VOICARION XIV「スプーンの盾」感想
2022年4月26日、東京・シアタークリエにて
VOICARION XIV「スプーンの盾」
(読み:ヴォイサリオン14 スプーンのたて)
を鑑賞しました。
VOICARION作品をクリエで観るのは、2021年10月の「女王がいた客室」以来2回目。
「スプーンの盾」は、数々の音楽朗読劇を手がける藤沢文翁(ふじさわ ぶんおう)さんが東宝株式会社とともに作り上げる「VOICARIONシリーズ」の最新作。
公式サイト
https://www.tohostage.com/voicarion/2022spoon/index.html
4月初旬、大阪で幕を開けた本公演。4月20日からは会場を東京に移しておこなわれていました。わたしが鑑賞したのはその最終公演。(大千穐楽)
これから物語の簡単なあらすじとみどころ。そして感想をお話しようとおもいます。
今回が初演のこの作品。きっと再演があるに違いない!
……ということで、ネタバレなしでご紹介してきます。
あらすじ
19世紀、軍人から皇帝の座まで上り詰めヨーロッパ中を席巻した、ナポレオン・ボナパルト。
彼の躍進を支えた腹心、タレーラン。彼が得意とした外交手法は「料理外交」。
その外交の舞台で料理の才能を遺憾なく発揮した、カレーム。
そしてその助手、マリー。彼女は盲目だけれど、優れた味覚と嗅覚でカレームの料理の手助けをします。
これは料理でフランスを守った人たちの
”心温まる”戦いの物語です。
みどころ
公演ごとに代わるキャスト
この作品は今回が初演。大阪公演と東京公演あわせて13公演がおこなわれました。
出演者は総勢15名。みなさん声優さんです。各公演ごとに(一部は公演日ごとに)出演者の組み合わせが代わります。
また複数回出演されている方もいらっしゃいます。同じ役で出演する方もいれば、違う役を演じる方もいます。
声優さんについて詳しい方ならおわかりになりますか?
たとえば
大塚明夫さんと山口勝平さんが同じ役だとか、
下野紘さんと諏訪部順一さんが同じ役を演じるなんて、
テレビのお仕事ではチョット想像できませんよね。
いったいどんな風に演じるのか。気になりませんか?
また一例ですが、
津田健次郎さんは
大阪公演では明るく破天荒な料理人、カレームを。
かたや東京公演では切れ者の大臣、タレーランを演じました。
正反対ともいえる役を演じ分けているようす。目撃したくはありませんか?
公演日程と出演者が発表されたとき、どの組み合わせを観ようか?誰がどの役を演じるのを観ようか?悩みに悩みました。
どの公演も豪華なメンバーなので、何公演も観たくなります。どの日のどの公演を観るのか、選ぶのが大変!!ぜいたくな悩みですね。
じつは、東京公演では4月23日と24日の夜公演を音声配信したんです!
千穐楽公演のチケットを持っていたわたしですが、やっぱり他の公演回もきになってしまって……。両日とも配信チケットを購入し聴いてしまいました!!
どの公演もついつい気になってしまうのが、「VOICARIONシリーズ」の魅力のひとつです。
音楽はBGMじゃない!?
本公演の音楽はすべて生演奏。音楽監督は小杉紗代(こすぎ さよ)さん。劇中の音楽の作曲も手がけています。
バンドメンバーは6名。どなたも一流の方々ばかりです。詳しい経歴などは前出の公式サイトをご覧ください。
バンドの方々は舞台後方、一段高くなっているところにスタンバイしています。そしてその後ろに厨房のセットが組んであります。
中央に据えられているのはかまど。かまどから煙が出ています。両脇には調理器具や食材がならんでいて、今にもいい匂いがしてきそう。
朗読を担当するキャストはそのセットの前方で音楽を聴きながら、音楽と呼吸を合わせて演じます。
音楽を担当するバンドメンバーもキャストの話すテンポに合わせて音を奏でます。
音楽の演奏とキャストの演技が心地よく混ざり合って、観ているこちらの胸にせまってきます。これは他の舞台作品では味わったことのない感覚です。
藤沢さんの朗読劇では、音楽は演技の補助的なものではないのだと感じています。わたしは音楽と朗読がひとつになって完成するのが、藤沢朗読劇なのだと思うのです。
クライマックスシーンでは、情熱的な声の演技と心震える音楽が一斉にわたしの胸に押し寄せました。そして、またいつものように泣いてしまいました。
スプーンのカスタネット
小杉さんはVOICARIONシリーズの他の作品でも音楽を担当しています。ハートフルな音楽。涙を誘う優しい調べが印象的です。素敵なメロディーは「スプーンの盾」でも変らずでした。とくに今回はボウルやスプーンなど調理器具を使った演奏にビックリ!とてもインパクトがありました。
中でも2本スプーンを片手に持ち、カスタネットのように鳴らしていたのが楽しかった!!VOICARIONの公式ツイッターでも紹介されていました。
何回もみているけどほんとうに楽しい!!わたしもやってみたくなりました。
感想
わたしが観た大千穐楽は、
カレーム:諏訪部順一
ナポレオン:大塚明夫
マリー:朴璐美
タレーラン:平田広明
(敬称略)
というキャスティングでした。
その声から屈託のない笑顔が浮かび、心から愛おしく思える、カレーム。
威厳に満ちた立ち姿、誰も寄せ付けないカリスマ性。そんな容姿が想像できる、ナポレオン。
マリーは親しみやすい素朴な女性だと感じました。彼女が秘めていた思いを打ち明ける場面では、胸が震えました。
冷酷な切れ者、といった印象のラレーラン。しかし優しい一面も。演じる声だけで彼の人柄が伝わってきました。
演じる皆さんは舞台前方に一列にならんで立っています。役柄そのものの衣装は、そのままストレートプレーができそうな本格的で素敵なもの。でも朗読劇ですから、もちろんマイク前だけで演じます。
しかし声の演技だけでカレームが厨房で料理をつくっている様子。ナポレオンが馬に乗っている勇ましい姿。マリーとカレームが笑顔で話している風景などが自然に目の前に浮かんでくるのです。
この時代のことなんて何も知らなくても、お話がよくわかります。きっと脚本や演出、出演者の演技や演奏が優れているからなんだと思いました。
まとめ
この作品は今回が初演。大阪公演と東京公演あわせて13公演がおこなわれました。
そのうち4月23日と24日の夜公演の音声配信は、両日とも自宅で聴きました。音声だけだと見えないからこそ、より想像力がはたらいて、さらにワクワクしました。
その他の公演日のキャストのみなさんも魅力的。他の出演者の組み合わせの公演もぜひ、観てみたい!
「スプーンの盾」またいつの日か再演される日を心から待っています。
その時にはぜひあなたにも、ご覧頂きたいと思います。