少子化
某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、何を取り上げようかなぁなんておもってたんですが……性利己説から始まった資本主義最強説についても語りたいし、鳥山明・TARAKO両氏の突然の死去についても触れておきたい。……ですが。
今回は時流を捉えた話からは逸れ、もう少し未来的なことを語りたいと思います。
正直、耳障りのいい話ではないです。
ですが、イヤな話だけに、発言力がある方、あるいは大衆への影響力が高い方、政治家、活動家、その他政治への発信力を伴った方が語ると、誤解も多くなる話ですので、これはもう、自分のような、さして注目もされない、何をやってるかも分からない、つまるところ誰もが目を滑らせて見向きもされないような人間こそ、語るに適任だろう、ということで。
誰も読まないようなものをなぜ書くのか、と問われれば、私の座右の銘が、
「預言者の言葉は、地下鉄の車両やモテルの壁の隅に書かれている」
("The words of prophets are written on the subway walls, and tenement halls")
だからです。
(※サイモン&ガーファンクル 「サウンドオブサイレンス」の一節より)
本当の言葉は、誰の目にも触れないようなところに、誰の目にも触れないような人が書き記している。
というわけで。今回はこちら。
男女問題です。
昨今、少子化が進んだことで、出生率を上げるための政策が必要だと政府も考えており、異次元の政策とやらを進めているいっぽうで、結婚したがらない若い世代が増えており、出生率の一層の低下が懸念される、とのこと。
でもですね。これは仕方のないことですよ。
奨学金を得て大学卒業して、その奨学金を返しながら会社で働いている。女性の学歴も向上しているおかげで、結婚適齢期の男女が共に、二十代を奨学金の返済で費やしているような状況です。
(※日本の大卒割合は、男性51%、女性57% うち、大学生の奨学金貸与者の割合は50%)
年収300万時代と言われている現代で、しかも初任給に毛の生えた額で頑張ってる若い人が、賃金上昇の期待も薄いまま、双方借金抱えてる状態で結婚できますか? 出産できますか? って、ちょっとかんがえたら分かりそうなもんです。
で、いわば出産の高齢化が基調となっている現状で、多産は望めない、というのが正直なところです。まずここ、踏まえておくべきかと。
(一方で、のこりの半数、高卒の方々に期待する、という発想もあります。土木等、肉体労働はきついですが、社会的には実入りも良くなってきてます。こういう体力ある方々が若い内に、教育無償化等の恩恵を受けて多産の家庭を築いてくれるのでは、というのは一種の願望があります)
で。
出産の高齢化が基本となると、困ることがあるんです。
次世代の介護問題です。
私自身、高齢出産児でしたので、いわゆる介護問題に直面したのが40を少し過ぎたころでした。
まぁ、自分の場合は定職らしい定職を持たず実質プラプラしてたので、介護離職なんていうでっかい話でもなく、わりとすんなり実家に帰って両親の介護をなんとかこなし(実は、その理由もあって地元では介護職を選んだ、というのもあります。一応介護福祉士持ちです)ました。が。
私のような人ばかりではなく、きちんとしたところにお勤めの方などは、この介護問題に若くしてぶち当たるわけです。
これってのは、人生設計において相当のリスクなのですよ。
言ってみますとですね。
若い人たちは、20代で借金を返し、30代で不妊治療に励み、40代で教育問題と介護問題の二正面作戦に直面する、という、地獄の連鎖を生き抜く必要がある、ということです。
この問題を若い人たちが回避するには、
「大学に行かない」か、
「結婚せず、子供を作らない」か、
「両親はぎりぎりまでほっとき、やばくなったら特養にぶちこむ」か。
この3択になります。
このうち、1. は、選びやすいのですが後の職業選択の段階で選択肢が大幅に狭まるというデメリットがあります。
また、かつてよりは改善されましたが、それでも生涯賃金での差が大卒と比べると見劣りする、という問題もあります。
肉体労働が多く、体力の限界が来たらそこで働けなくなる、というリスクも見逃せません。
また、3. は……さすがに体面というものがあります。両親が地元の社会から切り離され、孤独死していることを数ヶ月後に警察から電話で聞かされる、なんてのはしゃれにもなりません。
なので、一番選択肢として単純に選びやすいということで、2. を選ぶ男女が増えること、これは火を見るより明らかなわけです。
2. はまた、傾向としてそうならざるをえない、という雰囲気もあります。
といいますのも、現代日本において、子供というのは資産ではなくなりつつある、ということです。
かつてはこの国も農業大国でした。どれくらいかというと、土曜の7時のコマーシャル提供枠が、ヤンマーやイセキ、クボタだったくらい農業大国だったのです。そのような農業大国では男女とも子供というのは重要な働き手ですし、家業の引き継ぎ手、担い手として期待されておりました。
また、高度経済成長華やかなりしころは、建設事業、土木事業は花形で、いくらやっても終わらないくらいの仕事をこなしておりました。
そのため、(戦後で男性割合が異常に低かったことも手伝って)男子が異様にもてはやされた、ということもあります。
この頃においては、子供はまさに資産でした。
実際、大切にされてたのですよ。
そして、あまりに大切にされすぎて、異様に尊大で自我が強い化け物が増えた、という弊害もありました。バブル世代やその下のBE-BOP世代がそれです。
こいつらほんと、自分のことしか考えやがらねぇ……。
しかし。
いざその頃の大人が老人になってみて。
核家族化が深く静かに潜行したことも相まって、自分たちが手塩にかけて育てた子らが、言うほど自分たちの介護に積極的ではない現実を見せつけられます。
まぁ……自分らの老後の面倒を見させるために子供を作ろう、なんていうのは今や時代錯誤甚だしいですが、しかし。
しかしなんですよ。
そうなると、めちゃくちゃ苦労して子供を育てる理由って、何?
