見出し画像

広告屋のDNAをDXに活かす - パーパス・ドリブンなソフトウェア

GNUS Inc. ビジネス・アーキテクトの栗林です。GNUSという会社は、2019.7に電通からのスピンアウトで生まれ、ソフトウェア会社や事業会社出身メンバーのジョインとともに成長している、ソフトウェア企画・アジャイル開発を行う会社です。

設立以降間もなく2年が経とうとしている中で、ITコンサル企業や大手SIerさんとの共同プロジェクトとしてクライアントサービスをさせていただく機会も増えています。今回のエントリーではそれらの経験を顧みて、特に大企業のDXプロジェクトにおいて活かされている「広告屋DNA」について、整理してみたいと思います。

ソフトウェアに、Whyを問う

マーケティングやブランディングの世界で数年前から主流になっている考え方のひとつに「パーパス・ドリブン」という手法があります。代表的なところでは、P&GやApple、SONYなどが採用しています。マーケティング活動のみに関わらず、商品開発、従業員に対するインナーブランディング、株主とのコミュニケーションなどの、あらゆる企業活動において「社会の中での、企業としてのあり方」を軸に据えるという考え方です。最も根本的なところはサイモン・シネック氏の著書 "START WITH WHY(WHYから始めよ), 2009"の影響も受けています。

画像2

全ての企業活動の軸となる「パーパス」の規定には、企業として、これまで社会にどのような価値提供をしてきて、その上でこの先どうなっていくべきかという内省に始まります。これはスタートアップがミッション・ステートメントの規定をするプロセスにも似ています。

過去の延長線上にある順当進化とは異なる、飛地の進化は「イノベーション」と呼ばれますが、そのシンプルな本質としてはビジネスと技術の間に生じる進化速度のギャップにあります。データの処理速度や記憶容量や通信速度は指数関数的に進化するけど、ビジネスは漸次的に進化するというアレです。過去のアセットにとらわれず現在のテクノロジーを前提にビジネスを立ち上げるスタートアップが、市場に破壊的な進化をもたらすことができる理由です。

スクリーンショット 2021-05-10 20.20.06

「企業として、社会とどう関わっていたいか」が主軸となる「パーパス」の発想は、「森(社会)」と「木(ユーザー)」の現在の姿を前提にしています。これは上記の進化速度のギャップを一旦排除し、フラットな発想でユーザー視点に根差すためのプロセスとして役立ちます。ビジネスアセットやシステムアセットの活用を最大化したいという企業視点は、実現性を考える上では重要ですが、このプロセスを通して全く別の可能性に目を向けることができます。

GNUSのソフトウェア企画プロセスは、初めから「パーパス」を中心に据えていたわけではないのですが、結果的にこの思考過程をたどっているように思います。自然に行っていたこの思考方法が、広告屋DNAを持つGNUSをパートナーとして選んでいただける理由にもなっているようです。

GNUSが設計するプロジェクトでは、「ユーザーニーズの把握」は当然ながら、「企業として目指すべきビジョン」についての合意も非常に重視しています。プロジェクトの初期に「デザインシンキング・ワークショップ」をご用意させていただくことも多いですが、これはデザインシンキングのメソッドにより目の覚めるアイディアを出すというよりも(実際に、合議制で良いアイディアに至ることは稀です)、「ユーザーの現状に対し、私たちの会社のあるべき姿ってこうだよね」という目線合わせをすることの価値が、特に大企業においてはとても大きいように感じています。

画像4

現在は主にオンラインで実施していますが、スクリーンショットだと記載の内容があまりに具体的に読めすぎるのでこちらで。笑

Whyの合意が、アジャイル・プロセスを推進する

そもそもアジャイル開発の前提は「時間をかけて、大量のデータを分析したとしても、最初に行った要件定義はさまざまなレベルで誤差のある可能性が高い」ことです。ターゲットユーザーが「欲しい!」と言ったサービスやプロダクトのコンセプトを実際に買ってくれるとは限らないし、「イノベーション」と呼ばれるような、過去に習慣化されたプロセスとは異なるサービスモデルを目指すのであれば変数はさらに増えます。またグロースのステージによっても、提供すべき価値は変化していきます。それら不確定要素をひとつひとつ検証していきながら、機能、デザイン、時にコンセプトそのものと、あらゆるレベルでユーザーや市場に適合させていくのが、基本的なアジャイル・プロセスの考え方です。

一方で大企業のDXや新規事業における大きな課題は「経営層の合意」です。スタートアップと異なり、大企業の場合はソリューションの具現化の前に、予算獲得のためにMVPも無い状態で意義と根拠を社内合意しなければいけません。実際にGNUSとしても、プロジェクトを開始時点で「ロジック作り」が求められる場面も非常に多くあります。(私自身、このフェーズでクライアントをご支援させていただくことは多いです。)

そんなことを繰り返す中での学びは、ロジックでサポートする仮説の置き所の重要性です。プロダクトの機能や、ユーザーが支払う金額に対するロジックは、調査を経ても不確実性が高く、また仕様変更が発生したとしても比較的コストが少ない部分となります。やはり大切なのはブレない目的設定に対するロジックで、新規事業により解決するべき課題の根拠、そしてそれを解決した場合のビジネス的な可能性の根拠です。これを"Why"として、効率的に納得できる形で合意に達することが、以降のプロジェクト推進速度をあげることになります。

実際に、GNUSのコンサルティングフェーズにおけるユーザーインタビューでは、UIモックなどを用いてコンセプトの具体案を提示することもありますが、案そのものへの評価ではなく、その案を刺激剤としたユーザーインサイトや現状のペインに着目して分析しています。そしてこれら材料を基に「ユーザーがクライアント企業に求める価値の本質」の発見により、ソリューションの企画を深めるとともにプロジェクトの実施判断材料にまとめます。

そして加えて日本の大企業では精神論も求められるのが現状ですが、プロジェクト担当者が自信と熱意を持って経営層に上申できることも非常に重要になるので、この"Why"に対するプロジェクトメンバーの肌感覚を合わせることも、とても大事な要素になります。

理想には、現実を引っ張る力がある

"Ideas are worth nothing. Execution is worth millions." とはSteve Jobsの有名なQuoteです。これを引用させていただき、GNUSでも「アイディアに価値は無い、カタチに価値がある」が設立以来ひとつの合言葉になっています。ただ、この2年弱を通しひとつ分かったことは、アイディア自体には価値はないかもしれないが、組織をエグゼキューションに導くためのアイディアは価値を創出しうるということです。

現実を理想に持っていくことで、本来計画していたビジネスバリューを実現することができます。この段階で、仮説設定と検証を繰り返し実装していくアジャイル開発が活かされることになりますが、そこのところについてはまた別の機会にというところで。

少しでもGNUSという会社に興味を持っていただけたら、以下のバナーよりサイトを覗いてもらえれば嬉しいです。忙しくなるとついついnote執筆をサボりがちですが、今後もGNUSメンバー持ち回りで定期的にソフトウェアやアジャイル開発、新規事業などのナレッジや、時事ネタなどについて書いていこうと思うので、良ければGNUS Playbookや、開発チーム視点のGNUS Tech Blog、そのほかマガジンも含めたGNUSの公式noteも、フォローをお願いします。

画像1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?