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「夢は叶いません」

何気なく参加した社員研修の場で、講師は「恩師に言われた言葉」としてこの言葉を紹介した。
彼は車いすラグビー選手、官野一彦さん。

曰く、「夢だと思うから叶わない。叶えたいなら「目標」にしなさい」と。

その言葉があまりに衝撃すぎて、そのほかの講演・研修内容を、そして官野さんのお名前も、ほぼすべて忘れてしまった。
残った少ない記憶を元に調べて、やっと見つけた。

なんなら調べるまで官野さんがなんの選手だったかも忘れてしまっていた。車いすバスケの選手だと思っていた。
官野さん、大変申し訳ございません。やっと思い出せました。

「官野さん、ゴールを決めましょう。ロンドンパラリンピック出場を2年後のゴールとして、1年後には何を達成していないといけないですか?」
「予選を突破しなければなりません」
「それを達成するには?」
「そもそも日本代表に復帰していないと」
「復帰するために3ヶ月後には何を? 1ヶ月後、1週間後、明日はどうでしょう?」

つまり、目標から逆算して計画を立てるんです。さらに弱点を克服するための計画も練りました。10キロ減量するために毎月1キロずつ痩せたり、スピードの遅さをカバーするために毎日10キロ走ったり、一つ一つクリアしていったんです。

経営者兼パラアスリート、官野一彦が心を燃やす次世代への恩送り 

私の夢はまだ「目標」ではない

官野さんが教えてくださった言葉を思い出すたび、自分の現状がどんどんまずいものに思えてくる。
私の夢は「フリーランスになること」で、以前このテーマでnoteを書いた。

その最後に「そのために、あなたは今、何ができる?」という項目があり、自分が今できそうなことをつらつらと書いた。

が、「1年後は何を達成していなくてはならないか?」「3ヶ月後は?」「1ヶ月後は?」「1週間後は?」「明日は?」と聞かれたら、何も答えられない。

強いて言うなら「3ヶ月後には日商簿記2級合格」と答えられる。
専門性を高めるため、そして社内でフルリモート職に異動する根拠とするために。
「ではそのために1ヶ月後にはどうなっていたい?」には「動画講座を見終えて、問題集演習に入っている」と答えられる。
しかし、「1週間後は?」「明日は?」に答えられない。

夢を目標にするには、計画が必要

まずはやること。手を動かすこと。調べてみること。
それが何かに取り組む最初の段階で、最も重要なことだ。
しかしそれだけでは方向性を見失う。なぜなら「最初の段階で」重要なことだけをやりつづけているのだから。
そんなのはPDCAサイクルではない。DDDDサイクルになってしまう。
それでは残りの人生、あと何時間かも分からない時間がもったいない。

試しに手を付けてみたら、
・何がわかって、何がわからないのか
・思いもよらなかった壁はなにか
・何にどれくらいの時間とお金がかかるのか
というようなことが分かってくる。
そうしたらその段階で一旦「とにかくやる」フェーズは終了。全部を把握してなくてもいい。
これらの情報を基に、計画を立てなくてはならない。

夢を叶える計画は、自分自身との戦い

夢を目標にしてそれを叶える計画を立てるためには、自分の「できない」に向き合わなくてはならない。
これが、私にとってはとても辛い作業だ、ということに気がついた。

幼い頃から完璧主義でプライドだけは高い。
運動や絵を描くなど「元からできない」と諦めているものは平気。
でも勉強など「できるはずのものができていない」ことが、ものすごく苦痛。
この「プライドが高い」ということにすら、自覚したのは最近のこと。

受験・資格勉強はまず、過去問を解く。
仕事は手をつける前に、ゴールを聞く。
分かっていてもできないのは、「できない」を突きつけられるのが怖いからだ。

「できない」ことは私の欠点ではなく、現在地点を示すだけなのだと、理解しなくてはならない。
「東京駅に行くのにSuicaの残高が足りない」と分かった時、「自分が貧乏だと責められている」のではなく、「チャージが必要」と考えるように。

「できない」と分かったら、「できる」までの手段と時間を考える。
そして、達成するまで毎日必要なことをただ淡々とやる。
「できない」と分かったからといって「私はなんてダメなんだ」と自分を責め続けていたら、夢は永遠に目標にならない。

「やってみろよ、通用しないから」

できない自分を認められないと分かった時に心に浮かんだのは、ウエストランド井口さんの、ラジオのワンシーン。
カゲワサビさんがイラストで紹介してくださったこのシーンだ。

「通用すると思ってるから踏み出せないんだよ、通用しないと思えば踏み出せるから!」「やってみろよ!通用しないから!」

そう、
「できる」と思っている
→「できない」かもしれないことが怖い
→手が動かなくなる
という本末転倒な状態になっていることに、なかなか気づかなかった。

夢を目標にするために、私にはまず「通用しない」という前提が必要だ。
高いプライドをへし折って、まっさらな状態から目標を立て、計画を立てる。
そう考えると「夢は叶わない」も、一度自分をまっさらにするための言葉かもしれないと思える。

夢は叶わない。自分じゃ通用しない。
だからこそ一つずつ、やるべきことを見極めてやっていくしかない。


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栗藤ルネ
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