中国の経済停滞に見る、「ルールを握る者」の真価

某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、SNSというより、Youtubeでここ数ヶ月でとみにUP率が多くなっている、「中国の経済停滞、不況」について考察し、その終着点とそもそもの原因について、少しばかり探っていこうかな、と思います。これは、日本という国にも深く関係することです。



停滞期に入った中国経済


中国の経済停滞については、「ほらな?」という気しかしません。
発展途上国が経済発展していることの意味は、以前私自身がnoteで書いた、

日本人が今後、アジア各国に出稼ぎに行く、という未来は来るのか

で長々と語っております。が。
そこに関して、その国に存在する優秀な人材の数も、その優秀さも、政権運営の旨さも、ほぼ「無視しても構わない程度の小さな因数」である、と私は考えております。

繰り返しにはなりますが、発展途上国が経済発展する、ということは、煎じ詰めれば、
土地需要が右肩上がりであること。必要条件として、若い人の人口増が継続すること
これにつきます。
(社会保障を充実させること、は、先進国となるためのマスト政策ではありますが、経済発展だけに絞るなら、この限りではありません。アメリカを見よ)

よって、一人っ子政策による少子化で今後日本をたどるように
「超高齢社会」
となることが半ば約束された中国は、どこかのタイミングで経済の縮小がおこることは既定路線ではありました。
が。
今始まっている中国の経済停滞は、超高齢社会への危機を予測して誘発した事態、とは言えません。ちょっと、その様相は異なります。
むしろ。
「経済のルールを握る者」
の犯行、と考えた方が、しっくりきます。

そもそも、失業率を中心に世界経済を見ると、世界経済はわりと「終わっている」


「失業率」というファクターだけで見ると、イタリアとかスペインとかひどいもんです(全体で10%前後。若者に限るなら30%を越えている)。地中海沿岸はとくに酷い。EUの経済を牽引しているといっていいドイツでは5~6%、というところ。イギリスは4%前後です。
EUでこれなんだから日本なんて酷いもんだろ、と思い日本を見てみると、その実失業率は2.8%。EUに比べると幾分か……いやかなり優秀です。え。そうなの? てなもんです。(※ただし、だからこそ日本の賃金が低いまま、というカラクリがそこには隠れています。これについては後々いつか書きたいと思います……が、何分にも人間の心を失ったかのような冷たい内容にならざるを得ず。どうしようかな。書こうかな止めようかな)

ちなみにアメリカは5%前後だそうです。

なぜにこのような現象が発生したか。
一言で言うと、機械に仕事を奪われたからです。
嘘です。いや、本当です。
携帯がスマホになったでしょ。あれで、結構な家庭のガジェット、および工業系のシステムがスマホに集約され、工業のソフトウェア化が進行したんですよ。
つまり、工場でつくるいろんなもんの「種類」が、ごっそり減ることになったんです。

この現象を、今流行になりつつあるEVでたとえます。
EVが仮に、エンジン車に変わって同じように普遍化したとすると、エンジンがいらないので部品がごっそり減ります。何万人と抱えてた車関係の製品工場の人員が、数千、ことによると千人前後でよくなる可能性があるとか。
つまり、EVの推進は数万人単位の「失業者」を生む、ということです。

いや、実際にあったことなんですよ。
トヨタ嫌いが蔓延しつつあったイギリスで、EV化をダシにしてトヨタを追いだそうとしたところ、トヨタに
「じゃあほんとに撤退するわ。数万人に及ぶ雇用が消えるけどいいのね?」
と念押しされて前言撤回した、という顛末があった、といいます。

スマホの誕生で、「これ」が起こったと考えると。
世界での失業率の上昇もうなずけるというものです。

経済のルールを作る者が本当に必要としている存在は


経済のルールを作る者、と仮称していますが。しばらくこのまま押し通します。正体はまぁ、誰でも分かってはいるでしょう。
「彼」は、なぜ経済のルールを作れるのでしょうか。
端的に言うと、「設計」を担っているからです。
半導体を例にとりましょう。
今度熊本にTSMCの工場が出来たり、韓国サムスンの半導体研究に関する施設をつくるのに日本国がカネをだしたりと、半導体界隈で今日本はかなり注目されています。
なぜか?
中国がことのほか「コロナに関する工場封鎖などで納期すら守れず世界的な半導体不足を招く、というように頼りにならんことこの上ないわりに、『彼』に楯突くようになってきた」からです。

かたや日本は、中国によるアジア危機の時期に運良く安倍晋三という歴代最高の首相を擁したことが奏功し、中国の思惑を撥ねつけ「彼」の信頼を得ました。そこで彼も改めて日本の経済状況を観察してみる気になったようです。
資産はそこそこある。政府の財政も健全(健全なんですよー。OECD内でも上位の健全性ですよー。国の財政健全化、国債発行阻止なんて言ってる人はCTスキャンを受けてくださいね。こめかみに入れ墨入れた上で)。まして長年のデフレで賃金激安。アジア各国と比べても遜色ない。水もある。地震はまぁ……リスク。
なので通貨を適正に処理し、「彼」の儲けがそれなりに最大化するように設定すれば、半導体市場は安定するだろう、という目論見があったのでしょう。

「彼」はなぜそんなことを決められるのか?


