歌詞考察 | aiko カブトムシ
aikoと言えばカブトムシ
カブトムシと言えばaiko
なんとなく聴いたことあるひとも多いのではないかと。僕自身ファンになる前からなぜか知っていたくらいに、あまりに有名なJPOPを代表する曲だと思います。
不安感を煽るような独特なメロディーラインは1度聞いたら忘れられない魅力があるのではないでしょうか
既出曲のみを集めたアルバムとしてはまとめⅠまとめⅡ以来となる8年振りの、シングルコレクション『aikoの詩。』が発売となりました。aikoがひとつ息を整えたのに合わせて8年間ファンを続けてきた今までを振り返り、僭越ですが、初心を思い出しながらaikoの代表曲『カブトムシ』を考察していきます。
aiko カブトムシ
作詞作曲:aiko
“指先は凍える程冷たい”や、“気が付けば真横を通る冬”からこの曲はおそらく冬の曲。しかしカブトムシは夏の虫であることから、あなたとの関係が厳しい時期であると想像出来ます。
蜜(あなた)に誘われるカブトムシ(あたし)なので、追いかける側からの目線。あなたに伝えたいことがあるのに伝えられず、関係を進めたい間柄だけど、関係が終わるくらいなら言わないままでいようか…と葛藤している自問自答の渦中の投げかけから始まります。
凍える程冷たい指先にあるのは、電話の発信ボタンか、メッセージの送信ボタンですかね。悩んでいないではやく言ってしまえ。
“あなたが死んでしまって”とありますがこれは将来の話。将来を描くことよりも、今を目一杯大切に過ごしたいと願っています。
このパートの詞中にはネガティブな単語が多いですが、明るい意味合いの一節と捉えられます。
Bメロは非常に抽象的なので様々な解釈が語られていますね。
「あたしがあなたに惹かれていく様子」を切り取った場面を、蜜とカブトムシになぞらえた表現に思えます。
“スピード落としたメリーゴーランド 白馬のたてがみが揺れる”
→羽ばたいているところから木に止まる瞬間
“息を止めて見つめる先には 長いまつげが揺れてる”
→木に止まってから蜜を吸う瞬間
「あなたを見つけ、知り合い、惹かれて、寄り添い、そして夢中になる」を、aikoフィルターを通して言うとこうなったようです。表現力が恐ろしい。
メリーゴーランドで行進するありふれた木馬の中から、躍動する一頭の白馬を見つけたところは、まさに、数いる異性の中からたったひとりのあなたを見つけたことを表しているように思えます。
また、
たてがみ→まつげに近付きミクロになっていく距離感。
スピードがある状態から呼吸の揺れすらも許さない緊張感。
息を止めて観察するほどあなたを知りたいと思う気持ち。
白馬に乗った王子様的な意味も含まれているような…?
メリーゴーランドは季節が回ることを表した…?
