こどもたちの関係性を覗き込む 〜 小学校でのワークショップNo.1 〜
NPO法人Collable(コラブル)のくりのです。
Collableでは代表の山田とゲストが対談形式で「インクルーシブデザイン」について語る会報誌TUNE(チューン)を発行しています。(会報誌はマンスリーサポーターのみなさまにお配りしています。詳しくはこちら)
【 インクルーシブデザイン 】障害のある人や高齢者、ちいさなこどもなど、これまでデザインのメインターゲットにされてこなかった人々を、ワークショップ形式で積極的にデザインプロセスに巻き込む手法です。
前号では演劇家の柏木陽さんをお呼びし、小学校でのワークショップのお話をしました。前回のnoteではその柏木さんに私がファシリテーションについてお聞きしたことを載せました。
今回のnoteでは会報誌に載せきれかったインタビューを公開しちゃいます!小学校でのこどもたちの変化や先生たちの変化なども載せていくので、ぜひご覧ください!
No.1 「こどもたちの関係性を覗き込む」 (大人から見たワークショップの価値について)
No.2「こども自身が自らの参加の仕方を探る 」
(こどもの変化について)
No.3 「学校という枠の難しさ」
(日常へのワークショップの限界について)
No.4「大人が行う、こどもたちの行動への価値づけ」
(関わる大人の価値付けの変化について)
今回は大人から見た、ワークショップの価値についてフォーカスしてます!
ー他者にとって望ましい形へと変わる。
山田:明らかにこどもたちのあり方とか姿勢とかが変わっているじゃないですか。例えば教室に入ることすら微妙だった子が、とりあえず(その場には)居ようという気持ちになるのは、体としては参加表明しているってことじゃないですか。
人間って、直接的に他者と関わるときまでにいろんなレイヤーがあると考えていて。まず場として集団に参加する(同じ場所にいる)ってことがある。でも支援級の子たちってそれが難しい。もちろん今でいうと通常級でも難しい子がいるんだけど。
でもその場の参加ができたあとは、あのときどうして場の参加ができないのかとか、逆に参加がなぜできたのかを振り返る必要があると思う。
次に人との関係の話をしなきゃいけない。そこからどんなステップがあったら人と関係を持つようなことができるのか―
という社会性を育む上での個々のステップが見える機会には(小学校でのワークショップは)なっている気がします。そしてこれまでの蓄積がある分「これができるようになったんだね」とかが言えるのはすごく嬉しい。
柏木:それが年齢による変化なのか、彼ら自身がこの試みなり他の授業なりで獲得したものなのかっていうことはまだ見えてこない部分もあると思うんだけど、はっきり言えるのはある変化が、特に大きく見えるのは特定の子に変化があって、その特定の子の変化っていうのは、周りにとって特に先生や親御さんにとって望ましい形に変わってきているっていうのは、はっきり言えることだと思いますね。
山田:望ましい形。
柏木:周りがとってほしい行動っていうのがあると思うんですよ。それは支援学級の子だから、とかだけではなくて、3年生だろうが6年生だろうが、こうしていてほしいなって、こんなふうに行動してほしいな、みたいな周りの大人や同級生が思う望ましさがあると思うんですよ。
で、そのある種周りが期待する望ましさみたいなのを時折見せてくれるようになってきた。だからこの活動が無駄じゃないっていうふうに先生たちは判断したんじゃないかと思うんですね。それも先生が促すんじゃなくて自分の判断で行動している。その行動がその子の本意かどうかは分からないんだけど。
ークラスでの関係性を覗きこむ時間。
山田:なるほど。それがある意味先生たちが何か支援をしたり、介入したりすることによって、それで行動が強化されることではなくて、「ある程度自分たちの手が離れた場で、それが見える」っていうのは手応えなのかもしれないですね。
先生たちの姿勢が前向きなのは今年特に感じたし、いい意味で先生たちが気を抜いてくれている気がする。あれは嬉しいなと思ったなあ。
それでいて、学年の傾向なのかわからないけど、今年の三年生は各クラス色々あるじゃないですか、去年より今年の方があからさまに大変なパターンが多い。
先生たちはこの様子を普段から見ているからこそ、先生の立場として、この授業に対して「自分たちがいつも見ているものがどういう成り行きで起こっているのか」を冷静に見てくれている場になっている気がする。
こどもたちの社会性を冷静に見直していくというか、覗き込んでいる機会にワークショップはすごくなっているし、逆にそういう時間がないとも言えそう。なんとかしたいとわかってはいるんだろうけど、ゆっくり振り返る時間がないんだろうなって。
***
書き起こしているうちに「社会性って誰かにとって望ましい変化のことなのかもしれない」「いつも起きている出来事を冷静に見直せる時間って学校だと少ないのかもしれない」と思いました。
誰かにとって望ましい変化、というのは、決して単に学校の要望に従う、という意味ではありません。その子の個性や状況を理解しながらも、みんなと関係をもつために、その子と周りが試行錯誤することができている、という状況がうまれるということ。そしてその状況にこそ、ワークショップを通じて見える成長があるということだと思います。
だからこそ、学校に外部の人間が入ってワークショップをする価値がある。
はたから見ると、ただ遊んでいるようにも見えてしまうワークショップ。でも、ゆっくりじっくり関わってきたからこそ見えてきたものがありました。
次回のインタビューはこどもたちの変化についてです。ぜひ、連続して読んでみてください。
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