「あの日、君と行った映画」の話▶︎チャーリー
最近、ユーミンの昔の歌がよく流れてくる気がします。「ルージュの伝言」とか。
「あの日、君と行った映画…」と読むときに、『あのひ〜きみといぃったぁ〜🎵えいがぁが…』とメロディがついてくる人は何人いらっしゃるでしょうか。
これはユーミンが、まだ荒井由美だった1975年に“バンバン”というデュオグループのために書いた曲「『いちご白書』をもう一度」の出だしの歌詞です。
歌詞には出てきませんが、彼女と観た映画というのが「いちご白書」という映画です。
「いちご白書」はアメリカで制作され1970年に公開されました。
アメリカのウェスタン大学という架空の大学が舞台で、大学と学生が対立し、学生が大学の建物を占拠しています。
ウェスタン大学のボート部に所属するサイモンは学生運動に無関心でしたが、リンダという女性と出会ったことをきっかけに学生運動にも深く関わっていきます。
映画のラストでは、体育館の様なところに学生たちは立て篭もり、大学側は警察や州兵を動員してそれを排除しようとします。座り込みをして、ジョン・レノンの「平和を我らに」(“Give Peace a Chance” )を歌う学生たち、サイモンとリンダもその中にいます。やがて学生たちは警官に無理矢理引きずられるようにして排除されていきます。抵抗して警棒で殴られている学生もいます。叫んでいるリンダのところに行こうと、立ちはだかる警官たちに向かってサイモンが飛び上がったところで映画はストップモーションになり、そして、サイモンは警官隊の波の中に埋もれていき、映画は終わります。
僕は大学生だった80年代にレンタルビデオでこの映画を観ました。その後も何度か見直したと思います。
ただ、この映画は日本ではそこそこヒットしたものの、アメリカではあまりヒットしなかったらしく、DVDにはならず、配信サービスにも乗っていないので、30年ほど再見することはできませんでした。
実はそんな映画「いちご白書」が23年の末にNHKで放送されました。
久しぶりにこの映画を観て、改めていい映画だなあと思いました。
ところでこの映画には「原作」とされる本があります。
この映画のウェスタン大学の紛争は1968年にニューヨークにあるコロンビア大学で実際に起きた事件をモデルにしています。コロンビア大学での紛争に学生として関わっていたジェームズ・クネン(James Simon Kunen)という人が書いたのが
「いちご白書(“The Strawberry Statement”)」
という本です。
NHKの放映を観たら、この原作の「いちご白書」を読みたくなり、絶版なので古書しかありませんでしたが、なんとか手に入れて読み始めました。
書籍はクネンの日記のような、学生による紛争の記録でした。映画に描かれた二人の若い男女の恋と挫折というものではなかったのです。ノンフィクションだから仕方ないとはいえ、いささかがっかりしてしまいました。
読み終わった後、もう一度映画を見直しましたが、やっぱり映画の方が良いと思います。見終わった後もしばらくの間は映画の中で流れる「サークル・ゲーム(“Corcle Game”)」という曲とラストシーンが頭の中で何度も繰り返されていました。
というわけで、「いちご白書」の場合、彼女と本ではなく映画を観るのか正解です、という話でした。
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【投稿者】チャーリー
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