「乾いた土の音」 短編
土の匂いが鼻先を刺し、重たい風が畑を這っていた。畑の端にしゃがみ込んで、僕は手のひらで小さな土の塊を握りしめた。それはまるで、冷たくて湿った心臓をつかんでいるようだった。昨夜の雨の名残は、土に染み込んで柔らかさを帯びているが、まだ芯は固い。畝の隙間に積もった枯葉が、くしゃりとくずれる音を立てた。
空には、薄いベールのような灰色の雲がたなびいている。雲間から漏れる陽の光は、ぼやけた水彩画のように淡く、くぐもっていた。隣の畝では、青々とした小さな芽が一列に並び、未熟な手を空に差