ってことになるわけです。
働き手でもない、老後は見捨てる(そんな人ばかりではないです。実際、私が従事している介護事業所で目にするご家族の方は、本当に親身になって親や配偶者の方を見ておられます。その献身ぶりにはほんと、頭が下がる思いです。ですが、これはその方たちが素晴らしいというだけで、そうならなければ社会的にいけない、という話でもなければ、そういう方の方が多いのだから心配しなくてよい、という話でもありません)。そういう「子供」は、もはや「資産」ではなくただの「贅沢品」……カネがかかるばかりで、一人で育ったような顔をして家を出て行く……となってしまったのではないか、ということです。
そして。
そんなこと、当の若い人たちはすでに気づいてるんですよ。
子供なんて贅沢品。だって、親の苦労を間近でみてるんですから。
お金に苦しみながら子供を育て、親の面倒に関わって生きている姿を、です。
将来の自分をその姿に当てはめて、「ああ自分もこうなりたい!」って思うでしょうか?
と。
ここから、異次元の話の展開を見せ、結論は予想とは逆転した方向へと進みますよ。
ですが。
ですがなんです。
それでも、これからの若い人たちは、絶対に子供を持った方がいいです。
そういう世界がやってくる可能性が、高いです。
いや。
あなたたちが大人になったころ、私のような世代がちょうど老人となり、そういうのを世話する人がほしいとか、そんなちゃちなこと言ってんじゃないです。
むしろ、積極的に老人など見捨てていいです。老人のためにあなたたちの世代が労力を削る必要などありません。こいつらはそれなりにいい時代を生きて贅沢もしてます。老後苦しむぐらいで帳尻がとれるってもんです。
今、子供がすごく少なくなってることで、この子たちが大人になったころ、まるで我々が知ってるバブル期のように、人材の争奪戦が繰り広げられることが想像されます。
もしかしたら移民を入れ始めてるかも知れませんが、移民が日本に精神的に土着してくれるなんてのは都合のいい妄想でして、インフラも生産物の質も移民頼りにはできないという現実に、社会が打ちひしがれているはずです。
やはり、生粋の日本の民としての価値は求められると思います。
それに。
子供がどんなに贅沢品であろうと、世代をつなぐ、世代がつながっていく、ということ。
そして、自分の血の繋がった人間が、これからも未来に生き続けてくれるということ。
こればっかりは、実際に子供を持った人しか感じることの出来ない安心と幸福であります。
おそらくこの年で独身で、将来にわたって子供というものを持てなかった人間(私の場合は、選ばれなかった、というのももちろんありますが、人との共同生活が致命的に無理、という自分側の都合もありました。それでも)が言うのだから、間違いはないです。
自分が一人で死んだ時。死んだらあとのことなんて知ったことではないのですが、朽ちていきいつ倒れるかも知れない家に近所の人をおびえさせたり、家で腐って引き取り手もないまま自分の死体が警察の管理下に置かれたり。
まがりなりにも残ったいくつかの資産が、手つかずのままいずれは国庫に編入されたり。
一人でいていいことってのは、少ないです。
そして。
男女同権が進み、男性側の甘えた声も多くなってきました。
やれ、男女同権なら女も割り勘だせや、とか。
女性専用車両があるんなら男性専用車両をよこせとか。
女性の社会進出と言ったって結局男をあごでつかっていいとこどりしたいだけだろ、とか。そういう声です。一昔前の男性が聞いたら情けなくて涙流しそうな言説ですわ。
で。
そういう声に抗いながら、それでも女性の権利を拡張してきた女性の皆さん。そういう方には、本気で敬意を持っているつもりです。
ですが。
最後に、上記のようなことを理由として、これだけ言わせてください。
男女同権は、基本です。分かっております。
それでも。
子供を産んだ女性は、人生の勝ち組です。
これは、明らかです。