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伊勢金比羅参宮日記(9) 伊賀道中・長谷寺・三輪明神・奈良
2月23日(26日目) 伊賀道中
(晴れ、雨を欠く)出発して、大の木、(一里半)二本木、(一里)垣内(がいと)を通り、ここ伊賀屋吉兵衛方にて昼飯を食べる。この家、はなはだ悪し。
これより伊勢路、三十丁阿保、一里新田、二里夕張(名張)で、夕方に小竹屋で泊まった。良い宿である。
今日、垣内から伊勢路の間、3里青山峠があった。(この間、馬を取った。150文なり)
小竹屋までの間、良い宿屋がなくて、伊賀道中は人気甚だよろしからず。
六軒から大和路に入っては、食事は美味しくない。
また、茶屋に入ったら、すべて値段を聞いてから食べること。食後に値段を聞くと定価より少し高い値段を言って来る。まことにこの貪欲さは嫌らしいものだ。しかし、言語愛すべきなり。
酒は多くて、甘くて、あまり良くない。
2月24日(27日目) 長谷寺・三輪明神
晴れたり曇ったりではっきりしない天気である。
カタカ(鹿高)、三本松、大野山辺、はい原(榛原)、このあたりはみんな山の中で、小さな坂道があり、いたって辺鄙(へんぴ)なところである。
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長谷観世音(長谷寺)を参詣する。
桜と梅が同時に咲いていて、景色はよろしい。
大和路は寒気が強く、この日は九條様、鷹司様がお役目で参籠(神社お寺に籠って祈願すること)のため鹵簿(天子の行列。鹵は行幸の時に先導に用いる大盾。簿は、行列の順序をしるす帳簿)厳なり。
三ヲンド三輪明神(大神神社)参詣すること。三輪に到着して、竹田屋甚七方に宿泊する。この宿は良い宿であったが、今日は私が風邪で大変困った。今夜は早く寝ることにする。
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2月25日(28日目) 奈良
曇天、時々晴れ。光風(雨後のさわやかな風)は甚だ寒く、寒中(小寒から大寒までの一番寒い期間)のようである。
三輪を出発。丹波市、帯とけ(おびとけ)、奈良、このあたりは三輪を出てから山間とは言えども平坦である。奈良は見どころが88か所、古都懐旧(昔を思いしのぶこと)袖をしぼる(涙で濡れた袖をしぼる意味。泣く)ばかりである。古堂、名刹見どころ多く、春日野の鹿、明神の灯籠、猿沢の池の魚、その凄さは実に目を驚かす。
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この地に入ってからというもの、「ここより参詣なさい、なさい」と婦人宿引などが付きまとう。これに構わず、入り口から猿沢の池ぎわまで見回っていると、案内の人が早速見付けて来てくれる。88文の代金である。定値段である。必ず雇って順拝すること。偶々余一絶(一絶:ひとつの他とかけはなれてすぐれたもの)を得たり。
属佛古宮猶侈富 (属と佛の間にレ点、侈と富の間にレ点)
庭池魚躍飜文繍 (飜の下に2、繍の下に1)
笠山新月老桜花
穿眼風光都懐旧
案内の者が、京都、大阪の宿を勧めてくるが、取り合ってはいけない。また、油煙墨(油、樹脂などを不完全燃焼させる時に生ずる黒く細かな炭素粉をニカワで固めて作った墨)を勧めてくる。それほど良いものではないので、好んで求めるほどのことではない。
奈良はすべて格別かけ値なく、京大阪路は半分値にて早速まくるなり。心付くべし。
ここ猿沢の池あたりでは参詣する間、荷物を預けなさいと勧めてくる。これは大体、奈良山中持って歩くべきである。まず間違いはないだろうが、帰り際には宿屋まで引き込まれることになる。もっとも奈良で泊まるのであれば、まず宿屋に荷物を預けて、それから参詣すればよい。奈良で一泊してゆっくり観て廻るのも良い。
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ここから七在処(大和七在所)を廻って、吉野、高野まで出るには、1日半の道のりとなるため、七在処を廻らず、多武峯、吉野と廻れば三輪まで5里戻るだけで済む。七在処は格別見どころはないが、一度は廻った方が良いだろう。法花寺(法華寺)みんな宮家である。これは四都殿閣の跡である。西大寺、正大寺、菅原天神。(今日は幸いにも祭りのため人が多い)西の京、郡山泊まり。花内屋忠兵衛。