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ビジネスモデルのアート性

中学〜高校を北米(カナダ&US)で過ごした僕が学生時代に好きだった授業は、MathematicsとArts & Craftsでした。この二つの科目に向き合う時間が、学生として最もクリエイティブな思考になれる時間だと思っていたからです。図形の合同の証明なんかは大好物で、意外なところに補助線を一本引いた時に答えが一気に見えてくる感覚が、今の自分を作っていると思います。

そんな気持ちを思い出したのがきっかけは、オリラジの中田あっちゃんのYoutube大学の2つのYoutube動画です。リンク貼っておくので、ご興味あれば是非みてください。

いずれも歴史認識の中で、その当時の世の中の一般的な思想や制約のもとで生まれた新たな発想を想うと、ロマンが溢れませんか?数学の世界で新たな定理が生まれてきた事実も、こう考えると発想としてはとてもアーティスティックに見えてきます。

以上は関係がなくもないのですが、今回の本題のビジネスモデルに。上記のアートと数学の例を考えると、ビジネスにおいても歴史認識があった上で向き合うと理解が深まると言えそうです。そこで参考図書として挙げさせていただきたいのが、こちらの「ビジネスモデル全史」。過去に起こってきたビジネスのイノベーションに関する情報が満載です。

例えば、江戸時代の「越後屋」。現在の三井グループの前身です。一見さんとなじみ客で商品を提供する値段を一律にする、訪問販売や後日お届けが当たり前だった時代に店前(みせさき)で売る、完成品のデザインを吊るしで見せてお客さんに選んでいただく、など呉服屋に様々なイノベーションを起こしています。今風に言えば、顧客基盤の拡大、店舗運営効率化、店舗体験向上などが近いのかと思いますが、日本におけるその歴史は江戸時代まで遡るわけですね。さらに面白いのはこの後で、呉服屋の店舗数が西に東に爆発的に増えたことで、幕府に上納金を収めて東西を行き来しなければいけない大名に目をつけ、東西の通貨が違ったので為替業を始め、これを新たな投資資金として得て更なる事業拡大を行なったのです。今でいうアセットを活用したビジネスモデルのシフトとシナジー、でしょうか。

例えば、リーン生産方式を生み出したトヨタ。フォードやGMが生産工程の緩衝材として在庫を抱えていたことに対し、在庫をなくすことでむしろ生産工程上の改善箇所を常にチェックすることができるようになり、コストを下げ品質を上げることに成功したことが、アメリカ市場での成功につながりました。エリック・リースの著書リーンスタートアップではこれを参考にして、組織の無駄を可視化し改善していく必要性を提唱しています。成功しているD2Cブランドが安く品質の良い商品や充実したサービスを提供することで、大手メーカーに対する競争力を作り出していると言うのも同様です。

例えば、IBMが生み出したPC製造の水平分業モデル。全ての部品の開発を自社で行ったAppleに対抗して、短期間で対抗PCを販売につなげるために、借り物のOS、GPU、CPU、DRAMなどのアセンブリにより製造販売し、結果的に専業メーカーが最も恩恵を受けたという話。今で言うとあらゆる分野のSaaS型サービスが台頭しているのと近いかもしれません。

ちなみに、歴史的に見てもスピードは事業の競争力を高める大きな武器の一つだったことがわかります。例えばDELLがPCメーカーとして成功したのは、2ヶ月で9%のコスト下落がある半導体製品を在庫として抱えるリスクを取らず、在庫は最小限にする代わりに高速で受注生産するモデルを作ったことが要因でした。Yahoo!は同様の検索サービスがひしめく中で、アクセスを集める競争をスピード感を持って勝ち抜いたことで、ポータルサイトとしてスケールアウト。YCombinatorのプログラム参加者は3ヶ月でビジネスプランを完成させますが、そこで投資家の支持を得られなかったアイディアについては無理に続けず潔く終了させることで、起業家にとっても次のプランに挑むチャンスとなるので合理的です。

ビジネスがアートだとすると、着想と実装の両方が備わらないと作品は出来上がりません。実は、GNUSが大事にしている提供価値の柱の一つがスピードです。フリーランスの開発チームをクライアントサービスへ連携させるノウハウをシリコンバレー企業から"輸入"していることで、大手SIerの旧来のビジネスモデルとは違う、スピード感のあるアジャイル開発を実現できています。特にtoCのソフトウェアビジネスは多くがサービス提供のプラットフォームでもあるので、Yahoo!の例のように競合サービスは無限にある中で市民権を得られるかどうかが勝負となり、これは本当にスピード勝負です。

個人的に、ビジネスを単なる請負作業とは捉えたくないなと常に思っています。ビジネスの歴史に残るような事業を世の中に出していくことを目標に、クライアントの皆さまとチャレンジしていきたいと思っています。

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