夫婦のパラレルワールド
妻と一緒に京都の街を歩いていると、いつも不思議に思うことがある。
同じ通りを歩いてきたはずなのに、見ているものがまったく違う。
「さっきのバナナブリュレフラペチーノって美味しそうだよね!」と満面の笑みで言う。
「え?なにそれ?」
「えー!どこ見て歩いてたのよ!スタバの店の前にドーンと貼ってあったじゃないの!絶対あれ美味しいって!」
「スターバックスなんてあったか?」
と言う感じなのである。
(バナナブリュレフラペチーノは7月9日までの販売でした)
またある時は、「四条通りって食べるところないよね。マクドナルドと他に何かあった?」
「いやいやいや、そんなことないって。控えめに言ってもすぐに10店くらい思いつくけど」
「ふ〜ん、そうなの?」
きっと私と妻は別の街の話をしているのではないかと思うほど、話が噛み合わない。
でも、本屋さんに関しては「やっぱりふたば書房の選書は面白いよね」「高島屋の大垣書店はなかなか」と共通しているところからすると、きっと同じ街を歩いているらしい。
お互いに頭の中にある京都の地図は、まったく違うものかもしれない。
同じ通りを歩いていても、見ているお店、漂う香り、聞こえる音までも、マイクで拾えば同じ音の集合体かもしれないが、そこからどれをピックアップするかは、その人個人のものである。
同じ看板を同時に見ていても、私は店名しか見ていなかったとして、妻はそこに描かれていたチョコレートパフェのイラストしか見ていなかったかもしれない。
こちらの店からはドゥービブラザーズの曲が流れていて「お!Long Train Runnin'じゃん!懐かしい」って思っても、妻はその隣のお店のかき氷を削るシャカシャカの音しか聞こえていなかったかもしれない。
それこそ私が新京極のくら寿司に目が釘付けになっている時に、その斜め向かいのスターバックスの「バナナブリュレフラペチーノ」に目が釘付けになっていたように。
これはもうパラレルワールドと言ってもいいくらい、別世界を歩いている。