インサイド・アウトサイダー
2021.03.24、雲ひとつない晴天、肌寒い日、キッチンから
冷たい床に融解する爪先、人肌の腕時計、境目のない水平線、酸素、換気扇の音、容れ物の身体、浮遊する頭は小脇に抱えられ、踊る指先はスマホの上に、無観客の演劇。
死に至る病
日本という外国
摂理
無力
欲望に愛はない
貪り食うふたり
怒る反応
獣は艶紅に染まる旗を自らの意思で揺らし続ける
解けないパズルはいまもバラバラのままだ
渇望
穴の空いたバケツ
自己偏愛
言葉
赤子は乳
幼児には手のひらを
蹴り飛ばせば大きな音で泣き喚く
あなたはなにが欲しい?
この前、スーパーで見た光景。
手を繋ごうとした子供が、父の歩く速度について行けず置き去りになった。父は自立を願い、または自身の好奇心のままか、それでも子供は裏切られたと思うだろう。子供はそのあと母に抱きついた。おそらく痛みに気付いたのは、その子と、たまたま目の当たりにした自分だけだろうか。子供にも両親にも、どちらにも罪はない。誤解は差からしか生まれない。
それでも子供は裏切られたと傷付くだろう。
昨日、理容室で話しかけられた。
ホワイトハウスや皇居の地下では、悪魔崇拝の生贄に捧げるための子供が捕えられているらしいという噂話を楽しげに語っていた。興奮して眠れませんでしたよ、と安全圏から投げた偽善の声に嫌気が差した。それで、傍観者であり続けるあなたはどう思うんですか?
自分の頭で考えず誰かに踊らされた人間が、同じく誰かに語り無意識下であっても踊らせようとするのは、架空の悪魔崇拝者と同じではないだろうか。
孤児院やコウノトリの籠へと届ける親には、少なからず子供への愛が残っているだろう。
それで、傍観者であり続けるあなたは何を思うんですか?
「…ごめんなさい、何mmでしたっけ?」
表現を相槌にする理容室が好きだった。
傍観者は失敗するプレイヤーを馬鹿だとほくそ笑み、
プレイヤーは臆病な傍観者を指差して嘲笑う
嘲笑しあい、自嘲しあう
キッチンに佇むアウトサイド・プレイヤー
ピピッ ピピッ ピピッ
過熱の警告音
木目を感じる床、冷えきって感覚をなくした爪先、心拍数68、窓を開けて取り込んだ朝の空気が肺を満たし、煮物の香りが鼻孔をくすぐる。向かいの家からは小学生の無邪気な声が聞こえた。
「ママー!いってきまーす!!」
もっと話したいことあったけど忘れちゃった
全部フィクション
またね