設計を担っているからです。
この世の中は、「設計」を担ってる人間が一番偉いんです。

以前のnoteでの投稿、
「女だけの街待望論」と、その実現性
で語った内容ではありますが、

「人間社会は、社会をどのような人材で保持しているかと言えば、
優秀な人間は社会制度の設計に携わり
その設計下のもと、働き蜂的なポジションにある普通の人がその管理、監理を担い
粗野だが力があるドンキーが馬車馬のように現場で働く
となっている」

のです。
ここで、社会制度の設計を、文字通り半導体製品の製品設計、と言い換えれば、まんまそのヒエラルキー構造は本件のお話に援用できます。
設計者が一番偉い、というのは、設計をする人間がいちばん高い金をかっさらっていく、ということにも同義ですし、設計をする人間が働き蜂管理者と馬車馬の人選を決めるのだ、ということにも同義です。
本件の半導体の話の場合、働き蜂的ポジションこそ台湾企業TSMCではありますが、こと工場の運営に関しては日本人監督者が割り当てられるだろう、という希望的観測はあります。昨今のグローバル企業は、監督者は現地調達だからです。まぁ、日本のMS法人も日本のApple法人も社長は外国人ですが。それはそれ。

そして。
前述(「コロナに関する工場封鎖などで納期すら守れず世界的な半導体不足を招く、というように頼りにならんことこの上ないわりに、『彼』に楯突くようになってきた」)の通り、中国はその「管理監督の地位、および馬車馬の地位」から滑り落ちるべくして滑り落ちることとなりました。
「彼」の逆鱗に触れたからね。しかたないね。

「彼」が行った報復……いや報復、じゃないな。
あまりに生産性が疑問符付くようになったんで、儲けどころか損失が大きくなる予想があったので、やむなく、そのようにした、というべきか。
いずれにしても……行動、とは。
すごく端的に言うと、「土地需要を奪った」のです。

具体的に半導体の例で言いますと、設計図を渡さなくなった。
中国はこの報復(こっちはほんとの報復です)として、独自設計で7ナノの半導体を設計から携わって生産し、自国の製品にのっけて販売しだした、ということがあります。
「彼」に頼らずとも最新鋭の半導体くらい我が国の科学力は世界一ィィィなのでできちゃうんだぞ、というアピール、脅しです。
……んなもん。
半導体をなめくさってます。同じ工場の同じ設備で設計の違う半導体なんか生産させたら瑕疵が出るに決まってます。
内実は、歩留まりが悪すぎて採算度外視、ということでした。まぁ、アピールなので採算はこのさい関係ない、ってことなんでしょうな。中国必死。

こういう状態が常態化すると、中国から必然的に投資は逃げていきます。
んで、台湾という中国ぽちさん(というかむしろ中国のおかげでここまでおっきくなれたんです。具体的には、中国政府は外国企業が中国進出するときに審査のようなものを行い半ば公然と賄賂を要求したり法外なお布施を要求したりしますが、台湾はかわいいので((ほんとはかわいくないのですが西洋諸国よりましってことで))ひいきしてたんですね。おかげで中国という巨大生産工場のなかで台湾はひときわ力を持つにいたり、これが現在の半導体における台湾の躍進に一役買ったというかこれが原因です)も政策転換を余儀なくされ、アジアの中でも賃金が安く…………以下略、な日本に目を付け、進出することを決意した、という内幕なわけです。

というか、もともとせんじつめれば中国という国がここまで強大になれたのは、リーマンショックに端を発するアメリカの超金融緩和政策でドルが大量に流れ込んできたから(流れ込むってのは、つまり、投資が活発化した、ってことです)に他ならないわけで、優秀とか関係なくただの運です。あと人口が多かったこと。政府の力が強くて民衆の統合が優位に働いたこと、など、いろいろです。投資者の思惑がそこにあった、ということです。

この世の中の趨勢は、経済がその先を決定する、と仮に定義するならば。
経済を失速させる手を「彼」が打てば経済は本当に失速するし、逆もまたしかり、です。
経済を失速させる一番の妙手。
それはすなわち、土地需要を縮小させる、という一手です。
方法は、上記のような例、として。

