モツ煮込み 四方山話
他人様の主催するマガジン、その最初の投稿がこういうのって、どうなんでしょうね。
ただ、気にし始めたらなにも書けない。とにかく、自分の思うことを思うままに……。
モツ煮込み、好きなんですよ。
居酒屋に行くと、相手がモツだめな人でないかぎり、煮込みがあれば必ず頼むくらいには好きです。
あの築地の名店きつねやにも行きました。あれは東京を離れる一ヶ月前だったから……今からもう十年以上も前になるのか。
甘辛いホルモン丼は絶品、無類でありました。
さて。
実はモツ煮込みは、西と東で大きく違うところがございます。
西、といっても、実は大阪でのモツ界隈を知らない(大阪では煮込みを食べたことがない)ので、あまりはっきりしたことは言えないのですが、少なくともここ、日本は本州の西端に位置するわが郷土においては、モツと言えば牛。モツ煮込みといえばほとんど、牛モツの煮込みになります。それも、みそ味ではなく、薄目のしょうゆ味が割と一般的です。
(一部、鳥の肝煮、という場合も)
一方。
関東以北は知りませんが、少なくとも関東においてモツ煮といえば豚ホルモンのモツ煮であるはずです。それも、がつんと来るみそ味。にんにくをばりばりに利かせている。
実は生まれて初めてモツ煮を食べたのは、関東に引っ越してきた十八の折。
埼玉の大宮に近い場所に居を構え、歩いて五十三秒のところにあった個人店の味噌ラーメン屋。そこのモツ煮こそがファーストコンタクトでありました。
今から思えば、たぶん臭み抜きもいいかげんで、ただただ(当時安かった)モツをただ良く煮込んだだけの代物、だったはず。
しかし、貧乏で味濃いもの好きで、とにかく米をがっついて腹を満たしたい、という時分にはもってこいの一品でした。
みそラーメンのうまいところではありましたが、ラーメンを食べないときはモツ煮とごはん。モツ煮一品でごはんが二杯食べられます。一杯目はモツをおかずに。二杯目は汁をぶっかけて。
このモツ煮はまさに、豚ホルモンをみそとにんにくとラーメンスープで煮こんだものでして、まさに思い出の一品。時々強烈に味を思い出し、作ってみたくなる。そんな料理です。
が。
関東に住んでるうちはよかったんです。豚ホルモンはスーパーで普通に安く売っている。あとはにんにく、しょうが、酒、みりん、砂糖。具材を他に入れたきゃこんにゃくでも。にんじんでも。お好きなものを。
……たしか、にんじんとこんにゃくは入ってたように記憶しています。あと、玉ねぎは味だし隊として入っていたような。記憶はもはや、あいまいです。毎日のように食べてたけど、今から三十年くらい前の記憶ですから。
それが、本州の西の端にまで、つまりはUターン、故郷に帰ってみると。
豚ホルモン、売ってないんですね。このへん。
スーパー、巨大モール、業務スーパー、個人の肉屋……あらゆるところを探しましたが、ない。
一回、ある個人店に行った際、豚ホルモンあるかたずねたところ、昔は扱っていたけどあまりに売れなかったので取り扱いを辞めた、という旨の話を聞けました。つまりはそれくらい、売れないんですね。牛モツは普通にあるのに。
これは考えるに、関東関西における牛豚の牛高豚低(関東)、牛低豚高(関西)が影響しているように思います。
関東は豚の消費量が牛より多く、関西は牛の消費量が豚より多い。
そのため、関東では豚は安く売られ、牛は高い。関西は豚は安いものの関東より比較的高く、牛は和牛でない国産牛ならそこそこの値段で買えます。
そう。探せば100g300円台の国産牛(所詮小間切れですが)もありました。
今はもう少し高くなりましたが。
そういう理由で、こちらに帰って、長らく豚もつ煮込みを食べることは叶わなくなっておりました。まぁ、どうしても、って時は、豚小間肉と牛モツを混ぜて作ってやると、それらしい味のものは出来るので、これで充分ごまかせるのですがね。
しかし、あの埼玉で若かりし頃食べていた豚モツ煮の味には遠い。夢にまで見たあの味。ああ。
……と思っていましたら。
先頃、行きつけの業務スーパーを何気なく見ていたら。
(確か、タコス用のトルティーヤを買いに行った時だった、と思います)
ありましたねぇ!!
冷凍ものですが、豚ホルモン1kg。お値段1,000円ちょっと。
もう半ば無意識に手が動いてました。購入。
そして、家に帰り、久しぶりの豚モツ煮込みですよ。
豚ホルモン1kg
こんにゃく1枚
たまねぎ1個
にんにく中国産1玉(1片、じゃないですよ。1玉です)
しょうが1片
みそ大さじ6
砂糖大さじ1
醤油大さじ3
みりん大さじ3
酒大さじ3
出汁の素10gパック1袋分
あと、塩分調整で塩を適宜
これらをぶちこんだ鍋に、水をひたひたになるまで入れて煮ることおよそ1時間半。
できましたねぇ。
最高のブツが。
ごはんがかっ飛んで行きますよ。
いつも1合しか炊かないのに、モツ煮込みの日は2合炊きます。
その2合が、一瞬でなくなる。五十の体にこの叩き込みは危険です。尿から糖がでるタイプの死がちらつきますが、これで死ねれば本望、くらいの勢いでかっくらいました。
うまかったなぁ。
あ、ちなみに。
薬味のねぎは、死ぬほど入れてください。
具材4に対し、ねぎ1くらいの割合で入れたとしても問題ないくらいです。
ここへ七味をばらばらかけて、食べる。
桃源郷と「ドカ食い大好きもちづきさん」言うところの「至り」の極地が見えます。
お命、いただきます。