歌詞考察 | aiko より道
aiko18thシングル『キラキラ』c/wに収録されたバラード、9thアルバム『BABY』にてバンドアレンジver.が収録された『より道』。
曲に込められた詞が少ないために、より洗練された明確な強い想いを歌い上げている印象を受けました。aikoが得意とする比喩表現も多く取り入れられており、aikoらしさを強く感じられる曲となっています。
より道とは、本来の目的地へたどり着くまでに途中のところへ立ち寄ることを言い、別の目的地があることも同時に読み取れます。
ひとつずつ汲み取って考察していきます。
全体のお話としては、あなたを想うあたしの感情とその推移。
恋をしたときの不安を相手にぶつけて嫌われてしまうのを恐れてしまったり、重いと思われるのを恐れて素直になれなかったりが含まれます。
テーマとしては恋愛をしたことがあるひとなら誰しもが感じられる感情を歌っています。
冒頭からaikoお得意の比喩表現。
このパートは、あたしがあなたとの距離を遠く感じて別れがよぎったことを示唆しています。
「知ってる道」とは、恋人と別れたあとにあるあたしひとりの未来。あなたと別れてしまうのではないかという不安を予感する度に、あなたといる日常が終ってしまう恐怖を感じています。
あなたと過ごす甘い日々は確かに満足のあるものでしたが、安定した日常は次第に輝きを失っていきました。
付き合った当初のドキドキがなくなり安心しきった関係から、刺激のない平凡な日常が別れになるのではないかという悪い予感を察して、焦りに似た感情を持ったまま、楽しく感じられる出来事を探している状態にあります。
前のパートで歌った心の痛みは、あなたを気にしすぎてあたしがひとりでに傷付いていると理解しています。
また、あなたを遠く感じるのはあたしの一方的な感覚であって、愛情表現の強要はあなたに嫌われる理由だとわかっているために、あたしはただあなたを想うことしか出来ないという葛藤の中にいます。
歌詞考察である以上回りくどくなってしまいましたが、普遍的な表現をするならば、恋人と一緒にいたいと想う気持ちと、好きすぎて愛情表現が重くなってしまうのではないかという不安な気持ちを表しています。
あなたを知りたいと思う気持ちと、重いと思われたくない気持ちは日に日に大きくなっており、そんな葛藤があたしの胸の中だけには収めてはおけなくなる日がいつか来るのは語らずとも明白です。
そんな想いが爆発しないように、取り乱さないように、あなたには確実に言える想いをたったひと言だけ伝えています。
「だからもう一度言うね 君だけを愛してる」
ジャブのペースでストレートを繰り出すaiko。
既に何度も伝えたであろう言葉が重いと感じるかどうかは相手次第ですが、曲中のあたしにとっては、もっと言えばaikoにとっては、平常運転にあります。
続いて2番。
あたしがあなた以外の誰かを好きになって、あなたへの気を紛らわせようと試みている描写に思えました。
あなたを想い眠った夜は夢に出てきて、重くなりすぎないように違う誰かを想ってみたりしても結局はあなたのことばかりを考えてしまいます。
そんな自分に対して落ち着けと言っているのか、何しているんだという自己嫌悪かもわからなくなっていて、間違った方向に進んでいたことを確信します。
他の誰かを想おうとしてもあなたを想ってしまう理由を語るパート。
あなたと共有し積み重ねてきた時間(思い出)があるからだと気付き、これからはあなたとまっすぐに向き合おうと心に決めたような詞に感じられました。
そしてその先にある、あなたと同じ熱量で愛し合えるようになった瞬間を最終目的地にしているように思えます。
その最終的な関係に辿り着くまでのより道が、この後に続く締めフレーズ。
思い悩み取り乱して関係を壊すことも選ばず、他の誰かで気を紛らわせることも叶いませんでした。そんなあなたを思う苦しさを軽くさせようと取った行動はより一層あなたへの想いを強くする糧となりました。
あたしのほうがあなたを好きだという想いが強く、またそれがあなたとの関係を壊してしまうことを理解しています。しかし最終目的地であるあなたと同じ熱量で愛し合えるようになる関係を目指すために、いまは好きだという強い気持ちを抑えているしかない。
そんな状態があたしにとって幸せなより道であるという内容になります。
BABYに収録されたバンドアレンジver.では、この後に再び「あなたのことをもっと分かれるならこんな痛みもなかったのにな。」と、どこまでも続く幸せな苦しみを繰り返して歌う構成となっています。
考察は以上です。
お読みいただきありがとうございました!