「彼」は善か、悪か


「彼」も所詮人間が寄り集まった国家であり、自国利益を最優先することはアタリマエのこととして。
いわば善でも悪でもなく、自国利益に+か-か、という判断しかしておりません。それでも、中国にたいしてはなかなか我慢した、というところではないでしょうか。
それはもちろん、人口多いし今後は中国でしょ、っていうことで、世界の工場という役割を担わせるべく投資を活発化し、その結果としていろんな工場いろんな会社いろんな人員が中国で育ち、ゆえに世界の趨勢は中国がその一翼を担うこととなりその発言力も(もともと国連では拒否権を持つほどの重鎮国ですしね)高くなってきた国。そこまで大きくさせておいて自分の意に染まず好かんから撤退、なんてことをしたら「彼」の国の経済までもがったがたになる、という危惧があったから、であります。
それでもそれも、自国に刃を向け始めたあたりから、ちゃくちゃくと準備を進めるに至り、そろそろそれが発動しそう、というあんばいです。

「彼」が善でも悪でもない、自国利益追求型資本主義国家だとして。
宝くじとノブレス・オブリージュ
の投稿で私は
「ノブレス・オブリージュ(高い社会地位には責任が伴う)」
について触れました。
そして「彼」がノブレス・オブリージュを遵守したかどうか。点数をつけるなら何点か。考えてみました。
様々な瑕疵はありましたし、内包する社会問題も現在進行形で存在します。しかしそれを乗り越えてさらに発展しようとする気概はやはり先進国随一であると思いますし、そこそこその役割を何十年という長きにわたって問題ありつつも担ってきた。そういう意味では、70点くらい? だと思います。

けれど。

正直、「彼」がその地位から降り、代わりの国がその地位を担った、と仮定して。
我々は、そうなりかけた中国のあまりの所業のひどさを見、逆説的に「彼」のこれまでのやりようについて、改めて敬意を抱くべきである、と思うようになりました。
それまであまり見えてこなかった中国、という国。その内実が力を得ることで透けて見えるようになった。その結果、やはりというか、醜悪な内面が欲望として吐露し、自己を律することなく我田引水的な利益追求を行い、世界の「法」を無視しだした。

この結果を見ると、「彼」が70点だとして、彼以外のどの国だって70点なんて高得点は取れないだろう、という諦めにも似た敬意を抱くに至ります。
自民党に幻滅し民主党にやらせてみたところ目を覆わんばかりの惨事となり自民党の70点がどれだけすごかったのか再確認した、ということに似ています。国家運営って凄まじくたいへんなのね……。

さて。
まとめです。

これらのことから、我々日本は何を学ぶべきか?


「彼」のポチであり続けろ、ということではありません。というかそろそろ日本はポチすぎる状態から脱却しろよ、とは思います。
世界において平和憲法を持つことから自衛隊を軍隊と呼称できないほどの日本はどう思われているか、考えたことのある方は多いと思います。
もちろん、平和を愛し交戦権をもたないと宣言し、どんな戦争にも加担せず専守防衛に徹する日本という国を羨みかつ尊敬し、このような国ばかりなら世界は平和であるだろう、と厳かな気持ちで日本を見ております。どの国だってそうです。平和憲法万歳。日本国憲法よ末永く。むしろ日本国憲法を世界に輸出することで、日本国憲法がノーベル平和賞を受賞することだってあるだろう! ということです。よね?

…………んなわけねぇだろぼけ。

まぁ軍隊の話は本件とは別の話なので放言は避けることとします。今は経済の話です。中国の凋落から日本は何を学ぶべきか、という話。

すなわち。

「ルールを作る国が、世界で一番強い」

ということと。

「ルールを作る国が崩壊したら、世界が終わる」

ということ。
そして、

「ルールを作る国は、現状わりとけっこう壊れかけてるので、その備えとして新たなルールを担えるくらいの国を待望しなけりゃならん」

ということ。
さらに。

「日本もそれぐらいの野望を自国に抱けよ」

ということです。

おそらくは「彼」の次はヨーロッパのどっかの国かイスラエルがなるんじゃないかな、とは思います(ただイスラエルはな……五十五年体制時代のオザーさんの位置だからなー。ダークソウルがその顔のまま君臨するってのはどう考えても……フィクサーの位置で満足するべきじゃないかな)。インドは荷が重いです。あそこは政府が人民の統合に関して自覚的ではないので。

この超高齢社会到来の日本で、やがてそうなれるくらいに。
野望を抱けや。そろそろ。

私がいいたいのは、そういうことであります。

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