…妄想が膨らみます。笑
たった2つの短いフレーズ中に、あたしの動きと意味合いを上手く収めているところ、あたしをカブトムシと比喩した理由、伝えたい事…
説明しきれないくらいこれ以上に無い秀逸なパートです。
大好きです、aiko。(大絶賛)
夜行性であるカブトムシの特徴を重ねて、夜を表す単語“流れ星”に、あなたとの日々を大切に過ごしたいという願いを込めているように思います。
ここではカブトムシを「かぶとむし」とひらがな表記しており、あなたとの思い出は柔らかいイメージとなっていることが読み取れます。
言わずもがな、送信ボタンに手を置く現在を切り取った曲として、題名は堅いイメージのカタカナ表記「カブトムシ」となっています。
あなたと出逢ってからの毎日は輝いていて、色とりどりの四季を感じながらあっという間に過ぎていきました。鮮明・繊細でありながらも端的な情景の表現を得意とするaikoらしさが全面に押し出された一節となります。
余談ですが、
つい今春に発表されたRadio Darlingの『メロンソーダ』にも、“毎日はあっという間に過ぎる”と歌う節がありました。aikoにとっての恋愛観は、20年間ずっと今も変わらず、あなたと過ごす日々はすぐに過ぎ去ってしまうことを軸に歌い続けていることが分かります。
有名曲を知っているくらいの方からよく言われがちな「aikoは似た曲が多い」は、言い換えれば「芯が通っている」ということになりますね。aikoにとって歌手を続けていく意味になる部分なのだと思います。
あなたとこれから過ごす中で起きる楽しいことも、もちろん悲しいことも全部、良い思い出として残せていくことが何よりの幸せ。
一貫して、何が起ころうともあなたとの毎日が大切なんだと歌っていますね。
前後しましたが、Bメロについては上記の通り。
ここでもまた夜を表す単語“月”を使ってきます。夜行性であるカブトムシの特徴と意味を掛け合わせて有効に表現していますね。
“あなたの声に耳を傾け”る部分では、あなたの胸に頭を預けて身を委ねるようなイメージが湧きます。まるで、木に止まるカブトムシのように。
“息を止めて見つめる”とは相反するように、今度は“息切れすら覚える鼓動”。曲が進むにつれてあなたとの距離感は徐々に近付き胸は高鳴っていきます。
そんな現在進行形の長い付き合いの結果が、私の悩んでる言葉のたった一言によってこの先どちらに転んでも、あなたとの日々を“生涯忘れることはないでしょう”という、回想に耽り覚悟して決意をするような歌だと考察します。ただ、冬に生きるカブトムシの勝算はあまりに低く、冒頭の投げかけ以外の大部分が思い出に浸っているような状態になっていますね。
ですので、実は失恋ソングではなかったんですね。(考察してて気付きました…。笑)
ここからは曲構成の話になるんですが、
1番AメロBメロサビ 2番AメロBメロサビ
という比較的サッパリとした作りになっていて、少し物足りない感じがしてしまいますが、当時のaikoが“生涯忘れることはないでしょう”というワンフレーズにどれだけの気持ちを乗せて歌っていたのかは到底想像もつかず、その迫力に圧倒されてしまいます。もう、あの、ラストの消え入りそうな声と静まる演奏が最高。夜中に聴くと感情移入が過ぎて泣きます。
「しょ~~う~がい~~~~~~」
(ここの最高音ファルセットが気持ち良い!)
「わ~~す~れる~~~~~~~………」
(ここの消えていく弱々しい声とその後の沈黙で泣く!)
「スァァアアアアッ」
(ここのブレス良すぎて鳥肌立つ!)
「ことはないで しょう~~~~~~」
(ここの溢れ出る熱量と気迫で心臓が止まる!)
はい。
大勝負に全てを賭けるような、歌手人生を賭けたような、覚悟とも取れる曲構成に惹き込まれてしまう魅力が詰まった1曲です。ここまで語らずとも大ヒットする理由は明白だったように思います。
最後に。
長くなりましたが、aikoの魅力は伝わりましたでしょうか?
何年聴いていても全く飽きず日々aiko沼にハマっていきます。連続したツアー開催で1年以上続いたライブの数々の反動からか、最近はめっきりライブ発表やメディア露出が減ってしまい「aiko たりないです(aiko公式Twitterより)」状態ですが、aikoへの愛は深まるばかり。シングルコレクションを手に取ってくれた方に少しでも彼女の魅力が伝わり、そしてaikoジャンキーが増えてくれればaikoファンの冥利に尽きます。
aikoが産み落としてきた曲の数々にはな!!カブトムシだけじゃなくて!!恋堕ちるくらいに良い曲がもっともっと死ぬほどたくさんあるのよー!!だからたくさん聴いてくれ!特にDisk4が沼だぞ!聴かなかったやつがいたらな、舌打ちかまして、悔しさから腕に歯型付けて、冷蔵庫に凭れて眠ってやるからな!わかったか!聴け!(聴いてください土下座)
まぁ、僕の愛が伝わればそれで満足です。
伝わらなくても満足です。
ということでaiko『カブトムシ』の歌詞考察でした。