリンスキロ、マームードを内包。前述の「ラッキースペル≒リヴァーオブスターズ」の構成要素のすべてに絡むことができます。しかもオリンピアの経由元は、スワーヴで結果を出しているダンジグ。親和性も問題ないでしょう。
 


 現在はグリーンデザートもちのスワーヴ産駒は2頭しかおらず、1勝馬が1頭いるのみ。これからの活躍に注目したいです。


シャーペンアップもちにも注目

 シャーペンアップはトニービンと親和性が高い血。両者を組み合わせて能力源にした競走馬が、さまざまな種牡馬の産駒から誕生しています。詳細は以下の別記事をお読みください。
 


 スワーヴリチャードはトニービンをもつ種牡馬。シャーペンアップを内包する繁殖牝馬との掛け合わせはおもしろいのではないかと思います。

 いまのところシャーペンアップをもつスワーヴ産駒の勝ち馬率は42.1%(8/19頭)。スワーヴ産駒全体の29.6%を上回る成績を残しています。2勝馬が4頭いるのみで大物はいませんが、安定感のある組み合わせとして覚えておいてもいいかもしれません。

 さきほど僕はスワーヴリチャードについて「ドゥラメンテの傾向に近いイメージをもっている」と書きました。そのドゥラメンテはシャーペンアップと好相性。タイトルホルダー、スターズオンアース、サウンドビバーチェなどの大物をだしています。このこともスワーヴ×シャーペンアップが合うと推理する一因です。


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