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会話する理由▶チャーリー

作品の中で印象に残った会話ってありますか?
作品の中では「台詞(セリフ)」と呼ばれたりしますが、たった一言のセリフでその作品の印象がどーんと決まる事がありますよね。

映画ですが「ゴッドファーザー(”The Godfather”)」という作品があります。
(本と違うんかい!というツッコミが聞こえてきそうですが、「ゴッドファーザー」は映画が有名ですが、そもそも小説が大ベストセラーになり、作家のマリオ・プーヅォが監督のコッポラと共同で脚本を書いた映画なので、お許しください)

この作品にはたくさんの名セリフがあるのですが、なんといっても最高に印象的なセリフは映画のラストシーンで主人公マイケル・コルレオーネが彼の妻であるケイに言う、「ノー(No)…」という部分です。

ただ、この一言がなぜ名セリフなのかは、この「ノー」という単語だけでは分かりません。
実はこの「ノー」という言葉が嘘である事を映画を見ている観客は知っています。
「ノー」と言ったマイケルももちろん嘘をついている認識があります。
そして、妻のケイは彼が「ノー」と否定してくれた事で、その瞬間はホッとするものの、そのあと一人になって遠くから夫であるマイケルを見つめる眼差しには、それが嘘かもしれないという疑いが生まれ始めているように見える感じで映画は終わります。

ただ一言の「ノー」ですが、マイケルはどういう経緯で「ノー」と言ったのかという事、つまりこの映画の始まりからラストに至る経緯があってこそ、この「ノー」という一言の嘘が生きてきます。

「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」 三木那由多 光文社新書

三木那由多さんは「会話」とは情報の伝達するだけではないという観点で「会話」を研究されています。

会話のシンプルな一面は人と人との「コミュニケーション」としてですが、これも情報を人から人へ渡すという「バケツリレー」というだけでなく、お互いの間で「約束事」の構築という面があるとしています。

一度会話に出てきた情報が、その後の会話の前提条件、つまり二人の間の「約束事」となっていて、その前提が有ると無いとではその後の会話の意味が大きく変わってくるという事です。

そして会話のもう一つの特徴は「マニピュレーション」、相手の感情、行動を操る目的のセリフです。
例えば先ほどのマイケルとケイの会話です。
マイケルは、そこに至る経緯の中でケイが「ノー」と答えて欲しい事を知っでいます。そして、自分が「ノー」と答える事でこのあとケイと自分がどうなるのかもわかっていて「ノー」と言うのです。

そんな言外の意思疎通、字面からだけでは決して読み取れない意図を込め、相手に影響を与える会話がマニピュレーションです。

この本の中ではそう言う会話の実例として漫画や小説の登場人物の会話をたくさん取り上げて解説しています。

会話の分析としても面白いですし、取り上げられた作品を読んでみたくなります。

横浜読書会はそういう作品の中のたった1行、一言について語りたい!という人も大歓迎です。

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【投稿者】チャーリー


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